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編集の現場から

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本ができあがるまでにはドラマがあります。一冊一冊に込められた編集者の熱い想いとともに、制作現場からのレポートをお届けいたします。
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記事一覧

黒柳徹子著『本物には愛がある』制作秘話

芸能界のレジェンド、『窓ぎわのトットちゃん』の著者である黒柳徹子さんが、幸せに生きるために本当に大切なことを語った『本物には愛がある』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。  年の瀬も押しせまった昨年12月30日、「ピーンポーン」と家のチャイムが鳴りました。 大掃除をしていた手をとめて出ると、なんと黒柳徹子さんから校正ゲラが宅急便で届いたではありませんか!  すぐに封筒を開けて確認すると、濃い鉛筆(4Bくらい?)で力強く書かれた文字がびっしり。疑問点には

『山崎元の最終講義 予想と希望を分割せよ』制作秘話

2024年1月に惜しまれつつも亡くなった経済評論家・山崎元さんの著書『山崎元の最終講義 予想と希望を分割せよ』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。  著者・山崎元さんに初めてお目にかかったのはおよそ20年前のこと。山手線・新橋駅にほど近い、銀行系のシンクタンクを訪ねました。第一印象は「シニカルな人」。今年1月、松も明けないうちに届いた訃報に接し、他社の編集者も同じような印象であったと知りました。  その後、なぜか同じ飲み屋に通っていたこともありますが、

『世界と日本を目覚めさせたウクライナの「覚悟」』制作秘話

倉井高志先生の最新刊、『世界と日本を目覚めさせたウクライナの「覚悟」』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 5年前に制作した『なぜローマ法王は世界を動かせるのか』(PHP新書)を書いた元バチカン公使・徳安茂先生の紹介で著者とお会いしたのは、ウクライナ戦争中の今年3月。倉井高志先生は昨年10月までウクライナ大使を務め、現地に駐在していました。以前にはロシア公使も務めていて、ウクライナとロシアの両国事情に精通する数少ない日本人の一人です。ゼレンスキー大統領と

『未来実現マーケティング』誕生秘話

神田昌典先生の最新刊、『未来実現マーケティング』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 神田昌典先生は、いわゆる「天才肌」の方です。なので正直、凡人の私では理解が追い付かないことが多々あります。1年ほど前に、「マーケティングで世界を変える本」というコンセプトを提示いただいたときも、正直、十分に理解できていませんでした。でも、とりあえず「なるほど、面白いですね!やりましょう」 と答えました。なんとなくではありますが、いままでにない本が生まれそうな予感がしたか

『ロシア点描』誕生秘話

小泉悠先生の最新刊、『ロシア点描』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 2022年2月24日。ご承知のように、ロシアがウクライナに侵攻を始めた日です。本書の著者・小泉悠先生は、以前から「これほどの規模でロシア軍が展開されるのを見たことがない」と、開戦の可能性を示唆されていました。にもかかわらず、私は「まさか……」と高を括っていました。 いまにして思えば、甘かったといわざるをえません。21世紀の現代に、日本の隣国であるロシアが戦争を始めてしまった。この事

『模倣と創造』誕生秘話

佐宗邦威先生の最新刊、『模倣と創造』が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 「いま僕は方法論ではなく、もっと本質的なところを伝えたいんです」 本書『模倣と創造』の企画を提案した際に、著者の佐宗さんはそうおっしゃいました。創造性は「デザイン思考」などのノウハウや方法論を学ばなければ育たないものではないし(方法論だけ学んで満足してもいけない)、そもそも幼少期には誰もがもっていたものなのに……という、ジレンマのようなものがあるとのこと。正直なところ、わかったよう

PHP新書『子どもが心配』誕生秘話

養老孟司先生の最新刊、『子どもが心配』(PHP新書)が好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 本書は『日本のリアル』『文系の壁』『AIの壁』に続く、養老孟司先生と四人の識者の方の対談集の第四弾になります。 PHPの月刊誌『Voice』で、慶應義塾大学の小児科医である高橋孝雄先生とご対談を行なっていただいたのですが、その際に養老先生から「子どものことはたいへん重要な問題だと思っていますので、よい企画をありがとうございました」とのお言葉をいただきました。「これは

