見出し画像

聖と俗を合わせ持つマルチなピアニスト、フランツ・リスト

今回は、この秋のリサイタルで2番目に演奏する作曲家、リストについて書きますね。リストと言えば、まず、「スケールの大きな人」という印象があります。そして、とても「男性的」なイメージ。優しく憂いのある曲調でも、決してめそめそした感じにならず、凛としたものを感じます。音色も、どこか張りつめたような輝きがありますね。2020年、コロナでstay homeが言われていた時期に、私が無性に弾きたくなったのがリストでした。リストの音楽は、スッキリとしていて雄大なものがあり、心が解放されるのでしょうね。

リストは、数ある作曲家の中でも、抜群にピアニストとして活躍した人でした。北はサンクト・ペテルブルグから南はジブラルタル、東はモスクワから西はリスボンまで、8年間で約1000回(3日に1度の割合)の演奏会を開いたというのですから、本当に凄いですね!19世紀前半、移動は全て馬車ですから・・。それだけ演奏経験があるので、「演奏効果」というものを知り尽くしていたように思います。聴衆の反応を意識して作曲している感じがしますし、技巧的には難しいですが、その割に弾きやすく効果的に書かれている感じがします。

他に特徴的なのは、キリスト教との関わりです。リストは10代の頃、父の死と失恋、演奏活動の疲労が重なって鬱状態の時に、「司祭になりたい」と言っていたようです。その時は母の反対で思い留まりますが、55歳の時には本当に聖職者になります!リストの作品には、20代の頃から宗教的な響きがありますが、晩年に向かうにつれて、その傾向は強くなります。また、演奏会を開いて慈善事業や災害復興のために多額の寄付をしたり、弟子は誰でも受け入れて無料でレッスンしたり・・なども、宗教的な考えによるものかもしれませんね。

また、リストと言えば女性にモテモテ、というイメージがあります(笑)。ピアニストとして各地で大フィーバーを巻き起こし、数々のスキャンダルもあったようですが、リストが真剣にお付き合いした伯爵夫人が二人いて、どちらも大変教養豊かな女性でした。その辺りは、さすがですね。二人はそれぞれ、リストに演奏活動よりも作曲に専念するよう促し、それによって数々の素晴らしい作品が生まれました。

しかし、この二人の女性に愛されている間も、聖職者になった後も、女性問題は尽きず、そこがリストらしいというか、聖と俗が合わさったような人であるのを感じます。音楽的にも、技巧を見せつけるような曲から、心の奥深くを表したもの、神々しい作品まで実に幅広く、そこがリストのスケールの大きさなのでしょうね。「芸術家の使命は、苦悩に満ちた現実を、天空の高みに昇華させることだ」との言葉通り、芸術家として確固たる使命感を持っていたことも様々な活動から窺えます。また、現代にも受け継がれる「リサイタル」を最初に行い、ベートーヴェンやシューベルトなど多くの作曲家の作品を編曲し、演奏して広めるなどの音楽史上の功績も多く、やはり凄い人だったのだな!と思います。

今回のリサイタルで演奏する1曲目の「コンソレーション(慰め)第3番」は、心が洗われるような安らぎの世界です。次の「バラード第2番」は、前から弾いてみたかった曲なのですが、闇の世界と神々しい天上の世界が交錯するように描かれていて、一つの物語のように進んでいきます。当日は、リストの思い描いた壮大な世界を皆様とともに感じ、ご一緒に楽しむことが出来れば嬉しいです♪

♫大澤美穂ピアノリサイタル http://miho-osawa.com/

2022年10月10日(月・祝)14時開演 宝塚ベガ・ホール

2022年10月30日(日)14時開演 王子ホール

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?