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少しずつ、少しずつ変わっていくのは

今日、1ヶ月ぶりに祖母に会った。GWに帰って以来だった。
私は用事があったため途中から合流したのだが、私が会う前に祖母がエスカレーターで転びそうになった、と話を聞いた。
下りのエスカレーターにいつも通り手すりに掴まりながらそのまま降りていたようだが、降りる際にタイミングを見誤ったらしい。その瞬間、パニックになったのか足が強張って踏み出すことが出来ず、手すりに掴まったまま後ろに倒れそうになったようだった。「あ、あ」という慌てた声を聞いた母親が、慌てて手を引っ張って事なきを得たというが、危うく転倒して頭を打つところだった。それに、膝下までの長いカーディガンを羽織っていたから、エスカレーターに服が巻き込まれる恐れもあった。
「足が動かなかったのよ、」と俯きながら話す祖母は、なんだか消えてしまいそう。きっと1番ショックを受けているのは祖母なはず。プライドが高い祖母のことだから、これ以上なにか言うと余計気にしてしまうから。これからはエレベーターに出来るだけ乗ったら?とだけ声をかけて、その話は終わらせた。


親戚の集まりで、おじさんが子供に「大きくなったなー」と声をかけるシーンは、現実でもテレビでもよく見かける。でも私は久しぶりに祖母に会う度に、どんどん小さくなっていく、と不安が募る。「体重は増えたのよ」と嬉しそうに語る祖母を見ても、背中はなんだか昔より小さく見えるし、ふと顔を見ると所在なさげな目をしているのはとっくに気づいている。以前よりも耳は遠くなって、祖母には声をかけるのではなく、服を引っ張って注意を向けるように促す。足取りも重くて、歩くときにあんまり足が上がっていないようにも見えた。

自分自身の体だ。その変化には本人も気づいている。私たち家族は、そのゆっくりと、でも確実な変化を静かに見守り、サポートすることしか出来ない。心に寄り添い、そしてやんわりと注意を促す。
時間は待ってはくれない。少しずつ、少しずつ、動いていく。考えたくないけれど、その現実を受け止めながら、寄り添っていくしかない。


昨日書いた美味しいスコーンを、祖母にも紹介してあげた。舌が肥えているから、気に入るかは分からないけれど。「帰ったら、食べるね」と曇りガラスのような目に少しだけ光が入ったような気がした。
毎日に楽しい瞬間があるように、と願いながら駅で別れた。



いつもたくさんありがとうございますっ!