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ペルシアのパンの話(前編)

ペルシア文化圏の主食はやっぱりナンと呼ばれるパン。九千年とも言われる歴史を持つパン焼きの文化があるペルシアでは、街角のパン屋さんは朝も昼も夜もかまどで焼いた焼きたてのパンを買う人たちの行列でいっぱいです。

もちろん、キャバーブと呼ばれる串焼きや手の込んだ様々な煮込み料理と一緒にご飯もよく食べるのだけれど、主食はやっぱりパンなので、食事時のペルシアの街角はいつも、一抱えもあるパンの山を抱えて家路に急ぐ人たちと、おいしそうなパンの匂いで溢れています。

パンの種類は色々あるけれど、よく出回っているのは、サンギャク、バルバリー、ラヴァーシュ、タフトゥーンという4種類で、サンギャクならサンギャクを焼くパン屋さん、バルバリーならバルバリー屋さんと、街角に立ち並ぶそれぞれ専門のパン屋さんで売っています。

イラン(ペルシア)の首都テヘランは、タブリーズなどアゼルバイジャン地方の人が多いせいか、この地方の人たちが好むサンギャクやバルバリーのお店が多いようです。どちらも全粒粉で焼く歯ごたえのあるパンで、このパンが好きな人は、薄くて柔らかいラヴァーシュやタフトゥーンでは物足りないよ!と言います。

私の家は近くにおいしいサンギャク屋さんがあるので、もっぱらサンギャク派。でも、このサンギャクを買う時は1つ注意しないといけないことが。サンギャクはペルシア語では小石という意味で、窯に小石を敷き詰めてその上で焼くことからこの名前で呼ばれています。それで、焼きたてのサンギャクには熱々に熱した小石がくっついていて、その熱々の小石を自分でひとつひとつ外してから、持ち帰らないといけないのです。まさかと思うのだけれど、「小石を外し忘れて食べたので、歯が欠けた!」とか言う人もいて、パン屋さんではみな一生懸命小石を外しています。(続く)

(Copyright Tomoko Shimoyama 2019)

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