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連載小説🛸宇宙語インフォーマント(中)

前話はこちら(↓)


 学会発表の報告を紀要にまとめた。そのとき、私の脳裏に、先日送られてきたメールのことを思い出した。

「例の宇宙語の件ですが、仕事の一区切りがつきましたので、インフォーマントに会ってみようと思います」
 
 私が送信するや否や、返信がきた。

「琴野葉先生、お待ちしておりました。例の宇宙語の繁殖力は強く、ここ数日のうちにも激増しております。これから、宇宙語と思われる文面の一部を添付して送らせていただきます」

 一般的に未知の言語には、表記する文字がない。未知の言語なのだから、なにを言っているのか、わからない。インフォーマントの話す言葉をそのまま記述するのが言語学者の役割である。
 しかし、メールの内容を読んで、私は首をかしげた。宇宙語はすでに文字化されているという話ではないか?
 もしそうであるならば、私の仕事は宇宙語の記述ではなく、宇宙語を解読する作業になりそうだ。私はこれから添付されてくるであろう宇宙語のスクリプトを首を長くして待っていた。

「琴野葉先生、お待たせいたしました。今から送信いたします」


to Dr. Kotonoha


 だんだん寒くなってきましたね。今年もあっという間でした。年末でなにかと忙しいと思います。
 「忙」という漢字は、りっしんべんに「亡」と書きます。つまり、心を亡くした状態が「忙しい」ということなのでしょう。
 どんなに忙しくても、心を亡くすことなく、無事に新年を迎えられたら、と思っています。


 先方から送られてきたのは、とあるSNSに投稿された何の変哲もない文章だった。なにかの間違いだろうか?
 何度読んでも、ごく普通の日本語としか私には思えなかった。

 私は、送られてきた文面を何度も読み返したあとに、返信した。


Re 

 送信していただいた文面を熟読いたしました。しかし、私にはごく普通の日本語だとしか思えませんでした。これが宇宙語なのでしょうか?
 私は比較言語学者です。未知の言語をインフォーマントから聞き取り、記述することはできますが。
 もしかして、添付する資料をお間違いになったのでしょうか?


 しばらくして、返信が届いた。次のような内容だった。


to Dr.Kotonoha


 琴野葉先生、この資料で間違いありません。先生に添付して送ったSNSの記事は日本語です。
 宇宙語だと思われるのは、この記事の本文ではなく、コメント欄にある言葉です。お手数ですが、さきほど添付した記事のコメント欄をご覧ください。


 私は返信を受けて、さきほどの記事のコメント欄を読んでみた。
 次のようなコメントが書かれていた。


つづく



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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします

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