親に介護が必要になったら
親と生活していて、手がかかるようになってしまった。親が出来ないことが増えてしまった。親が病気になってしまった。
親と暮らしていても、別に暮らしていても親のことは心配が絶えません。介護が必要になったときに必要な心構えを紹介します。
親が倒れた!!どうしよう?
いつも元気にしている親が、倒れてしまった!!急に倒れたら「どうしよう?」と思うでしょう。倒れる原因は様々、高齢になれば何かしらの不調はあります。そして不調に気づきつつ隠す人や、気づかずに過ごしていて急に倒れるなんてこともあるのです。
急に親が倒れたらすることは、救急車を呼んで病院につなげてもらう事になります。病院についてから、医師や看護師などの手助けにより治療をしてもらうことになるでしょう。医療的な治療アプローチは、病気や症状によって様々です。家族として対応を迫られる選択肢は、多岐にわたります。
親の病状が回復したら、病院を退院することになるでしょう。退院することは喜ばしい事ですが、病気が回復しても、身体機能が落ちて介護が必要になる場合があります。親が一人暮らしで家に帰ってもらうのが不安であったり、親と同居していても介護が出来なくて在宅復帰が難しいと考えられるのです。
親が倒れたときにどうするべきか、介護福祉士として21年以上働いてきた実体験を交えて紹介します。
親が倒れてしまう理由
高齢者が倒れる理由として、以下のようなことが挙げられます。
脳卒中(脳出血・脳血栓・脳塞栓)
くも膜下出血
失神
発作性転倒
貧血
栄養失調
てんかん
腎機能障害
過労
高齢者は症状が若い人ほど見えにくく、気づきにくい人が多く見られます。高齢者が「急に倒れる」「体調が急変する」ということは、ありえることです。急変した際は、救急車を使ってでも病院で治療を受けましょう。
病院による治療と医療費
病院に救急搬送されたり受診したりすれば、医師の指示のもと、病気によって必要な治療を受けることができます。受けた治療の内容により医療費は変わります。重い病気などで長期入院したり、治療が長引けば、医療費の自己負担は高額になってくるでしょう。
食事療養費や入院時生活費は、医療保険適応外であり医療費にはなりません。ですが、病気にかかる医療費が高額になると、一定の自己負担額が支給される「高額医療」の制度があります。高額療養費の自己負担限度額に達しない場合でも、同月に同一世帯で21000円以上の自己負担が複数あれば、合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます。ぜひ、病院のソーシャルワーカーに相談しましょう。
70歳から74歳の方がいる世帯でも計算方法が異なります。また、同一世帯で1年間に3回以上の高額医療費の支給を受けている場合は、4回目からは自己負担限度額も変わってくるため、入院している病院でソーシャルワーカーに相談し、協会けんぽに高額医療費の請求すると良いでしょう。
病気の治療が終われば行く先は?
当然ながら病院は、病気を治すところです。病状が落ち着けば、自然と退院という流れになってくるでしょう。退院するときに後遺症が残ってなければ、問題はなく家に帰れます。退院しても、定期的な受診は必要なことも多くみられます。通院することで、病院のサポートを受けることができます。
ですが後遺症が残ったり、転倒のリスクが高いと判断されてしまうと、家に帰るのが不安ということになり、家出に帰っても介護サービスを受けるように勧められます。家に帰るのが難しいと考えられたら、介護老人保健施設に勧められるでしょう。家に帰るのが難しいかどうかは、家族との同居の有無や経済状況によっても変わります。介護が必要であれば、退院前に「介護保険」の申請を行うことになります
退院時に介護が必要なら、介護認定を受けよう
介護保険は、介要介護状態の人が楽しく暮らすための手助けをし、家族や本人が介護が必要になった時に家族の負担を減らすために作られた制度です。速やかに手続きを行いましょう。
1. お住まいの市町村の介護保険担当窓口に、申請書を提出します。申請書は窓口で入手できますが、郵送やインターネットでの申請も可能です。
2. 市町村から指定された認定調査員が自宅や施設などに訪問し、介護が必要な状況や生活環境などを調査します。調査には本人や家族の同意が必要です。
3. 調査結果をもとに市町村の介護認定審査会が介護度を決定します。介護度は、要支援1から要介護5までの7段階に分かれています。介護度に応じて、利用できるサービスや負担額が異なります。
