一語の宇宙 | at ~のところに
「at」。
日本語にするときは、たいてい「~で」とだけ訳されるのでニュアンスがつかみにくい前置詞だ。
イメージとしては、「点」で良いが、「~のところに」と覚えておくと良い。
「at」(「点」「~のところに」)という場合、空間的な広がりを考えず、ただ「場所」を表す。
「at」と「in」を比較してみよう!
「その村には、いいレストランが一軒ある」という場合、
There is a good restaurant in the village.
というように「in」(~の中に)という前置詞を用います。というのは、「村の中に」と言う場合、空間的な広がりがイメージされるからです。
では次に
「ここから5キロ離れた村にいいレストランがある」という場合を考えてみます。
There is a good restaurant at a village five kilometers from here.
となります。
今度の場合は、「in」ではなく「at」という前置詞を用います。
というのは、「ここ」と「レストラン」という「点」を結ぶようなイメージのために、「村」に空間的な広がりを感じないからです。
漠然とした「ところ」、焦点が定まった「ところ」を指すこともある!
「村のレストラン」のように、地図上の場所が点としてイメージされるとき「at」が用いられますが、「at」は数学的な「点」とは異なり、漠然とした「ところ」や焦点が定まった「ところ」でも用いられることがあります。
たとえば、こんなことわざがあります。
A drowning man will catch at a straw.
(溺れる者は藁をもつかむ)
日本語だけ読めば、「at」を用いずに
A drowning man will catch a straw.
と言っても良さそうですが、「at」がないと、溺れる人は全員、藁をつかむことができることになってしまいます。
「at」が挟まれることで、「~のところ」となり、一応「藁の『ところ』」をつかもうとはするけれども、本当につかめるかどうかは分からないというニュアンスが出てきます。
He hit the ball.
(彼はボールを打った)
[実際に当たった]
He hit at the ball.
(彼はボールをめがけて打った)
[実際に当たったかどうかは分からない]
「at」は「~のところで」と覚えておくと良い
細かな説明は省略しますが、次のような例文にも「at」のイメージ(~のところで)は生かされています。
He is good at mathematics.
(彼は数学が得意だ)
[彼は数学というところでは良い]
She is at her best now.
(彼女は真っ盛りだ)
[彼女は今、最高というところにいる]
At last they broke up.
(ついに彼らは別れた)
[最後というところで、彼らは別れた]
He fell in love with her at first sight.
(彼は彼女に一目惚れした)
[彼は最初に見たところで、彼女に恋した]
I am at a loss.
(私は途方に暮れている)
[私は喪失感というところにいる]
⚠️今回の用例は、
田中茂範「表現英文法」(コスモピア)、
pp.472-475をもとにしてまとめました。
「一語の宇宙」ては、ひとつの英単語を取り上げて、エッセイを書いていきます。
こちらのマガジンに収録していきます。