「墓の魚」の芸術と蠅というシンボル
こんにちは。
「墓の魚」の作曲家です。
今日は「墓の魚」の作品に何度も登場し、
腐敗表現(Vanitas)、墓地の芸術(Graveyard Poets)と、
切って離せない関係であるハエ(Diptera)
についてお話したいと思います。
さて、こちらは「墓の魚」の演奏者の
譜面台(譜面隠し)に付いているハエです。
ハエは象徴学では[腐敗]の印であり、
死体に集る虫である事から、
死の象徴としてもヴァニタス絵画などで描かれます。
ハエの幼虫である蛆(マゴット)も、
メメントモリ芸術の世界では人気者で、
古くから、死体に涌く蛆虫は[腐敗]や[罪]、
[罪への呵責、後悔]を表しているとされますが、
成虫であるハエは時として、
[敵への粘り強さ]の象徴として描かれる事もあります。
フランスには紋章にハエが描かれている町もありますからね。
ハエと人間の西洋文化の関りは深いのです。
特にブラックユーモアの領域では、ハエは人気者です。
他にも、西洋家具職人の世界で、
アンティーク塗装の時に、わざと古めかしく黒い点を付ける事を
Fly speck(ハエの糞)と言ったりしますよね。
さてさて、
ハエは、双翅目と呼ばれる昆虫の一群で、
近い種類に蚊やアブやブユがいます。
時々、ハエと和訳されているものでも、
原文の海外の書物では
双翅目的な大雑把な意味合いで書かれていて、
蚊やアブなども、[ハエ]と扱われる事があります。
分類学が今の様に発達していなかった古典芸術の世界で、
生物の名前が今よりも大雑把な範囲で呼ばれる事があるのは、
古典あるあるです(慣れてしまうと、楽しい違和感です)
「墓の魚」には、ハエは
絵(Copia de la tumba)の中に特に多く描かれる他、
詩(El Sventrament)にも登場します↓
「犬蠅の様に頭を低く垂れて、
小麦の甲虫(アンネトン・デュ・ビリ)の這う
湿った朽木の肌に口づけする。
我はキリストの青い魂を求め
ギターラ弾きに50レアルを渡し、
猜疑心のファドを歌う囚人」
(「犬蠅」より)
また、過去には「墓の魚」の公演名が
「蠅もたからぬ腐敗」
(Une corruption qui ne ramasse même pas les mouches.)
だった事もありました。
そんな訳で「墓の魚」の音楽を聴く方は、
ハエから逃れる事は出来ません(笑)
でも虫が苦手な人でも
「うわー嫌だ」
と思って、全然いいのです(笑)
その嫌悪する物の中に
[気品ある気高い真実]を見つける事こそが
知性であり、この手の芸術の狙いなのですから。
ちなみに次回「墓の魚」公演では、
「墓の魚」オリジナルのハエのTシャツを販売予定ですよ(笑)
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