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詩「もう何も残っていないという救済」

「もう何も残っていないという救済」
黒実 音子



私達は暗闇の大嵐の中を突き進み、
楽園を目指している。

爪で肉を引き裂くという
[目的地を持つ苦痛]。
求不得苦という遠方の病の悲惨。

だが、死とは、
航路からの退陣ではなく、
我々は死を沈着させ
木質化する大樹の様に、
死細胞によって
時間を蓄積させてゆくのだ。

積み重ねられた自我の無い死は、
過去の死者達の骸を積んだ大型船となり、
その黴びたコルクの匂いと、
湿度の高い船には
航海士達のファドも似合わぬ。

さて・・・
気付けば歪な
篩部になっている夢を見たか?

それでも透き通った管の中から
光を求め、手を伸ばすのなら、
ああ、サリュート!!
キリエ・エレイソン!!
最早、何を切望していたのかも忘れた
我々の残滓に哀れみを!!

もう何も残っていないという救済。

眠れ!!

ヤシと、
塩性植物達が茂る白い砂浜は、
欲望という嵐も、
自我という哀しみも、
もう過ぎ去った過去の
ガレオン船の木片(リグヌム)に過ぎないのだと伝えている・・




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