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ペットフード基本の『き』 療法食の基本より少し深いトコロ



はじめに

前回の「ペットフード基本の『き』」では療法食がどんなフードなのかを解説しました。
ポイントは以下の3つです。

療法食とは

ただ、獣医さんに療法食を選んでもらっても、あげ方を間違えてしまうと、せっかくの療法食の効果を発揮することができなくなってしまいます。

そこで今回は、療法食を利用するときに飼い主さんが勘違いしやすいポイントを中心に、基本よりも少し深いトコロを解説していきます。

療法食がどういうフードなのかを知ることで、正しく利用することができますので、ぜひ、この記事を参考にしてください。

※ この記事以外にも、noteで記事を公開しています。

 下のリンクに公開している記事の一覧があります。ぜひご覧ください。
  ↓ ↓ ↓
ペットフード会社に25年以上勤めた獣医師のペットフード講座 記事一覧

今回のポイントは次の3つです。

では、これらについて解説してきましょう。


◼️他のフードと混ぜない

ねこさん・わんちゃんが療法食だけでは食べてくれない場合や、食費を節約したい場合などに、「療法食にいつものフードを半分混ぜても、半分くらいは効き目があるだろうと」考えて、フードを混ぜてしまう飼い主さんがいます。

なんとなく、療法食に「お薬的な何か」が入っていると勘違いしているんですね。

前回お話したように、療法食は「ふつうのフードにも含まれている栄養成分の量や比率を病気に合わせて調整してあるフード」であって、お薬が入っているわけではありません。

ですから、いつものフードに療法食を半分混ぜたからといって、半分くらい効き目があるというものではないのです。

フードに含まれている栄養素の全体的なバランスがとても大事ですから、違うフードを混ぜると、まったく効き目がなくなってしまう療法食がほとんどです。

例えば、ある栄養素を制限した療法食の場合、給与表どおりにあげると、その栄養素の吸収される量が一定以下になるように調整されています。
この場合、単にその栄養素の吸収される量が少なくなることではなく、「吸収される量が一定以下になる」ことが重要で、そうでなくては効き目がなくなってしまうのです。

ですから、療法食にいつものフードを半分混ぜると、確かにその栄養素の吸収される量は少なくなりますが、吸収される量が一定以下にはなりません。
すると、せっかく療法食をあげているのに、まったく無駄になってしまいます。


また、アレルギー用の療法食は、「アレルギーに効く何か」が入ったフードではなく、「アレルギーをおこす成分が入っていない」フードです。

アレルギーをおこす成分は、多くの場合、ほんの少しの量でもアレルギー反応をおこしますから、「アレルギーをおこす成分が入っていない」ことがすごく大事です。
アレルギーをおこす成分が半分になったからといって、アレルギーがおきなくなるわけではありません。

ですから、療法食にいつものフードを混ぜないようにしてください。

おやつについては、療法食を使っていてもおやつをあげられる場合と、そうでない場合があります。
おやつをあげてもよいかどうか、動物病院で相談してください。

あと、猫さん・わんちゃんが療法食を食べてくれないときには、あげ方を工夫することで食べてくれることがあります。
下の記事を参考にしてください。


◼️治療用の療法食を予防のために使わない

療法食の中には病気の予防・再発予防を目的としたものや、病気の治療・治療補助を目的としたものがあります。

「病気の治療に使えるくらいだから、きっと予防にも使えるに違いない」と考えて、病気の治療用の療法食を予防のためにねこさん・わんちゃんにあげる飼い主さんがいます。
でも、これはやめてください。

先ほどもお話したように、療法食は栄養成分の量や比率を病気に合わせて調整してあるフードですから、目的が違えば療法食の栄養素のバランスも違ってきます。
つまり、病気の予防を目的とする場合と、病気の治療をする場合では中身が違うのです。

さらに、単に特定の栄養素の量やバランスが違うだけでなく、予防と治療では根本的に方法が違うこともあります。
イメージとしては、「風邪薬を飲んだからといって、風邪を予防できるわけではない」というようなことです。

また、そもそも療法食では予防することができない病気もたくさんあります。
例えば、アレルギーや腎臓病などです。


普段からねこさん・わんちゃんにアレルギー用の療法食をあげているからといって、アレルギーにならないわけではありません。それにアレルギーの原因は食べ物ばかりとは限りません。

また、ねこさん・わんちゃんが慢性腎臓病になると、リンというミネラルをうまくおしっこに捨てられなくなるため、腎臓病用の療法食はリンの量が少なくなるように調整されています。
血液の中のリンの量が増えると、その増えたリンによってさらに腎臓病が進行してしまいますから。

だからといって、あらかじめリンの量が少ない腎臓病用の療法食をねこさん・わんちゃんにあげても、腎臓病を予防できるわけではありません。

なぜなら、リンが慢性腎臓病の原因ではないからです。

あくまでも、慢性腎臓病になった結果、血液の中のリンが増えるのであって、リンが慢性腎臓病の原因ではありません。
腎臓の機能が正常であれば、余分なリンはおしっこの中に捨てることができますから、慢性腎臓病になる前からリンの量を制限しても、残念ながら意味がないのです。

それどころか、リンも必要な栄養素ですから、うかつに腎臓病用の療法食を健康なねこさん・わんちゃんにあげてしまうと、リンが不足してしまう恐れがあります。

治療用の療法食を予防のために使うのはやめてください。


◼️実は、ペットフード会社が療法食だと言えば「療法食」

これは療法食に関するルールの問題です。
前回の記事にも書いたように、ペットフードの目的として「療法食の定義」は定められていますが、明確な「療法食の基準」がありません。

そのため、どんなフードであっても、ペットフード会社が「このフードは療法食です」と言うことにルール上、問題がありません。

どんなフードかを説明する場合に、療法食だけに認められている表現があります。
つまり、療法食として販売すると、それだけで他のフードと差別化することが、容易にできるようになってしまいます。

ただ、それでは飼い主さんたちが混乱してしまいますから、公的なものではないのですが、客観的な基準が設けられています。

それが「一般財団法人 獣医療法食評価センター」による療法食基準です。
そして、「療法食基準に適合することが確認され、一般社団法人獣医療法食評価センターに登録された療法食」には「療法食マーク」を表示することができます。

療法食マーク

このマークが表示されている療法食であれば、療法食として一定の基準をみたしていることが第三者によって確認されているということです。
お使いの療法食に「療法食マーク」が表示されているかどうか注目してください。

詳しいことは、一般財団法人 獣医療法食評価センターのホームページをご覧ください。


今回のまとめ

  • 療法食に他のフードを混ぜない

  • おやつについては動物病院に相談する

  • 治療用の療法食を予防のために使わない

  • 療法食マークに注目


療法食は、ねこさん・わんちゃんが病気になってしまったときに、治療を助けてくれる強い味方になってくれます。

でも、療法食はもちろん万能ではありません。
使い方を間違えると、ねこさん・わんちゃんの健康状態をかえって悪くしてしまうことさえあります。

ねこさん・わんちゃんに療法食をあげるときには、動物病院に相談して正しく使ってくださいね。


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