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あなたの吐息が耳に触れているようで

昨日、深夜に苦手な電話をした。

相手が電話をしたい、と唐突に言ってきた。難しかったらいい、とは言っていた。断る理由を咄嗟に考えたけれど、どれも嘘くさくて、結局いいよ、と答えてしまった。
それでも正直、直前までするかどうかは迷っていた。寝ちゃった?と言うメッセージに、既読をつけるか悩んだけれど、ううん、寝てない。と返してしまった。


緊張してるの?と問われて、ううん、ねむいだけだもん、と返す。ふふっと笑われて、眠いんだ?と相手は嬉しそうだった。
仕事とは違うプライベートな電話は、用件が決まっていないから長くなりやすい。黙っていても、電話は繋がり続ける。どんなに息を潜めていても、きっとわたしの心の動揺は空気となって相手に届いてしまうだろう。だから言葉でいくら強がったって、手に取るように分かっているはずだ。


今何してたの?と優しく促される。何にもしてないよ、そっちは?と答えると、ひみつと密やかに返される。電話中、ずっと相手の吐息が直接耳に吹き込まれているように感じて、どうも落ち着かない。いつもより相手を近くに感じて、くらくらする。その言い方、心臓に悪いと言うと、やっぱ緊張してんじゃん、とけらけら笑われた。


また電話してもいい?と切る寸前に聞かれた。うーん、と渋ると、だめ?と優しい声色で聞かれる。そんな風に言われたら、何も言えなくなってしまうじゃないか。じゃあまた、するね。約束だよ?と言われてうぅと唸った。これから先、手のひらで転がされる予感しかしない。

いつもたくさんありがとうございますっ!