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リカバリー出来てるのかなにで分かる?

あアスレティックパフォーマンスコーチのタケダイグウジです。

今回真面目に長々と書いてるので、分かりづらいかも。

要はアスリートがどれくらい疲れてて、回復出来てるのか数値化して見てみようよ。ということです。

スポーツをするときに心拍数を測ることは一般愛好者、特にマラソン、トライアスロン、ロードバイク等の持久系競技をされている方には当たり前になってきており、強度設定に役立ってます。
僕はサッカー、バスケ、格闘技の指導で15年以上使用していますが、今回は動いている時の数値を見るのではなく、休んでいるときに測る心拍変動(HRV)について書いてみます。まだなじみ少ないので医療関係者以外知らない方多いかもしれないです。

体調管理、トレーニングのボリューム管理をしていて、前日にそこそこハードな練習をしたから
「今日はこれくらい出来るかも or 逆に軽めにしておこう。」
なんて予定が実際に当てはまらないこと多々あります。

ハードな練習の次の日に軽めの練習設定していたのに、めちゃめちゃ身体動くし反応も良いな。

逆に、大して動いてないのに次の日全然身体動かなかったなんて。
そんなときに参考にしたい指標の1つとしてHRVなんです。

※この記事はScience for Sportsの記事一部を和訳して、僕のデータを含む内容を加筆してます。


心拍変動 (Heart Rate Variability) ってナニ?

心拍変動 (以下HRV) への関心はアスリート界隈では年々高くなっています。昔と違って主観的に疲労の溜まり方や怪我の予防をするだけじゃなくてモニタリングすることでリスクを抑えたいからです。
HRVは心電図のQRS波の一番高いところのR-R間隔または心拍間間隔で各心拍間の時間の変動を反映します。連続する各心拍間の時間差であり、各心拍間の時間は固定/一貫性がなく、心拍ごとに変化するため、心拍数の「変動性」ということで『心拍変動』HRVと言います。

それで何が分かるのかというとストレス、疲労度、リラックス度の指標として活用することが出来て、オーバーリーチングや病気の予測因子の1つにもなるので、怪我の予防にも繋がる可能性があります。

HRV、どうやって測るの?

HRV計測するにはスマホアプリ、指波パルスセンサー(酸素飽和度測るのみたいな)、スマートウォッチに指輪型も信用出来る様になってますが、心拍ストラップセンサーを使うのが一番正確に計測出来ます。
ここ数年でスマートフォン(アプリ)を使用して信頼できる測定値を迅速に確立する能力が向上しているんですよね。僕はPOLAR社の『H10センサー』という胸ベルトを使用しています。計測自体は短時間 (1 分以内) で正確に測定でき、仰臥位、座位で出来るだけリラックスした状態をおススメしてます。

胸ベルト心拍センサー着用

従来HRVは心電図 (ECG) を使用して測定されていましたが、技術の発展に伴い、上記の様な心拍ストラップまたは指波脈拍センサーと組み合わせたスマートフォンアプリを使用して確実に測定できるようになりました。
アスリートにおけるHRVの重要性の前に、そもそも心臓の数値見ているので、元々その主な意義は医療環境での使用です。HRVは心臓発作後の死亡率の予測因子であることが示されてて、うっ血性心不全、糖尿病性神経障害、うつ病とも関連しています。

HRVを計測出来るアプリって何?

何度も書きますが、僕はH10センサーを使用してスマホアプリで計測しています。心拍測定はGarminやSUUNTO使ったことあるのですが、HRV測定は他を知らないんですが、多分一番正確に計測出来て、なおかつEliteHRV や Kubiosといった計測アプリはH10センサーでないと計測自体出来ないです。Kubiosはそもそもめちゃくちゃデカくて高い心電図計測器みたいなのがありますが、簡易的に自分でいつでもどこでもずっと計測して数値を貯めておくにはアプリでも十分かと。※英語のアプリですが

僕はEliteHRVを使用しており、アプリ内では数日間計測していくと下記の様な数値が出てきます。いつ計測して、その時の数値がどれくらいか出ますので分かりやすいです。(もっと細かい数値はview resultに表記されます)

僕が指導する選手に試合前に毎日計測してもらいましたが、安静時心拍やHRVはそこまで変わらない様に見られますがスコアに大分差があります。

実際数値が低かった時は前日の練習がハードで回復出来ていない感覚を選手本人も感じていたようでその日の練習量を減らしていました。

HRVはパフォーマンスに影響する?

