見出し画像

<第17回>なぜ決算書は、入門書を何冊読んでもわからないのか?

『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる
 世界一楽しい決算書の読み方』
著:大手町のランダムウォーカー/イラスト:わかる(KADOKAWA)

❶イントロダクション~決算書は最高にシビれる“謎解き”だ!
本書は2020年に発刊された、累計25万部突破の決算書の解説本です。「第12回 啓文堂書店ビジネス書大賞」も受賞しています。
著者の大手町のランダムウォーカーさんは、公認会計士試験合格後、大手監査法人勤務を経て独立。「日本人全員が財務諸表を読める世界を創る」を合言葉に、現在は㈱Fundaにて「#会計クイズ」を運営するほか、企業研修やコンサルティング業務も行なっています。

ちなみに、著者がTwitterで「#会計クイズ」を発信しているのは(毎週日曜日21:00)、まさに決算書は最高にシビれる"謎解き"でもあるからです。

それでは、今回も本書の「はじめに」から、気になった部分を抜粋してみます。

企業のイメージと損益計算書の中身はイコールじゃない
最短で決算書を読む力をつけるためには、実在する企業の決算書を読むのが一番手っ取り早い
例えば、コーヒーの値段の違いは企業それぞれの販売戦略によって生じる
企業の数字に関する情報が詰まっているのが「決算書」
決算書からは、普段見ることのできないその企業のビジネスの全貌はもちろんのこと、その企業の強みや弱み、販売戦略さえも読み取ることができる

さて、この本のテーマは「決算書」です。
ビジネス書コーナーに行けば、決算書の読み方の本はたくさんありますよね。
しかし、決算書の入門書を何冊も読んで勉強された方でさえ、じつは「なんとなくしかわからない」という人は多いのではないでしょうか。
あまり聞き馴れない専門用語で挫折した人も、いらっしゃると思います。

また、決算書をちゃんと説明できる人、つまり、「なぜ売上げが上がったのか、営業利益が減ったのか、今後の見通しはどうなのか」といった点まで読み解ける人が、はたしてどれくらいいるでしょうか? 企業コンサルタントや中小企業診断士、会計士でなくとも、できるビジネスパーソンには、会社の数字を読み解く力は必須です。

「……すみません、わかったフリをしていました!」
そんな人にも、この本はオススメです。もちろん、25万部も売れているのには、ちゃんと理由もあります。
では早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:決算書を楽しく読もう

会計クイズは初心者にも、学び直したい人にもオススメ!

本書は、クイズ形式で決算書をわかりやすく読み解き、その企業のビジネスモデルや戦略を明らかにしていく内容になっています。
『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる』というサブタイトルどおり、実際に存在する企業の決算書をもとに会計クイズが出題されています。

たとえば、スタ-バックスやコメダHD(コメダ珈琲)、銀座ルノアールの決算書(損益計算書)を、会社名を伏せて紹介し、どれがスターバックスかを当てるといったクイズです。
実際の問題が、コチラとなります。

このように、著者の会計クイズは、本来は細かな科目がズラッと並ぶ決算書をわかりやすく図解化し、クイズ形式で考えさせてくれるので、
視覚的にわかりやすい
クイズ形式だから、考える力が身につく
実際の企業の決算書を用いるため、ビジネスモデルの復習になる
といった特長があり、初心者から学び直したい人まで、かなり幅広いターゲットを想定しています。

また、クイズの思考フローが会話形式になっており、一緒に考えながら読むことができるので、答えまでの流れも頭に入りやすいのではないでしょうか。
実際の企業のビジネスモデルについても説明されており、「そうだったのか!」と、目からウロコが落ちるかもしれません。

❸深掘りの勧め: なぜ、会計クイズでビジネスモデルが理解できるのか

決算書を分析して「言語化」しよう

本書のテーマは、「クイズ形式で楽しく決算書の読み方を学ぶ」です。しかしなぜ、そもそも「クイズ」なのでしょう?

本書は会話形式になっているため、やり取りをイメージしやすくなっています。クイズの答えを出すまでのストーリーのなかで、選択肢を消去法で絞り込んでいったり、実際の事業をイメージしたりして、答えを導き出していますが、じつは、この思考法もポイントなのです。
決算書は、会社の経営状況を数値化したものですが、当然、これを言語化し、説明しなければなりません。前年との比較や、同業他社と比較する本当の理由は、決算書を言語化するための分析ですが、こうした思考法がなければ、本質を見抜くことは当然できません

「なぜ固定資産が多いのか?」
「同じ業界なのに、なぜ売上原価率に差があるのか?」
「複数事業を展開する企業の稼ぎ頭は何か?」

本書では、東急グループについても触れられていますが、
「売上高をいちばん稼いでいる事業部はどこか?」
というクイズは、多くの人が間違ったはずです(私も間違えました)。

問題:東急グループで、売上高をいちばん稼いでいる事業部はどこか?
①交通事業部
②不動産事業部
③生活サービス事業部
④ホテル・リゾート事業部

さあ、どの事業部でしょうか?
どうしてそう思ったのか、理由も自分の言葉で考えてみてくださいね!

※答えはコチラから、どうぞ。

https://twitter.com/i/events/1007111693262991360

◆今回の名言◆

「企業の目的は顧客の創造である」
ピーター・ドラッカー(1909年~2005年/経営学者)

企業価値の原点はこれですね。お客さまを待つのではなく、自ら創ることを忘れてはいけませんね。

★おまけ★最近読んでいる本

『豊田章男』 
片山 修著 (東洋経済新報社)

著者が豊田章男社長に初めて会ったのは2000年。まだ40代のトヨタ自動車取締役のころだったとか。
本書は、2019年4~11月にかけて、『週刊東洋経済』に30回にわたって連載された「豊田章男 100年の孤独」を書籍化したもの。連載時から反響が大きく、「プリンスという通称からは想像しがたい人となりが見られる」「日本経済を支えているトヨタを知るうえで、非常にためになる」といった声がたくさん届いていたそうです。
一気読み必至のビジネス・ノンフィクション! オススメです。