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『いい湯じゃのう(一)』誕生秘話

PHP文芸文庫の最新刊『いい湯じゃのう(一)』が、好評発売中です。その発刊経緯を、担当編集者が語ります。

8代将軍・徳川吉宗は、じつは温泉好きだった――これは史実として伝わっている話なのですが、吉宗の温泉好きの理由が、ひどい肩凝りに悩んでいたからだとしたら……しかも、それによって江戸幕府が転覆の危機に陥るとしたら……。現代を生きるわれわれにとっても、どこか親近感がありつつも、破天荒な設定で描かれたのが、風野真知雄さんによる「いい湯じゃのう」です。

つらい身体の凝りを癒す唯一の手段として、熱海の湯を江戸に運ばせていた吉宗ですが、どうしたわけか急に湯が届かなくなります。さらに熱海だけではなく、草津、箱根の湯にも異変が起きたらしい。天下を治める将軍の一大事に、お庭番とくノ一が調査へと向かうことになるが……といった調子で、物語は進んでいきます。
 本書は地方新聞各紙で連載されていたのですが、風野さんは連載開始時に、「つらく厳しいニュースが多いなかで、どっこいしょと腰を下ろし、ホッとひと息つけるような、身体にいいぬるめの湯に浸かって、フーッとため息をつくような、そういう小説にしたいと思っています」と語っていました。
 まさにその言葉のとおり、将軍と取り巻きたちのやりとりが、真面目にやっているのにどこか間が抜けて面白い、ユーモア時代小説の名手である著者の本領が発揮された作品になっています。さらに吉宗の落とし胤と称して世間を騒がせた天一坊事件(これは史実!)や、「大岡裁き」で有名な大岡越前(じつは小心者!?)、さらには湯のなかでだけ最強のお庭番や、すご腕だけど玉の輿狙いのくノ一なども登場し、面白いだけでなくハラハラドキドキする展開も楽しめます。
 来月(2022年3月)発刊予定の『いい湯じゃのう(二)将軍入湯』では、吉宗がお忍びで町の湯屋を訪れ、庶民たちのあいだで起こった日常の謎を解決するなど、読みどころ満載です。
 寒い季節に笑いながらほっこりと温かくなるような、「いい湯じゃのう」シリーズをよろしくお願いします!

第一事業制作局 文化事業部 文藝課 浅田菜美子

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