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ねこさん・わんちゃんのアレルギー その10 アレルギー用の療法食


はじめに

ねこさん・わんちゃんのアレルギーシリーズも10回目になりました。
今回は、アレルギー用の療法食について解説します。
ようやくペットフード講座らしく(?)なりました。

これまで、こんなにたくさんの解説をしてきたのは、アレルギー用の療法食や低アレルギーフードのことをちゃんとわかってもらうために、免疫やアレルギーについて知っておいてもらいたかったからです。


■ アレルギーのおさらい

「アレルギー」とは、本来は体に無害な成分や物質に対して、必要以上の免疫反応・炎症反応がおこるために、かえって体に害を与えてしまう免疫の異常ことです。

もう少し詳しく説明しましょう。

体は、自分の体を構成している細胞など(自己じこ)と、それ以外のもの(異物いぶつあるいは非自己ひじこ)を区別しています。この自己と異物を区別して、さらに異物を敵としてやっつける仕組みを免疫と呼んでいます。

その免疫には大きく分けて2種類あります。
どんな敵かを大雑把おおざっぱに識別して穏やかに反応をする「自然免疫」と、どんな敵かをピンポイントで識別して激しい反応をおこす「獲得免疫」の2つです。

いっぽう敵として認識される異物には、細菌やウイルスのように体に大きなダメージを与える”ヤバいもの”もあれば、食べ物に含まれる成分や花粉のように、敵ではあるものの体に直接ダメージを与ない”ヤバくないもの”もあります。

本来、ヤバい敵に対してはおもに獲得免疫が働き、ヤバくない敵には自然免疫が働きます。敵がヤバいものなら、激しい反応をおこしてでも獲得免疫でやっつける仕組みになっているわけです。

ところが、本当はヤバくない敵なのに、体が”勘違い”して獲得免疫が働いてしまうのがアレルギーです。ヤバくない敵に対して、勘違いして獲得免疫が働いた結果、必要以上に激しい炎症反応がおこってしまって、かえって体がダメージを受けてしまうんですね。


そしてアレルギーと、とくに関係が深いものが次の2つです。

  • IgE(抗体の一種)

  • マスト細胞(肥満細胞ともいいます)

マスト細胞はヒスタミンなどの炎症物質を作って細胞の中に蓄えています。そしてIgEはマスト細胞の表面にくっついて敵を待ち構えています。

IgEとマスト細胞


侵入してきた敵が、マスト細胞の表面にあるIgEの2つにまたがってくっつくと、それが引き金になって、マスト細胞はヒスタミンなどの炎症物質を放出します。それによって激しい炎症反応がおこります。

この反応がヤバい敵に対しておこった場合は正常な免疫反応なのですが、同じ反応がヤバくない敵に対しておこるのが「アレルギー」です。
そして、このようなアレルギーをおこす原因となる成分や物質を「アレルゲン」といい、そのほとんどはタンパク質です。

2つのIgEにまたがって敵がくっつくと肥満細胞はヒスタミンを放出

このIgEとマスト細胞による炎症反応は、本来は寄生虫に対して起こる反応です。ところがヤバくない敵であっても、ある条件を満たすと、体はその敵を寄生虫だと勘違いしてしまいます。

詳しいことは、下の記事をご覧になってください。


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