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遺伝子検査とペットケアに関する海外ペットテックスタートアップ事例紹介

昨今のペットケアのトレンドは、ペットの家族化/人間化に伴い、人間のそれと同じようにペットそれぞれの特徴にもとづいて、健康増進プランを立てて病院や自宅で実行していくこと。ペットの個性を把握する手段として、これも人間と同様に遺伝子検査があります。今回は遺伝子検査に関わるスタートアップを含めたプレイヤーを紹介したsiftedの記事がわかりやすかったので意訳してシェアします。

パーソナライズされた健康。ペットの遺伝学に賭けるスタートアップとVC。

〜動物遺伝子工学の市場規模は、2027年までに64億ドルを超えると予測されている中、注目のペット遺伝子検査のスタートアップをご紹介〜

23andMeのようなスタートアップが、人向けの家庭で出来る遺伝子キットを直接消費者に提供することで、健康や家系に関する洞察を手頃な価格で手に入れられる社会になっている。そして今、同様の技術がペットに導入されようとしている。

人向け遺伝子検査スタートアップでユニコーンの23andme

ペットの遺伝子検査は、獣医、ブリーダー、ペットの親が、血統や品種を確認し、病気を診断し、将来の健康リスクを計画するのに役立つ。

「予測医療や個別医療、遺伝学に基づく診断など、人間で起きていることはすべてペットの領域に移行しています」と、アーリーステージのバイオテクノロジーと長寿に焦点を当てたヨーロッパのVCファンド、LongeVCの創業パートナーであるセルゲイ・ジャキモフ氏は語る。"ペットは生き物として、その長寿や病気の診断・予防にどれだけのお金と注意が払われているかという点で(そしてビジネスとしての成立するという観点で)、人間と重要性が同等になり、これはとてもエキサイティングなことです"。と続ける。

人間の健康に関するイノベーションが動物の世界にやってきたのはこれが初めてではない。例えば、米国のSingalPETは人工知能を使った放射線検査を提供していますが、動物の遺伝子検査は大きなビジネスになる可能性がある。

AIを使った放射線検査を行うペットスタートアップのSignalPET

動物の遺伝子に関わる市場規模は、2020年の$99mから急成長を遂げて2027年には$6.4bnを超えると予測されている。そこで今回はこの分野を掘り下げ、注目すべきスタートアップとベンチャーキャピタルを紹介。

Feragen(オーストリア)

フェラーゲン

オーストリアに拠点を置きペット遺伝子を扱うスタートアップ、フェラーゲンは、獣医分野を自社のビジネスの成長エンジンとして捉えている。このようなツールが一般的である診断から、病気の予防医療を主戦場としてビジネスを行なっていきたいと考えている。

「予防という切り口を押し進めたいのです。犬のライフプランを立てるために、遺伝学から何を学ぶことができるでしょうか。ペットの親たちは、ペットが5歳や6歳になったときに訪れるかもしれない病気のリスクを理解し、症状が現れたときに備えようとする傾向が強くなっています」と、創業者兼CEOのアンニャ・ゲレッチュレーガーは語る。

アンニャの夫で協力者のミヒャエル・ゲレッチェレガーは、「犬がより家族の一員になったことで、予防医療がより注目されるようになった。<デザイナー・ドッグ>時代のブリーダーにとっても、遺伝子の見識は貴重であると付け加える。例えばラブラドールとプードルでは毛皮の構造が異なるため、ラブラドールが皮膚トラブルを起こすなど、異種交配が健康上の合併症を引き起こす可能性があるためだ。

Affinity DNA(イギリス)

Affinity DNA

ヨーロッパでは、ドイツのGeneratio社が、動物の飼い主、獣医、ブリーダー向けに遺伝子検査を提供している。また、オーストラリアの診断会社Genetic Technologiesが5月に買収した英国のAffinity DNAもある。同社は、アレルギーや不耐性の動物検査、親子鑑定、EmbarkWisdom PanelBasePawsといった遺伝子検査を直接消費者に提供するD2C企業と並ぶスタートアップである。

Genetic technologies(ナスダック上場)

