見出し画像

記憶に残る思い出とは(男旅 vol.4 直島)

2021年夏、長男と四男を連れての男3人旅。大阪と兵庫の実家を回ってから、アートの島として知られる香川県の直島にやってきました。すでに横浜〜長野〜滋賀〜大阪〜兵庫と6日間の車移動で、少しお疲れ気味の長男と四男。1泊7000円のゲストハウスに滞在して、直島とお隣の豊島を3泊4日でじっくり巡ります。

僕はこの3ヶ月前にはじめて直島を訪れたんですけど、島のちょうどよい規模感や身近にアートがある雰囲気に居心地の良さを感じました。また安藤忠雄、ジェームス・タレル、ウォルター・デ・マリア、内藤礼といった、第一線で活躍するアーティストの作品を鑑賞できます。アート鑑賞ってきれいな美術館の壁に飾られた額縁の中の世界だと思っていました。しかし、直島のアートはモネの2x6mの絵画とこの作品を鑑賞するためだけに作られた部屋や、人間の視覚をもてあそぶようなアート作品など、まるでアート空間に自分が入り込むように体感できる面白さがあります。

直島がよぉくわかる、この本はとてもおすすめです。直島を見る視点がかなり変わりますよ。

進路志望を建築に決めた高1の長男が、建物全体が地面に埋め込まれた地中美術館や、100年前の古民家をアート作品に変身させた家プロジェクトなどを見て回ることで、いい刺激を受けてくれるかな?と期待していました。小学三年生の四男はアートのことはよくわからないと思うので、体調を崩さないようにテーマパークっぽく楽しんでくれたらそれでいいかな、という思いです。

さて、その小学三年生の四男が夏休みの宿題で絵日記を描いたんですけど、直島のどんなことを描いたでしょうか?

答えはサイクリング。直島は自転車でぐるっと一周できるコンパクトな島なので、レンタサイクルを利用する観光客が多いんです。ただし坂が多いので電動自転車でないとかなり体力を消耗します。そこで、僕と長男は電動自転車を借りました。四男は僕の後ろに乗せるつもりだったんですけど、「僕も自分で自転車を漕ぎたい!」って言い出して聞かなかったんです。そこで、子供用の自転車を借りて3台で走り出しました。

自宅に置いてある四男の自転車は、お兄ちゃんのお下がりで古い小さな自転車です。いつも「じぶん用のかっこいい自転車が欲しい!」と言っていたので、ひそかにチャンスを狙っていたのかもしれません。

案の定、スタートして20分ほど坂を登って地中美術館に着いた時点で四男はもうヘロヘロ。これ以上は無理だなと判断して、駐輪場に四男の子供用の自転車を置き、そこから僕の後ろに四男を乗せて美術館を巡りました。一通り島を巡って、子供用の自転車を置いていた駐輪場に戻り、四男も再び自分の自転車に乗ってレンタサイクル屋がある港に向かったんです。

その道中がすごくよかった。夕暮れの地中海を眼下に眺めながら、下り坂を「イエーーイ!」ってスピードを出しながら走っていったんですね。あこがれのかっこいいお兄ちゃん自転車に乗って、美しい風景を眺めながら風を感じて疾走する体験が、四男の小さい身体に刻まれていたんだと思います。

子供が小さいうちってどこかに連れて行っても、記憶に残る思い出って単純じゃないですか。いいホテルに泊まったことより、その近くの公園で遊んだことだったり。僕も昔は「せっかく連れてきたのに、張り合いがないなぁ」と思っていたんですけど、よく観察してみると大人も見習うことがあるんだなと思いました。

例えば、これから3週間後に岐阜県の岩村城址っていう昔のお城跡に行ったんですけど、ここは織田と武田の激戦地だったとか、本能寺の変の直前にここで信長と光秀が一緒にいたとか、そういう背景や文脈を知ることで心を動かされます。それはそれで、大人の知的な楽しみとしていいんですけど、一方で石垣をよじ登ってみるとか、身体感覚的な楽しみ方を忘れていると思うんですね。

直島の長男と四男の対象的な楽しみ方を見て、この2つの楽しみ方を観察できるのはとても貴重なタイミングだなと感じました。

今回の旅で撮った、僕の「いい写真」、長男と四男が李禹煥美術館にある彫刻作品「無限門」の前でジャンプしている写真です。

画像1

僕にとって「いい写真」とは、人生のかけがえない瞬間を残した写真です。

作品の「無限門」は「ここを通るたびに新しい体験をしてもらいたい」という想いを込めて名付けられたそうです。これから高校生活〜大学受験を経て新しい世界に向かう長男と、兄の背中を見ながら自分の道を模索する四男。次に「無限門」を通るときは、どんな体験をしてくれるのか、楽しみで仕方がありません。

あなたにとって「いい写真」とは何ですか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?