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<第28回>トヨタ流「ギガ速コミュ力」でGAFAMを超えろ

『トヨタの会議は30分』 
山本大平著(すばる舎)

❶イントロダクション~「とにかく無駄を嫌う」企業文化

本書は2021年に発刊されたF6 Design㈱代表取締役・山本大平氏の初の著作で、すでに累計10万部を突破したベストセラーです。
著者はトヨタ自動車在籍時に、同社の全グループで開催される「多変量解析」の大会で優勝経験があり、副社長表彰や常務役員表彰を受けたこともある実力者です。トヨタ自動車を退社後、アクセンチュアでの経営コンサルタント経験を経て、2018年にマーケティング総合支援会社、F6 Design㈱を設立。現在は大手企業から中小企業まで幅広く、戦略顧問やCXO(部門責任者)、新規事業のプロデューサーといった要職も多数兼任されています。

では早速、本書の「はじめに」から気になった部分を抜粋してみます。

"根回しや段取りの力はもはや誰にも求められていない"
"いま求められていて、かつ成長している勝ち組企業に求められているのは、「ギガ速で成果を出すためのコミュ力」"
"「そろそろ、マジでヤバイな、日本経済」"
"外資系企業の会議や打ち合わせにおけるコミュニケーションスピードは速い"
"会議では、参加者が次に何をするか、いつまでにそれを行うかを明確にして閉めるのが鉄則"
"大企業なのに大企業らしくない泥臭い会社、トヨタ自動車"
"トヨタの文化は、「とにかく無駄を嫌う」。当たり前のことを継続的に突き詰めて行う文化"
"アメリカや中国の企業に勝つためには、「検討します」なんて悠長なことを言っている時間はない"

さて、トヨタ自動車といえば、その文化を代表する「KAIZEN」という言葉が示すように、業務上のちょっとした無駄でも、つねに全力でなくそうとする姿勢が有名です。
著者は新卒でトヨタ自動車に入社後、同社で実践されてきた「ギガ速で成果を出すコミュ力」を身につけたといいますが、企業文化も日々進化していることが伺えます。

なお、ご存じのとおり、トヨタ自動車についてはさまざまな著作が山ほどあり、日本を代表する企業として多くの企業研究がいまもなされています。
本書は、「会議」という多くの人がウンザリしてきたことを採り上げ、著者がトヨタで学んだことを参考にしてシンプルな提案をしてくれています。そこには当然、同社で磨かれたすぐに使えるビジネステクニックが満載ですよ。

では早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:「会議は30分」で終わらせる真の意味

会議はあくまでも打ち合わせ、生産性はもっとも低い

まず、初めにお断りしておきますが、本書のメインテーマは、じつは「会議術」ではありません。
「ええっ!」と思われるかもしれませんが、事実です(笑)。
本書は、「ギガ速コミュニケーション力によって、ギガ速な仕事ができるようになること」がメインテーマになっています。また、なんとなく速度重視なのは伝わるかと思いますが、それにもちゃんと意味があるのです(理由は後述)。

つまり、「ギガ速のコミュ力」のわかりやすい例として、「会議は30分(短い!)」というキャッチコピーを使って説明しているのですね。このことを踏まえて読み進めると、より内容が深く理解できると思います。

ところで、あなたが参加している会議は「何分」で終わっていますか?
半日会議、終日会議という人もいるかもしれませんが、おおよそ1時間くらいではないでしょうか。
でも実際、1時間ほんとうに必要か? と聞かれたら、「うーん」と考え込んでしまう人もいるかもしれません。じつは、私もその一人です。

