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かおる奥様ストーリー⑨

ようやく快楽の余韻から戻って来た俺は、ベッドに行く前に汗をシャワールームで流してしまおうと提案した。一応呼ぶ前にシャワーは浴びているが、暖かい日だった為歩いている間にも多少汗をかいているだろう。
「そうですよね。今日ちょっと暑かったから…」
かおるさんは頷いてくれたが、その瞳にはどこか期待するような色も浮かんでいた。その正体に俺が気付いたのは、脱衣室で何気なくネクタイを緩める瞬間だった。
「かっこいい…」
 俺がいつも通りワイシャツのネクタイを指でずり下げていると、かおるさんは一言そう零した。彼女は既に上着を緩め、肩にゆるく羽織るのみの状態である。若干内股になった太ももの肉感が強調され、思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。
「私、男の人がネクタイを緩める仕草が大好きなんです。ちょっとドキドキしちゃった」
 照れくさそうにそう言った後、彼女は頬を赤らめながら素肌を晒した。特にイケメンというわけでもない自分にときめいてくれる人がいるというのは、この年になっても嬉しいものだ。
「そ、そうかな…でも、嬉しいな」
 素直に気持ちを口にしながら、シャワー室の扉を開ける。何気ない風を装いながらも、俺の内心はまた温かいものに満たされていた。

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