留学生と古文・漢文:日誌(令和二年十月二十八日)1170日目

概要:総合得点220(可判定)。大学院演習に参加。

6:55に起床。睡眠の質はきわめて良好。

日目標は「演習」とする。

午前中、ローテーション論文1本を読んだ。

午後は大学院の演習に参加した。

演習後、会議に参加。終了後、専門書の論文を1本読み、二つめの原典調査を7件こなした。『大和物語』は35段まで読み進めた。今日はここで終業にする。

総評

基礎研究20/総合得点220(可判定)

日目標を達成できたがあまり自分のために時間を割けなかった。11月15日に外部のオンライン読書会に参加するのでそろそろその事前準備を行いたい。授業形式の読書会の教材研究もするべきである。
これは元国語科教員として唯一可能な留学生にむけたささやかなボランティアである。
これまで私が関わってきた研究室の留学生の古文読解力はなかなか高い。自画自賛のようにも聞こえるがそうではない。これは留学生=日本語学習者が現代日本語の延長線上で古典文法を把握するからである。
そこに問題点があり、古語の捉え方が間違っている場合が往々にして見られる。また漢文訓読について留学生にとっては未知の領域であることがほとんどで、漢文訓読のメカニズムを初歩から教えないと学会発表などで資料/史料の読み上げができない。これは日本思想史研究者にとっては致命的である。最大の問題は大学がこうした留学生に対するフォローを行っていないことである。こうした問題意識から筆者は留学生にむけた古文・漢文の授業形式の読書会をボランティアで開催しているのである。

大学研究室の古文漢文読書会では古文と漢文それぞれに90×15回でひととおり教えることにしている。これは国語科教員としてはかなり至難の業で、高校で数年かけて授業/学習する内容を15回に圧縮するのでシラバスづくりにかなり骨が折れた。内容からしておそらく相当無理をさせていると思われる。そこで私は課外の補講としてnoteやTwitterで留学生たちをフォローしようと思った(まだ彼らにはここの存在を知らせていないのだが。)。
いちおう宣伝しておくと枯野屋塾として学外からもこれに参加可能である。
資料印刷費だけはいただく形にはなるが非営利である。

古文に関して、日本語学習者が参照可能な文献として私の手元にあるのはコロンビア大学出版会が出しているハルオ・シラネ著『CLASSICAL JAPANESE A GRAMMAR』という洋書がある(今は倍以上値上がりしていて買い時ではない。)。

https://www.amazon.co.jp/Classical-Japanese-Grammar-Haruo-Shirane/dp/0231135246/ref=pd_bxgy_3/355-3271042-4747630?_encoding=UTF8&pd_rd_i=0231135246&pd_rd_r=3a448cbc-7b1e-45e0-84ce-aa7062d80412&pd_rd_w=0DimQ&pd_rd_wg=e2eAY&pf_rd_p=e64b0a81-ca1b-4802-bd2c-a4b65bccc76e&pf_rd_r=DGYHGSH18BP6DYTM847H&psc=1&refRID=DGYHGSH18BP6DYTM847H

ハルオ・シラネは国文学者であれば聞いたことのある名前ではないだろうか。著名な学者である。ただしこれはとある日本の日本人向けの学習参考書をまるまる英訳したものに過ぎない。
それゆえに日本人学習者の知識や常識を前提としているため、日本語学習者に対する配慮がほぼなされておらず、そのままでは使うことは難しい。
漢字文化圏の学習者や、ある程度日本語ができる学習者に対しては、むしろ日本語で書かれた学習参考書を解説しながら教えた方がよいと思われる。そちらの方が経済的かつ効果的であろう。
このシリーズとして英語の古語辞書もあるが、日本語で書かれた古語辞典を読んで用例や語義の派生を把握するほうがよい。

漢文訓読については、なぜ日本人が訓読という知的技法を用いたのかという観点で言語学的な言語形態論から教える必要があるだろう。漢字文化圏以外の学生に説明することは今の私にも難しいが、今後もよりよい指導法を考えていきたいと思う。

令和二年十月二十八日 枯野屋 しるす

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