見出し画像

<第18回>なぜ相手にうまく意思を伝えられないのか?

『「話し方」の心理学~必ず相手を聞く気にさせるテクニック』 
著:ジェシー・S・ニーレンバーグ/訳:小川敏子(日経ビジネス人文庫)

❶イントロダクション~1963年に発刊された対人術の名著
本書は全米で半世紀以上にわたり読み継がれてきた、まさに古典的名著です。1963年に原書が発刊され、2005年に日本語訳が刊行、2017年に文庫化されました。
著者はアメリカの産業心理学者で、心理学博士でもあり、ニューヨーク大学などで心理学の教鞭を執るかたわら、企業人のカウンセラーとしても活躍された人物です。

"話し方"と言えば、定期的にベストセラーになっているテーマ、と思われる人も多いのではないでしょうか。ビジネス書の定番テーマです。

今回は本書の「訳者あとがき」から、気になった部分を抜粋してみました。

"正論をぶつけるだけでは誰も受けとめてはくれない"
"話す技術を磨くことは、聞く技術を磨くこと"
"身近な聞き上手の人のことを思い出してみてほしい、なんとも言えない安心感を与えてくれる人なのでは?"
"話しかけられた瞬間から、相手の話を聞こうという気になっていることは滅多にない"
"たいせつなのは相手に「考えてもらう」こと"

ご承知のように、本書のタイトルは『「話し方」の心理学』です。じつは「話し方」の本ではなく、「心理学」の本なんです。

心理学は心と行動の学問であり、科学的な手法によって研究されます。対人術とも言える心理テクニックを駆使した話し方は、ビジネスだけでなく、かかりつけのお医者さんとのコミュニケーションから、上司や部下との会話まで使えます。

「なんだか、会話が嚙み合わないなぁ……」
「なぜ、辻褄が合わない会話になってしまうだろう。何の話をしていたんだっけ?」
「ミーティングの際、論理的な話し合いにならなかった」
こんな悩みは、本書が解決してくれると思いますよ!

さらに、この本には「人間の本性」がほんとうにたくさん書かれています。これも、じつに面白いです。

では早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:意思疎通を阻む要因は何か?

人間と人間が話すことに最大の問題が……

本書は、全13章で構成されています。導入の第1章は、「人とわかりあうことのむずかしさ」です。

いきなりですが、「そもそも人と人は、分かり合うのが難しい」と著者は言います。

意思疎通がうまくできなくて、ミスをした経験がある人はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。当然、私もその一人です。(笑)

その理由は、伝える相手が人間だからです。

相手がロボットであれば、ストレートに伝わるものも、人間相手ではそうもいきません。

人間にはつねにさまざまな感情が生まれ、論理的な思考を阻害します。たとえば、無意識に自分に都合のいいように物事を捉えたりしていることはありませんか? また、こんな経験をしたことはありませんか? これらは、コミュニケーションを阻害している要因です。

よくわからないけれど、この人と話していると、怒りがこみ上げてくる。気づいたらケンカ腰の話し合いに……。
言っていることは正しいけど、自分の考えとは違うので、粗探しをしてしまった。
⇒(要因)相手がとにかく嫌い、という感情
・今日はなんだか、何を聞いても頭に入ってこない。集中できなくて、返答でケアレスミスしてしまった。
⇒(要因)疲れている
・一生懸命説明したけどダメだった……、相手は何を考えているんだろう?
・この部長には何を話してもムダ。なんで自分の意見を曲げないのだろう?
⇒(要因)相手の考えを無視した、自分の都合の思い込み

本書では、コミュニケーションを阻む障害について、非常にわかりやすい事例を挙げて説明がなされています。

私は、コミュニケーションが何もできていなかったこと、自分のことがまったくわかっていなかったことに、愕然としてしまいました。(笑)
コミュニケーションの原点は、「思っていることを相手にそのまま理解してもらうこと」なのです。

意思疎通を阻む要因は、私たちのなかにあるさまざまな思い、願望です。うまく対処しなければ、たちまち会話は噛み合わなくなります。

しかし、テクニックでこの問題は解決できる、と著者は言い切ります。
よりよいコミュニケーションの取り方をしようと思えば、いまからでも十分間に合いますよ!

❸深掘りの勧め:そもそも人は、話を聞かないものなのだ

人間の性質を理解すれば、必ず話上手になれる!!

著者は、意思疎通を妨げる性質が、人間にはそもそも備わっていると言います。
たとえば、ある心理学者の研究によると、習慣は、ただ繰り返しているだけでは定着せず、何らかの見返りがなければ定着しないそうです。ここから、頑固に意見を変えない人は、何も見返りがなければ、ずっとその意見のまま、ということも著者は言います。

本書のなかには、「なるほど~」と唸ってしまう会話で出てくるサインや、前提として知っておくべき人間の性質なども紹介されています。

少しだけ紹介すると、
そもそも人は、話を聞かない性質を持っている
会話をするときは相手に気を配ること
会話の目的を告げてから会話に入ること
相手の気持ちを尊重すること
的外れな話題や質問も受け止めて、なぜそのような質問が出るのかを考えること
相手を理解してから説得をすること
こちらに説得を受け入れてもらう下地をつくること
相手からの質問や疑問は、新しい考えを受け入れる下地があるというサイン
・相手が説得を受け入れられる状態になるまで反論しないこと
相手の考えを知り、弱点を見つけること
「そうだったのか!」と思った人もいるのではないでしょうか。

また、人は判断をするときに、論理的なことだけでなく、感情にも左右されています。
これは、誰もが「失敗した……」という経験をお持ちではないでしょうか。

話すテクニックとしては、相手の感情も読み取って、相手に合わせた会話をすると、打ち合わせもまとまりそうですね!

ちなみに、バイデン大統領にもこんなことがあったようです。

本書には、ほかにもさまざまなシチュエーションでの対処方法や、相手が何を思っているのかも載っています。
気になった人は、ぜひ読んでみてください。

◆今回の名言◆

「論語と算盤とは一致しなければならない」
渋沢栄一(1840年~1931年/実業家)

パーパス経営の原点、とも言える言葉ではないでしょうか。利益追求だけではダメ、ということを教えてくれます。

★おまけ★最近読んでいる本

『ゼロ・トゥ・ワン ~君はゼロから何を生み出せるか』
著:ピーター・ティール&ブレイク・マスターズ/序文:瀧本哲史/訳:関 美和(NHK出版)

本書は著者が母校スタンフォード大学で行なった、起業に関する講義をもとに書籍化したものです。著者はPayPal(ペイパル)の創業者であり、イーロン・マスクなどと並び、シリコンバレーで現在も絶大な影響力を持っています。「2015年ビジネス書大賞」を受賞した本です。

生前、「生きている人の本の推薦依頼は受けない」と語っていた故・瀧本氏が、序文のなかで「未来を担う若者に薦めたい、世界を進歩させるために世界中に配ろうとしている武器だから」と言うのも納得の内容です。
「隠れた真実」を見つけるために、この本が起点になるはず。ボン・ヴォヤージュ! オススメです。

#読書日記

#話し方

#心理学

#小川敏子

#コミュニケーション

#渋沢栄一

#瀧本哲史

#関美和

#PHP研究所

#営業課長