4. 市町村から介護認定通知書が送付されます。通知書には、介護度や利用できるサービスの種類と上限額、負担割合などが記載されています。通知書を受け取ったら、希望するサービスの提供事業者と契約し、介護サービスを利用することができます。
以上が、介護認定の受け方の流れです。窓口に申請を出してから介護度がわかるまで、ほとんどが30日以内に判明します。ごくまれに30日を超える場合がありますが、その時は自治体から連絡が来ます。
介護保険とは
介護保険とは、介護が必要な高齢者や障害者に対して、その費用の一部を公的に給付する制度です。介護保険は、2000年に施行された社会保険の1つで、40歳以上の全国民が加入している強制保険の1つとなっています。
介護保険の目的は、介護を必要とする人の自立を支援し、その人らしい生活を維持することです。介護予防や日常生活支援などの事業を通じて、介護が必要になるリスクを減らすことも目指しています。
介護保険では、介護が必要な人の状態に応じて、要支援認定や要介護認定を行い、その結果に基づいて、利用できるサービスや負担額が決まります。介護保険のサービスには、施設や居宅で提供される介護サービスや福祉用具の貸与などがあります。
訪問介護
デイサービス
介護老人保健施設
特別養護老人ホーム
サービス付き高齢者住宅(サ高住)
上記のように、介護保険で使えるサービスがあります。介護保険が作られた当時は、福祉サービスを使うことに抵抗がある高齢者が多かったのです。そのため、「高齢者が介護を依頼しにくいと思うことがないように、利用するときに利用料を払っていただき、頼みやすい環境を整えよう」という建前で作られたのが、介護保険です。
介護保険が適応する前は、介護料は応能負担でした。要は世帯収入によって、利用料が決まります。世帯収入が多いと、親を施設に入れるより入院させておいた方が家族にとっては負担が少なかったのです。そのため、国による医療負担が増加していたのです。介護入院を避けるため、介護保険が出来たと言っても過言ではありません。
家での生活を支援してくれる訪問介護
訪問介護とは、介護保険サービスの一つで、要介護状態の方の自宅にホームヘルパーが訪問し、身体介護や生活援助を行うものです。身体介護とは、食事や入浴、排泄、服薬などの日常生活に必要な介助を指します。
生活援助とは、洗濯や掃除、調理などの家事や、通院の付き添いなどの支援を指します。訪問介護を利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、市区町村が行う高齢者の介護度を判定することです。
要介護認定を受けた方は、ケアマネージャーと相談してケアプランを作成し、利用したい訪問介護事業所を選びます。訪問介護は、自宅で安心して生活できるように支えるサービスです。
家族の介護負担を軽減し、楽しみの場であるデイサービス
デイサービスとは、介護が必要な方が日中に施設に通って、食事や入浴、レクリエーションなどを受けることができる通所サービスです。デイサービスは、在宅介護を行う家族の負担を軽減するとともに、利用者の生活の質を向上させる効果があります。
季節感を味わってもらう為に、フロアの飾りを変えています。またレクリエーションでも季節に合わせた話題作りをしているので、季節感を味わう以外にも認知症予防にもなります。また家族との連携が強くなっています。
デイサービスには、医療的なケアを必要とする方向けの医療型デイサービスや、認知症の方向けの認知症対応型デイサービスなど、さまざまな種類があります。デイサービスの利用には、介護保険の認定が必要です。利用料金は、自己負担分として1割または2割を支払うことになります。
病院と家の中間施設である介護老人保健施設
介護老人保健施設とは、介護を必要とする高齢者に対して介護サービスやリハビリなどを提供し、自宅復帰への支援を行う施設です。介護老人保健施設では、医師や看護師、介護士、理学療法士などの専門職がチームとなって利用者の状態に応じたケアプランを作成し、日常生活の自立を目指します。
介護老人保健施設は、介護保険制度のもとで運営されており、入所するには要介護1以上の認定を受ける必要があります。また、入所期間は原則として6か月以内となっており、自宅復帰が困難な場合は他の施設への転居が必要です。介護老人保健施設は、利用者のニーズにきめ細かく応えるとともに、地域に開かれた施設として在宅ケア支援の拠点となっています。
