妖怪と小説家は廃屋に住む。
「妖怪は存在する」
ボロ新聞を纏う老人が据わった目で語る。
「あるだろ、子供の頃見た記憶」
川辺は物事を考えるに良い。しかし色んな人も来るものだ。宗教の勧誘はよくあるが、ホームレスに話しかけられたのは初めてだ。
「いや常識的に考えたら居ない。俺だって分かる」
老人は続ける。
「でもな、君だって思うだろ?子供の頃見たアレは幻でも妄想でもないって」
確かに。思ったよりマトモに話せる人だ。
「僕もそう思いますよ。でもね今はもう大人ですから見えませんよ」
老人は笑った。
「オイオイ、小説なんか書いてる割に寂しい奴だ」
俺は訝しんだ。そんな事知るはずが無い。不気味だ。
「何、そこにいるソイツが教えたんだよ」
そんな俺に老人はこう言うと、何もない場所を指さした。そう何もない…
「ハローハロー」
さっきまで何も無かったそこに奇妙な小人がいた。
「な?物事は認識するかしないかなんだ」
認識出来るようなら大人じゃないな、老人は言った。
【続く】
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