HRVは自律神経系機能とストレスを反映するため、最適なトレーニング期間を特定し、回復状態とオーバートレーニングの可能性を監視するために使用出来るので、上記のアプリ等で出てくる数値のモニタリングで下記のことに役立ちそうです。

  1. 回復状況を正確に反映する

  2. アスリートがオーバートレーニングしているかどうか

  3. アスリートがトレーニングに多かれ少なかれ適応する時期を特定(トレーニング処方や強度設定)

  4. 特定の日にアスリートのパフォーマンスが向上または低下する時期を予測する可能性

  5. アスリートがいつ病気や怪我をしやすくなるかを予測できる可能性

  6. ピーキング・テーパリングの判断基準のサポート

HRVは回復状態を判断するためにどのように使用されるのか?

HRVでストレス云々が分かるというのは自律神経系の機能に関することで、ここから少し複雑になりますが、できるだけ短く短く書きます。

まず、HRVは自律神経系 (ANS) の機能に関する重要な情報を提供してくれて、最も信頼できる測定値でもあります。HRVの数値が増えてくるとポジティブな適応/回復状態の改善を表し、HRVの減少はストレスと回復状態の悪化を反映します。

そうは言っても、高いほど良いとは限らず、低いほど悪いとは限らないことに注意することが重要です。人それぞれ変わってくるので一様には言えないですが、経験則としてアスリートのHRVが高いほど、より健康的で回復力が高く、逆もまた同様です。
自律神経系は、交感神経系(SNS)と副交感神経系(PSNS)の2つの枝で構成されています。これら 2つのブランチの違いを区別する最も簡単な方法は、「戦うか逃げるか」という応答をSNSに関連付け、「休息と消化」という応答をPSNSに関連付けることです。SNSは興奮してるので心拍数を増加させ、PSNSはリラックスしてるのでそれを遅くします  英語ですがこの図では右の緑が交感神経優位時の状態、左の紫が副交感神経優位時の症状です。

右の緑が交感神経優位時
左の紫が副交感性優位時

したがって、SNSは、ストレスの多い環境 (競争など) で身体を「興奮させる」責任があり、上記に見られる反応を刺激することによってその状態になります。エピネフリンやノルエピネフリン、これらのホルモンは体をストレスに備えて、さらに関連して、SNSは心拍数、収縮力、血圧も増加させ、筋肉への血流を増加させます。 アスリートやサポートするコーチ陣も競技前に「アドレナリンラッシュ」を感じたときはいつでも、これは本質的にSNSが刺激され、『競技の準備が出来てるぜ」ってことです。
反対に、PSNSはまったく逆のことを行い、ストレスがない場合に心拍数と血圧を下げる役割を果たします。本質的に、PSNSは、SNSの影響を打ち消すことによってストレスの多いイベント (競争など) の後の回復を促進するのに役立ちます。

