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ねこさん・わんちゃんのアレルギー その11 アレルギー用の療法食の選び方



はじめに

前回の記事では、アレルギー用の療法食がどんなフードなのかについて解説しました。

アレルギー用の療法食は、一般的には「Ⅰ型アレルギーがおこる条件に当てはまらないフード」です。

具体的に言うと、

  • 体が敵だと勘違いしている「特定のタンパク質」を含まない

  • 肥満細胞の表面にあるIgEの2つにまたがってくっつくようなタンパク質を含まない

のどちらかに当てはまるフードのことです。

詳しいことは前回の記事をお読みください。


これをふまえて、今回はアレルギー用の療法食の選び方について解説します。

もちろん、アレルギー用の療法食を飼い主さんがご自分で選ぶことはないはずです。アレルギー用の療法食を選ぶ前に、そもそも、ねこさん・わんちゃんが食物アレルギーかどうかを診断することが必要ですし。
ですから、今回の記事では、獣医さんがアレルギー用の療法食を選ぶときに、どんな手順で選ぶのかについて解説していきます。

これから解説するのは、アレルギー用の療法食を療法食を選ぶときの一般的な手順です。

当然ですが、それぞれのねこさん・わんちゃんの症状などによって、手順などが違うことがあります。


■ 症状だけをみて「アレルギーですね」はNG

アレルギー用の療法食を選ぶ前に、まず、ねこさん・わんちゃんが「食物アレルギー」だと診断する必要があります。ただし、ねこさん・わんちゃんの症状だけをみて、「食物アレルギーですね」と診断することはできません。

ねこさん・わんちゃんが痒がっていた場合、食物アレルギー以外にも同じような症状が出る病気はいくつもあります。
例えば、ねこさん・わんちゃんのアトピー性皮膚炎や細菌・真菌しんきん(水虫の仲間)の感染、ダニの寄生などがそうです。

ねこさん・わんちゃんが痒がっている場合、まず、細菌・真菌の感染やダニの寄生がないことを確認する必要があります。とくに、痒みを抑えるためにステロイド剤を使う場合は、確実に細菌・真菌の感染やダニの寄生がないことを確認しなければなりません。
ステロイド剤は、免疫細胞を抑えることで、炎症反応や痒みを抑える薬です。万一、細菌・真菌の感染やダニの寄生があった場合は、ステロイド剤を使うとかえって症状が悪化してしまいます。


そして、「アレルギー」と診断する場合は、原則として、何に対するアレルギーかを確認しなければいけません。「何のアレルギーかわからないけど、とにかくアレルギー」というのは、本来、ありえません。

ねこさん・わんちゃんのアトピー性皮膚炎もアレルギーが関係する病気ですが、病気の仕組みが複雑で、ピンポイントで「〇〇アレルギー」とは診断できません。
逆に言えば、だからこそ「アトピー性皮膚炎」と診断されるわけです。



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