『いい湯じゃのう(一)』誕生秘話

PHP文芸文庫の最新刊『いい湯じゃのう(一)』が、好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 8代将軍・徳川吉宗は、じつは温泉好きだった――。これは史実として伝わっている話なのですが、吉宗の温泉好きの理由が、ひどい肩凝りに悩んでいたからだとしたら……しかも、それによって江戸幕府が転覆の危機に陥るとしたら……。現代を生きるわれわれにとっても、どこか親近感がありつつも、破天荒な設定で描かれたのが、風野真知雄さんによる「いい湯じゃのう」です。 つらい身体の凝りを癒す

『赤と青とエスキース』のこと、いろいろ。

7作目の小説『赤と青とエスキース』、PHP研究所より発売中です。 1枚の絵画をめぐる、5つの愛の物語です。 PHPの編集者、北村さんから小説執筆のお話をいただいたのが2年前。 「『木曜日にはココアを』は、場所が横に動いていて、  『鎌倉うずまき案内所』は、時間が縦に動いていました。   今度はモノが斜めに動くような小説を書きませんか?」 そんなご依頼でした。 面白いことを言うなあ、と思いました。 それでは、「モノ」を「絵」にしましょう。一枚の絵が、いろんな時代といろ

『人類が進化する未来』誕生秘話

遺伝子の操作で親が望む外見・能力を持った「デザイナーベビー」をつくる、細胞の老化を抑えて「不老不死」を実現する……こうした科学の発展がもたらす「人類の新たな進化」について、8名の科学的権威にインタビューした一本書『人類が進化する未来』です。 ピンポイントでゲノム情報を改変する「クリスパー・キャス9」でノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナ氏や、「人生200年時代」の到来を謳うデビッド・A・シンクレア氏など、ひと昔前ならSFの世界だったような事象が、いま現実の世界で実

『5000日後の世界』誕生秘話

世界的に著名な雑誌『WIRED』の創刊編集長であるケヴィン・ケリーさんは、しばしばテック界の「ビジョナリー」(=予見者、先見の明のある人)と称されます。本書に推薦を寄せてくださった落合陽一さんをはじめ、多くの方がケヴィンさんのファンを公言されています。インターネット黎明期からシリコンバレーのスタートアップを数多く取材し、スティーブ・ジョブズやビルゲイツにもインタビューしてきた伝説の編集者です。 そう聞くと、刃物のように鋭い人物を想像しがちですが、ケヴィンさんの素顔はとても気

『修造日めくり まいにち、つながろう』誕生秘話!

松岡修造の人気シリーズ最新刊『修造日めくり まいにち、つながろう』が、9月27日に発売されます。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。 松岡修造さんとタッグを組み、制作してきた日めくりも第5弾。2014年に最初に発刊した『まいにち、修造!』から数えると7年ものおつき合いとなり、ありがたいかぎりです。松岡さんのなかでは、すでにライフワークの一つとして「日めくり」のシリーズを考えてくださっているようで、各種インタビューでもそのように発信されています。今回もそんな一見、遠回しにみ

『ふしぎ <霊験>時代小説傑作選』誕生秘話【番外編】~"ふしぎ"の不思議~

9月8日発売の『ふしぎ<霊験>時代小説傑作選』は、2017年11月刊の『あやかし』に始まる、現役女性作家による時代小説アンソロジー第9弾。今回は、シリーズ全冊が重版出来という快挙の"ふしぎ"を、元PHP文芸文庫編集者でもある広報担当者が語ります。 複数の作家による短篇集は当たり外れが激しく、うまくいかないことのほうが多いといわれています。にもかかわらず、シリーズ化されて、最新刊の『ふしぎ』まですべて増刷がかかり、累計29万部(9月15日現在)というのは稀有なケースといえます

『本所おけら長屋(十七)』誕生秘話!<番外編>

9月22日発売の『本所おけら長屋(十七)』は、累計140万部突破の人気シリーズ第17弾。今回は、畠山健二先生の初代担当編集者でもある広報担当者に、最新巻の魅力を語ってもらいました。 2013年7月の第1巻刊行以来、江戸は本所界隈の貧乏長屋を舞台に、"笑いと涙"の人情小説として人気を博してきた「本所おけら長屋シリーズ」。落語テイストのテンポのいい会話とやさしい文章で綴られた物語は、女性読者が6割を超え、小学生から高齢者まで幅広い年代に支持されてきました。 著者の畠山健二先生