介護老人保健施設での入所期間は、原則として6カ月以内となっています。ですが、その期間に在宅復帰、もしくは次の住居が見つけられない人もいます。また、施設内で体調不良になり救急車で病院に帰ってしまう場合もあります。
体調を崩しても救急搬送せずに「看取り」という選択肢を選ぶこともあるでしょう。「看取り」とは施設で死を迎えることです。親は高齢であることから、無理はさせたくないという想いもあります。状況によって選択は変わってきますが、納得がいくまで医師や看護師、介護士と話すと良いでしょう。
終の棲家である特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームとは、介護保険法に基づいて設置された、要介護状態の高齢者が入所し、生活全般にわたって介護や医療を受けられる施設のことです。特別養護老人ホームでは入所者の個性や尊厳を尊重し、自立した生活を支援するとともに安心して暮らせる環境を提供します。
特別養護老人ホームに入所するには、介護保険の要介護認定を受け、市町村の窓口で申請する必要があります。特別養護老人ホームの費用は入所者の収入や資産に応じて決まりますが、一部は介護保険から支給されます。
特別養護老人ホームは、体調を崩して救急搬送する以外は、ずっと生活する場所です。「終の棲家」という言葉の通り、特別養護老人ホームで人生の最期を迎えることもあります。施設なので同じ施設で暮らす人と仲良くなったり、クリスマス会や夏祭りなどのイベントでは楽しむことが出来ます。
サービス付き高齢者住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づいて登録された賃貸住宅のことです。サービス付き高齢者住宅は、一般的に「サ高住」と呼ばれています。
サ高住では、高齢者が自立した生活を送るために必要なサービスを提供しています。例えば、安否確認や生活相談、食事や清掃などの生活支援サービスです。また、バリアフリー仕様になっており、入居者の身体的な負担を軽減しています。
入居条件や費用は施設によって異なりますが、一般的には60歳以上であることや、自立から要支援2までの認定を受けていることなどが求められます。サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して暮らせる住まいの一つです。
サービス付き高齢者向け住宅には、介護型と一般型があります。介護型は、施設内で介護サービスを受けられることが特徴です。
一般型
自分のペースで生活を送れる「一般型」は、サ高住の数のうち、ほとんどを占めています。自由に外出したり、住宅内で開催されるイベントに参加したりと、活発に生活できます。ダイニングで他の利用者と交流が可能な、住宅もあるようです。
一般型は入居を想定した施設なので、介護が必要になった場合は外部のサービスを使用する必要があります。住宅によっては、要介護度が高くなったときに、退去になることも施設によってはあります。
サ高住ではオプションで、食事を提供している施設が多いようです。ですが、提供義務がないため、必要な人は入居時に確認しておくと良いでしょう。
介護型(特定施設)
介護型は、サ高住の中でも「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。利用者となるには介護保険による介護認定を受け、要介護か要支援と認定を受ける必要があります。食事や入浴介助のほか、介護や看護などのサービスなど介護施設と同等のサービスが受けることが出来ます。そのため、介護度が上がってもサービスを受けることが出来ます。
入居費用やサービス費用は、自己負担となります。介護型のサービス付き高齢者向け住宅は、安心して暮らせる環境を提供するとともに、高齢者の社会参加やコミュニティ形成を促進する役割も果たしています。
施設によっては外出や面会に制限を設けているところもあるので、一般型より自由度が低くなる場合もあります。そして、サ高住の介護型の割合は少ないのが現実です。
参考:高齢者住宅施策の現状と今後の方向性 (mlit.go.jp)
介護保険ではない有料老人ホーム
有料老人ホームとは、高齢者が自立した生活を送るために利用する施設の一種です。有料老人ホームでは、入居者は自分の部屋や家具を持ち、食事や清掃などのサービスを受けることができます。また、医療や介護の必要な方には、専門のスタッフが対応します。
