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ねこさん・わんちゃんのアレルギー その9 痒がっているとアレルギーになる?③


はじめに

前回の記事では、どんなことがおこると食物アレルギーになってしまうのかについて解説しました。

これは、食物アレルギーが起こる仕組み、つまりアレルゲン(アレルギーの原因となる成分や物質)を含んだ食べ物を食べたときに何がおこるかではありません。

「そもそも、なぜその成分がアレルゲンになってしまうのか?」言いかえると、「なぜ体はその成分をアレルゲンとして認識してしまったのか?」についてです。

「よく食べているものがアレルゲンになる」というわけではありません。


■ 皮膚から入ってきたものをアレルゲンと認識しやすい

もちろんすべてのアレルギーに当てはまるというわけではありませんが、「皮膚のバリアが低下している部分から侵入してきたものを体はアレルゲンと認識しやすい」ということが最近わかってきました。

もう少し詳しく説明すると、「皮膚のバリアが低下している部分から侵入してきたものに対してはIgE(抗体)を作る」ということです。

IgEは、マスト細胞というヒスタミンなどの炎症物質を作って蓄えている細胞の表面にくっついて敵を待ち受けます。
このような状態になることを「感作かんさ」あるいは「感作が成立した」といいます。

感作が成立すると、「IgE+マスト細胞」は敵が侵入してきた場所だけでなく、全身の皮膚や呼吸器粘膜、消化器粘膜に配備されます。

再び敵が体のどこかに侵入して、マスト細胞の表面にあるIgEのうちの2つにまたがるようにしてくっつくと、それが引き金になって、マスト細胞がヒスタミンなどの炎症物質を放出します。
すると、それによって多くの好中球やマクロファージなどが集まってきて炎症反応がおこります。そしてさらに好酸球も集まってくると激しい炎症反応が引きおこされます。

この反応は、もともと体にとって必要な反応なのですが、侵入してきた敵が花粉や食べ物に含まれるタンパク質など、無害なものであった場合は、本来は必要のない激しい炎症がおこるため困ったことになるわけです。

花粉や食べ物に含まれるタンパク質などは無害ではありますが、もともと自分の細胞ではありませんから、やっぱり「敵」としてやっつけることになります。

ただ、やっつけかたに問題があって、「IgE+マスト細胞」 → からの 「好酸球やマクロファージ、好酸球まで総動員」しなければいけないほどの敵ではありません。

以前の記事にも書きましたが、「敵をやっつけるメリット」と「敵をやっつけるためにおこる炎症反応」のバランスがバグっているのが「アレルギー」というわけです。

詳しいことは前回の記事をお読みください



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