では早速、「会議は30分」と時間制限するメリットや、本書で開陳された「すぐに使える」テクニックをいくつかご紹介しましょう。

  • 会議の予定は立て続けに入れない。30分は間を空けて、延長したときに備える

  • 会議の主催者は議題(アジェンダ)の事前共有「だけ」を周知させる。それ以上は求めない

  • 会議の最後に「次に何を打ち合わせるか」を決めて終える

  • 上司と部下が2人で会議に参加しない

  • リアルタイム議事録(ホワイトボードやPCのメモ帳など)で、関係者へ早期に内容共有をする

  • 会議の冒頭で「前回のおさらい」をして、全員のマインドを揃える

  • 会議でメモはとらない。重要なことは忘れない

  • 資料は一枚(ペライチ)。1分で説明できる資料を使う

いかがでしたでしょうか? 詳細を説明しなくても、なんとなくイメージできたのではないでしょうか。

本書では、会議を短くすることで「時間ができて、他の仕事ができる=生産性が高くなる」ことの重要性が説かれています。
ちょっと考えてみてください。会議で具体的な何かが生み出されるわけではありません。
当然、商談でもありません。会議はあくまでも打ち合わせであり、生産性がもっとも低いのです。本書では会議を短くしないと給料泥棒になってしまうということも指摘されており、「仕事とは何か?」を考えさせてくれます。

❸深掘りの勧め:トヨタ流「資料とプレゼン」の極意

「もういい、やめろ!」と言われないために

最後に、会議の最重要ポイントかもしれない、トヨタ流の資料とプレゼンの極意を紹介しておきましょう。

トヨタでは、資料づくりに関して、以下のような構成が徹底されているそうです。

①論点:何の話かを最初に
②要望:何をしてほしいか、相談する相手にどんな判断や意思決定をしてほしいのか
③結論:どうしたいと思っているのか、自分の結論
④論拠:なぜそう思っているのか
⑤補足

たしかに、以上の5点の構成でまとめたペライチの資料だったら、すぐに判断できそうですよね。
これに加えて、プレゼン方法にも徹底されているポイントが、「聞き手を迷子にしないこと」だそうです。
聞いているほうがわからない説明だと、トヨタでは「もういい、やめろ!」と言われてしまうそうですが、「わかるなぁ~」という方もけっこういるのではないでしょうか。

この「聞き手を迷子にしない」プレゼン方法については、四つのポイントが紹介されています。

①専門用語・横文字を避ける
②冒頭に何を話すかを言う
③章立てどおりに話す
④節目節目で不明点を確認する

いかがでしょうか? これらの点も、イメージしやすかったのではないでしょうか?

じつは、トヨタで実践されているこれらのポイントは、さほど目新しいことではありません。
本書のなかにも、すぐに確認したいときはメールやチャットではなく、「さっさと電話する」といった話が出てきます。言われてみれば、当たり前のことです。メールやチャットは、返事がいつ返ってくるかわからないですからね。

トヨタの本質とは、最速で最高の成果を上げること、であることに変わりありません。社員一人ひとりがトヨタ流の「ギガ速コミュ力」を身につけていけば、みなさんの会社の生産性も自ずと高まり、近い将来、GAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)を超える日がくるかもしれません。

みなさんも、まずは足許からということで、

「目標は達成できるのか」
「なぜ達成できないのか」
「問題は何か」
「対策は何か」

自分の仕事を見つめ直してみましょう。けっこう「ムダ」があるかもしれませんよ。

ほかにも本書には、トヨタでは「時間泥棒」よりも「給料泥棒」になるなと言われる、とか、じつは昇格試験でしかA3一枚にまとめない、といった、トヨタに関してよく聞く話の真相も満載です。
興味のある人はぜひ、本書を読んでみてください!

◆今回の名言◆

「障子を開けてみよ。外は広いぞ」
豊田佐吉(1867~1930年/実業家)

大反対にあったとき、パフォーマンス一つで状況が変わることもある。最後まで諦めないことが大事ですね!

★おまけ★最近読んでいる本

『冒険の書 AI時代のアンラーニング』 
孫 泰蔵著(日経BP)

「学校に行きたくないなぁ……」、なぜ学校へ行かなくてはいけないのか? 本書はそんな素朴な疑問から始まります。学ぶとは? 教育とは? 世の中や教育のあり方を考え直す出発点として、本書は構造的な問題に気づくきっかけを与えてくれることでしょう。ビジネスパーソンが抱える複雑な課題やさまざまな矛盾、「いままでの当たり前」にも一石を投じる本。お勧めです。

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