Embark

ペット遺伝子検査のスタートアップのEmbark。2015年創業でSeriesBラウンドを終えてこれまでに$95Mを調達。Embarkを紹介した記事は以下から。

Wisdom Panel

2018年にMARSに買収されたWisdom Panel。Embarkとの比較は以下から。

Basepaws

2022年にZoetisに買収されたbasepaws。遺伝子検査を猫向けに特化している点で特徴的。ラトビアのバイオテクノロジー・エンジェル投資家でスイスのLongeVCの創設者であるGarri Zmudze氏は、動物用医薬品と予防接種の会社であるZoetisが最近買収したアメリカの猫遺伝子工学会社Basepawsに投資。basepawsは64のネコの健康マーカーと210以上のイヌの健康マーカーをスクリーニングしている。

Genetic TechnologiesのポートフォリオにはGeneral Genetics Corporationと関連ブランドのEasyDNAがあり、英国のペットオーナーに品種構成テスト、犬の病気感受性テスト、ネコと馬向けのテストも提供している。

Genetic Technologiesに買収されたEasy DNA

ヒトから動物へ、動物からヒトへ。

ペット用遺伝子の領域は、単にペット市場を対象としたものではなく、人間の健康や長寿の科学に情報を提供する可能性がある。人間には稀な病気でも、特定の品種のペットにはよく見られるものがあり、遺伝的な病気の起源を探る研究にとって有用です。

「人間と動物には密接な関係があり、両方から学ぶことができるのです」とAnja Geretschlägerは言う。

例えば、Zmudze氏がBasepaws社に投資したのは、ペット消費市場への賭けでは全くない。その代わり、癌や神経変性疾患などの病気において、動物と人間の間には遺伝子の重複があることから、人間の長寿に関心を持ったのである。

人間と動物には密接なつながりがあり、両方から学ぶことができる。

ワシントン大学医学部の実験医学・病理学教授で、犬の老化に関する世界有数の生物学的研究である犬老化プロジェクトの責任者であるMatt Kaeberleinは、ヨーロッパの製薬大手ロシュやノバルティスの幹部とともにLongeVCの諮問委員会のメンバーである。そして、Zmudze氏はAI創薬のユニコーンであるInsilico Medicineの投資家でもあった。

Insilico Medicine

香港で2014年に創業したInsilico MedicineはAIによる医薬品開発プラットフォームを提供するスタートアップだ。2022年8月にシリーズDで9,500万ドルの資金調達を行い、これまでの累計調達額は4億130万ドルとなっている。
医薬品開発は主に3つ段階を経て行われる。1つ目が病気の原因調査だ。仮説を立て、調査し、学会などで発表する段階なのだが、生物学的評価や薬物動態、バイオマーカーなどのスクリーニングを行いながら標的タンパク質と薬の候補を探す。ここが時間とお金のかかる最大の難関と言われている。2つ目が有効性と安全性の確認だ。候補となった物質が標的タンパク質と反応するのか、また体内への吸収、排出が行われるのかを観察する。3つ目が臨床試験だ。実際に治験を行って人にとって有効で安全であるかを確認する。
同社がユニークなのは、前述した医薬品開発の3段階全てにAIプラットフォームを提供している点だ。・・・それぞれの段階におけるAIプラットフォームをもつ企業は少なくないが、End-to-Endで横断的にAIを提案ツールとして用いてる事例はほとんどない。この点を評価されて、これまで様々な製薬会社がInsilico Medicineと提携している。大正製薬もそのうちの一つで、老化に対する新しい治療法を特定するための共同研究を開始した。その他にもコロナワクチンで日本でも有名になったファイザーや、アステラス製薬などとも共同の創薬開発を行っている。

https://thebridge.jp/2022/12/canvas-generative-tech-insilico-medicine

世界トップクラスの製薬会社が多く存在するヨーロッパは、長寿研究の主要なプレーヤーになる可能性がある。スイスは「Longevity Valley(長寿バレー)」構想を展開しており、ブリストル・マイヤーズスクイブとメルクはがん免疫療法の主要な投資家であり、製薬業界はinitを通じて、老化細胞企業などの初期段階の長寿企業に投資している。「製薬会社は未来に生き、10年、20年のサイクルで生きている」とJakimovは言う。そう、彼らが注目するのは長寿の分野である。

以上です。

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