有料老人ホームの費用は、施設の規模や立地、サービスの内容などによって異なりますが、一般的には月額数十万円から数百万円程度です。有料老人ホームに入居するメリットとしては、自分のプライバシーを守りながら快適な生活を送ることができることや、社会的な交流やレクリエーションを楽しむことができることなどが挙げられます。
有料老人ホームに入居するデメリットとしては、費用が高額であることや、施設のルールに従わなければならないことなどが挙げられます。有料老人ホームに入居するかどうかは、個人の希望や状況によって異なりますが、入居前には施設の見学や契約内容の確認などを行うことが重要です。
介護施設を使っても親の近くに住もう
「親が施設にいるなら、遠くに住んでいても大丈夫」なんて思っていませんか?確かに施設に入っていれば、介護は介護士さんたちが、体調管理は看護師がしてくれます。家族としては「遠くに住んでいても問題ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、施設に入所していても、親が着ている服を洗濯するために通う必要があります。洗濯できないのであれば、リース服(レンタルの服)を使うことも可能です。しかし、施設によってはリース服のレンタルサービスを提供していない場合もあります。
生活を支える介護士と、体調管理を見てくれている看護士がいる施設でも、高齢者では急変する場合があります。自分の親が急変した場合、救急車で病院に搬送することもあります。親が病院に入院することになったら、家族が入院の手続きをする必要があります。以上の点から、親の近くに住んでいる必要があります。
①親を自分の近くの施設に入れる
親を自分の近くの施設に入れるということは、親には住み慣れない地域にきてもらうということになります。ですが、施設に入るという事で、施設の中で交流を持って慣れてもらいましょう。高齢者は環境が変わると、認知症が進む傾向にあります。そのサポートを踏まえ、施設に頼るということになります。
②自分が親の近くに引っ越す
施設に頼っても在宅で暮らしても、親の近くにいることは必須になります。在宅で暮らす場合は特に、自分が親の近くもしくは同居する必要があります。環境の変化を最小限にすることで、認知症の進みが遅くなるうえ、親が築き上げた友人関係を壊さずに済みます。施設に入って近くにいる必要性は、衣類の洗濯や急変時に駆け付けることが出来るので有利です。
デメリットとしては自分の仕事を変えなければならなかったり、家族全員の引っ越しにより配偶者や子供の環境を変えなければならなかったりと、周囲がしんどさを担う事にもなりかねません。
③後見人を付ける
後見人とは、成年被後見人や未成年被後見人の法律上の代理人であり、利益を守るために行動する人です。後見人は、対象者の財産管理や日常生活に関する事務を行います。後見人は、家庭裁判所によって任命されます。
後見人になるには、一定の要件を満たす必要があります。例えば、満20歳以上であること、刑事責任能力があること、破産していないこと、対象者と利害の衝突がないことなどです。後見人は、対象者にとって最善の利益になるように行動してくれる人です。
後見人を頼むには、金銭的に負担がかかります。キーパーソンは身近な家族であることが、本人にとっても金銭的にも良いと思います。ですが本人が天涯孤独であったり、家族が遠くに住んでいて頼れなかったりで難しいこともあるでしょう。家族がキーパーソンとなることができなければ、後見人を使うことも視野に入れると良いでしょう。
まとめ
利用者様が施設に入所する際、サマリー(利用者さんの情報)が介護士や看護師の目に触れることになります。私が知っている利用者様で、親戚の結婚式で倒れて救急車搬送された方がおられました。
ずっと元気で過ごせれば良いと考えるのは、皆の願いでしょう。病気をして入院生活を送り、介護福祉施設で暮らしたことがあったとしても、リハビリなどの努力によって在宅復帰(家で暮らすこと)が出来れば、とても幸せなことです。
介護は子育てとは違って、親の介護はいつまで続くかわかりません。行政や医療機関・介護施設などと関係機関と連携を持ち、頼りながら親の介護をしていくと良いでしょう。
writer;介護福祉士 水谷真希江
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