深夜のカップ麺から分かる愛の形
時計の針は22:30過ぎを指していた。
本を読んでいた私の隣で夫がお腹空いてきた。とつぶやいた。
私もまさに同じようなこと考えていたよ。
ちゃんと夜ご飯をしっかり食べても、これくらいの時間になると空腹感を感じてしまうのは何故だろう。
夫が子供みたいな顔をしながら『明日休みだし、悪いことしちゃってもいいかな〜。』なんて言い出した。
何のことか私には分かるよ。目線の先にはカップ麺があるもの。そういうことでしょ?
案の定、私の返事を待たずにお湯を沸かし出した。
かやくの上にお湯を注ぐと、胃袋を刺激する良い香りが漂ってくる。うぅぅ。ずるい。私も食べたい。
深夜に食べるカップ麺の背徳感といったらそりゃもう何物にも変え難い。時間が大きなスパイスになっている気がする。
ズルズル ズルズル 。。。
私の気持ちを知ってか知らずか、無言でひたすら麺をすする夫。
熱い視線を送ってみると、一口食べる?といった表情で首を傾げながらヒョイとカップ麺を上げてみせた。
食べる!
間髪入れずに返答し、夫から箸を奪う。
あまり食べすぎないように、いつもの一口よりも少なめに。ほんのちょっとだけ。
口の中に広がるしょっぱいスープの味。フライされて独特な食感のチープな感じの麺。
たまに食べるとものすごく美味しく感じるのは何故だろう…。
一口食べてしまうとストッパーが外れてしまった。
「スープ余ったらちょうだい。」
きっと残ることは無いだろうけれども、小さな望みをかけて呟いてみる。
夫は何も答えなかったけれど、数分後、どうぞ。と差し出されたカップには私の分のスープがしっかり残っていた。
余ったんじゃない。私のために余らせてくれた。
残ったスープはあなたの優しさの証。
深夜のカップ麺からしか得られない愛の形がある。
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