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ペットフード基本の『き』 療法食の基本


はじめに

ねこさん・わんちゃんが病気になってしまったときに、動物病院で療法食をすすめられることがあります。

療法食を使ったことのある飼い主さん、実際に今、療法食を使っている飼い主さんもいることでしょう。

でも、そんな飼い主さんたちの中にも「療法食がふつうのフードと価格以外に何が違うのかがよくわからない」という人もいます。
また、正しい使い方をよく知らないために、ちょっと間違ったあげ方をしてしまって、せっかく療法食を使っているのに、それを活かすことができていない人もいます。

そこで今回は、療法食とふつうのフードは何が違うのか、ねこさん・わんちゃんの療法食を選ぶときには何に気をつけないといけないのか、について基本的なことを解説していきます。

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療法食とは

ペットフード協会では、療法食を次のように定義しています。

獣医師が犬や猫の疾病の治療などを行う際、人間の場合と同様に、栄養学的なサポートが必要な場合があります。 「療法食」とは、治療の内容に合わせてフード中の栄養成分の量や比率が調節され、治療を補助する目的で使用されるフードで、獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図したものをいいます。 (太字は筆者によるものです)

一般社団法人 ペットフード協会HP ペットフードの種類より
https://petfood.or.jp/knowledge/kind/index.html

ポイントは次の3つです。

これらについて、もっと詳しく説明しますね。


■治療の内容に合わせてフード中の栄養成分の量や比率が調整されている

療法食とふつうのフードとの違いがここにあります。

ねこさん・わんちゃんが病気になると、体の中がいつもと違う状態になります。するとそのせいで、特定の栄養成分がいつもよりたくさん必要になったり、逆に特定の栄養成分が体の負担になったりすることがあります。

このような病気になってしまったときに、ふつうのフードに比べて特定の栄養成分が多く含まれているフードや、特定の栄養成分が少なくなっているフードを食べてもらうと、病気の治療に役立ちます。

療法食は、そういったときにねこさん・わんちゃんに食べてもらうように、病気のときの体の状態に合わせて栄養成分の量や比率を調整してあります。

ここで知っておいてもらいたいのが、療法食はあくまでも、「ふつうのフードにも含まれている栄養成分の量や比率を病気に合わせて調整してあるフード」ということです。
「病気に効くお薬のような特別な成分が使われているのフード」という訳ではありません。

もうひとつ、知っておいてもらいたい大切なことが、療法食は病気に合わせて調整されているというよりも、厳密にいうと「病気のときの体の状態に合わせて調整されている」ということです。
これについては、後ほど説明します。

実を言うと、中には「特別な成分」を使った療法食もあります。
ただし、もちろんお薬が使われているわけではありません。

人のトクホ(特定保険用食品)には、「生理学的機能などに影響を与える保健機能成分」が含まれています。このような成分を「関与成分」と言います。

関与成分は、薬のように劇的・安定的ではありませんが、体の生理学的な働きに影響を与えます。
たとえば、「茶カテキン」もそのひとつです。
茶カテキンが一定量以上含まれたお茶には、血中コレステロールを減らしたり、脂肪の吸収を抑えて体脂肪をつきにくくしたりする働きがあることが、実験で確かめられています。

トクホの場合は一定の条件を満たすと、関与成分とその効果を商品に表示することができますが、ペットフードに関してはトクホのような仕組みがありません。

そのため、トクホでいう関与成分に当たるような成分をペットフードに使った場合、「○○含有」と表示することはできますが、その成分にどのような働きがあるかなどを表示することはできません。

療法食の説明に「○○含有」と、ふつうのフードでは見かけない成分を見かけたら、何かの働きがある成分が使われているんだな、と思ってください。

一部 e-ヘルスネット 特保(特定保健用食品)とは? より引用
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-01-001.html


■治療を補助する目的で使用される

たとえば糖尿病のときには、多くの場合、インスリンを使った治療が行われます。
この場合、治療のメインはインスリンですが、その補助として糖尿病用の療法食が使われます。

糖尿病用の療法食には、インスリンのような働きをもつ成分が含まれているわけではありません。
でも糖尿病用の療法食は糖の吸収がゆるやかになるように、糖質や食物繊維の量などをふつうのフードとは違うバランスに調整してあります。

そのため、糖尿病用の療法食と併用すると、インスリンの働きが安定したり、インスリンを使う量を少なくしたりすることができるようになります。

また食物アレルギーの場合のように、治療のメインとして療法食が使われることもあります。


■獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図している

現在、通販など動物病院以外の場所でも療法食が販売されていて、よくも悪くも、必ずしも獣医さんの指導がなくても療法食を購入することができてしまいます。

通販などで購入すれば、価格を安く抑えることができる反面、リスクもあります

上のほうでも書いたように、ねこさん・わんちゃんが病気になると体の中がいつもと違う状態になります。
そして療法食は、病気のときの体の状態に合わせて栄養成分の量や比率を調整してあります。

ということは、体の状態を正しくつかんでいないと、それに適した療法食を正しく選ぶことができません。そして体の状態を正しくつかむには、獣医さんの助けが必要なのです。

しかも、病気のときのねこさん・わんちゃんの状態が変化することは多々あります。そのため、その時々の状態に合わせて療法食を選ぶことが大切です。

たとえば腎臓病や心臓病のような、慢性で徐々に進行してしまう病気のために、病気の進行に合わせて複数の療法食が用意されているものもあります。
このような場合に、病気の進行度合いに応じて療法食を選ばないと、お薬の効き目に影響したり、最悪の場合、さらに病気を進行させてしまったりすることもあります。

ところが、どれくらい病気が進行しているかを飼い主さんだけで確かめることはできません。

ですから、療法食を使う場合には、必ず獣医さんにねこさん・わんちゃんの状態を確認してもらって、その指示にしたがって使うようにしてください。

病気の状態に合わせて獣医さんに療法食を選んでもらいましょう


中には、療法食について説明してくれて、「フードは安いところで買えばいいですよ」と言ってくれる獣医さんもいます。

そのような場合でも、定期的に獣医さんに診てもらって、どんな療法食を選べばよいかを確認してください。


さて、療法食の基本についての解説はここまでです。
療法食がふつうのフードと何が違うのか、ねこさん・わんちゃんの療法食を選ぶときには何に気をつけないといけないのか、お分かりいただけたなら嬉しいです。


今回のまとめ

  • 療法食は「ふつうのフードにも含まれている栄養成分の量や比率を病気に合わせて調整してあるフード」

  • お薬が入っているわけではない

  • 療法食を使うことで、より効果的な病気の治療ができる

  • ねこさん・わんちゃんの体の状態に合った療法食を選ぶことが大切

  • ねこさん・わんちゃんの体の状態を正しくつかむためには、獣医さんの助けが必要

  • 飼い主さんの判断だけで療法食を選ばない


療法食については、飼い主のみなさんに、もう少し知っておいてもらいたいこともあります。
そこで、次回の「ペットフード基本の『き』」では、「療法食の基本よりも少し深いトコロ」について解説します。


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