SNS
は心拍数と筋肉への血流増加⤴
PSNSは心拍数と末梢血流減少⤵

つまり、これらは互いに打ち消しあいますが、どちらもパフォーマンスと回復に必要です。SNSはパフォーマンス中に経験するストレスに対して身体を刺激します。一方、PSNSは回復と再生に欠かせません。SNSとPSNSの不均衡は、運動パフォーマンスの低下やオーバートレーニングを引き起こす可能性があります。また、HRVは物理的なストレスだけでなく、精神的および化学的なストレスにも影響を受けます。例えば、仕事や複雑な意思決定、人前で話すこと、テストなどの精神的なストレスは、HRVを大幅に低下させます。
実際、ある研究では、高いストレスレベルのアスリートは、低いストレスレベルのアスリートよりも筋力の増加が小さいことが報告されています。さらに、アルコールなどの化学的なストレスは、HRVを低下させることが繰り返し示されています。
HRVは自律神経系機能のバランスを正確に測定し、身体に負担を与えずに測定できるため、医療、科学者やエリートチームのコーチは全身の疲労と回復を監視するためによく使用します。もちろん、アスリートの回復状態を監視する機能には、長所と短所があります。
長所は物理的なストレスのみを表示するウェアラブル技術(GPS、加速度センサー)とは違って、身体的、精神的、化学的なストレスを含む総合的なスケールでアスリートの回復状態を特定できることです。短所は、コーチがアスリートに最大のストレスを引き起こしているストレッサー(身体的、精神的、化学的)を正確に判断できないことです。その辺りはコミュニケーションが必要です。

HRVと回復状態

多くの調査研究で、激しいトレーニング セッション後のHRVの減少が強調されています。特に、高強度の筋力トレーニングセッション後、ワークアウト後24時間のHRVの減少が観察されました。ウェイトリフティングの場合はパフォーマンスが72時間の回復後にベースライン (ワークアウト前の値) に戻り、HRVと回復の関係を示しています。

アスリートが競技に向けて高負荷のトレーニングを受けると、HRVが大幅に低下する報告もあり、逆にトレーニング負荷が大幅に低下すると、HRVは上昇し、ベースラインに戻ります。
アスリートを長期間 (数か月) にわたってモニターした別の研究では、激しいトレーニング期間中に HRVが増加したが、過負荷のトレーニング段階では停滞し、低下することがわかりました。
しかし、2 週間の回復期間の後、HRVは回復し、HRVの増加につながりました。激しいトレーニング体性がHRVを改善する可能性があります。

HRVとパフォーマンス

パフォーマンスへの影響については、HRVガイド付きトレーニング(HRVトレ)と計画されたトレーニング(通常トレ)とでよく分析されます。HRVトレとは、単にアスリートのHRVスコアに基づいて各トレーニングセッションを処方することを指します。たとえば、アスリートの HRVが正常または通常よりも高い場合、激しいトレーニング セッションが処方されます。逆にアスリートのHRVが正常値を下回っている場合は、より簡単で強度の低いセッションが処方されます。通常トレは、すでに設計されててHRVの日々の変化に対応していないプログラムを指します。

少し前ですが、2007年にHRVトレと通常トレの効果を比較する研究がおこなわれ、HRVトレが、通常トレよりもランニングパフォーマンス (最大ランニング速度) を改善したことが報告されてます。
別の最近の調査では、一般男性のHRVトレが通常トレよりも効果的であることがわかりました。しかし興味深いことに、女性では同じ改善が見られませんでした。しかし、女性のHRV トレグループは、高強度のトレーニングセッションをより少なく実施したにもかかわらず、通常トレと同等のパフォーマンスの向上を経験しました。

さらに、別の研究でスキーとカヌー選手を対象にしたものでは、HRVスコアが高くVO2maxが改善されたアスリートとHRVスコアが低くV02maxパフォーマンスの低下を示した選手と相関性があるとのこと。
全体としてHRVトレと通常トレを比較して、有酸素パフォーマンスの向上に有益である可能性があることを示唆しています
また、HRVスコアが高いアスリートは、HRVスコアが低いアスリートよりもパフォーマンスの向上に敏感である可能性があることも示唆しています

HRVトレが通常トレよりも筋力向上に効果的であることを示す研究はなさそうなので、やはり、有酸素能力の向上のみをサポートしてそうです。

とはいえ、コンディション調整時に判断基準で僕は使っているので特にinシーズンや試合前のピーキング時の判断基準の1つとして活用しています。

結論

何が言いたいのかってちょっとでも息が上がる競技しているアスリートは心拍測定と共に動いていない時の計測も日常でした方がベターです。

POLAR社の製品について興味が御座いましたらコチラの問い合わせフォームからお問い合わせください。



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