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11月の関西旅行②「驚異と怪異」展とみんぱくと食いだお……れそこねた

11月の関西旅行ふりかえり2日目。(1日目はこちら

早起きしてホテルの朝食ブッフェを食べ、可及的速やかに大阪へ向かう。奈良から大阪まではほとんど2時間近くかかる。
今回の旅行の主目的が待っている!

特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」

「この世のキワにいる”かも”しれない不思議な生きもの」たちをテーマに、怪物像から人魚のミイラまで、古今東西の造形を集めた展覧会。
タイトルとともに、チラシのヴィジュアルを一目見れば、いわゆるヴンダーカンマー(「驚異の部屋」)を想起させようとしていることは明らかだが(そしてヴンダーカンマーとくれば問答無用で大好き!となってしまう私ではあるのだが(みんな大好きですよねヴンダーカンマー))、会場の構成は期待と予想をさらに上回ってくる。

外部から直接アプローチできる会場は、床も什器も全体が黒を基調としている。最初の挨拶と解説が書かれた導入部から一歩入り、すぐ目の前のどんづまりを曲がると、急に会場の全体が目に入ってくるような作りになっている。
会場は円形で、入り口から見て部屋の反対側に2階へのぼる階段があるのが分かる。全体が吹き抜けの中にあるような作りになっており、天井は高い。その天井に2頭の龍が舞っている。

1階、「想像界の生物相」は、「水」「天」「地」に分けられ、それぞれの相に住む異形たちが紹介されていく。たとえば「水」は人魚や魚の怪異、「天」は霊鳥や天馬といった具合である。オセアニアの色鮮やかな木彫像や、江戸に現れた怪異の記録が記された古書、時代や地域を問わず、あらゆる怪異が現れる。会場内には順路はあるが、ぐるぐると徘徊するようになっていて、われわれはまるで異界の森をさまようような気持になってくる。そういう生物相の全体をつらぬいて、天から龍がわれわれを見下ろしている。

人間は、おそらくあらゆる見知らぬもの、奇妙なできごと、まだ知らぬ外界への感情をもとにこのような造形を生み出してきた。それは、単なる想像力や、伝聞ででっちあげちゃったとか、観察力の不足からくる誤認識なんかではないはずだ。

そもそも、ヴンダーカンマーとは、大航海時代あたり、人間が知る世界が急速に広がったことに対して、そしてこれからもその周縁の世界がさらに広がっていくであろう予感について、新たなる世界の事物をかき集め、自分の手元にそのひとつの体系を作り出して、言ってみればこのどんどん分からなくなっていく世界をもう一度把握しようという、ある種の切実な求めによって生み出されたものであったのだろうと認識している。
この部屋をヴンダーカンマーに喩えはしたけれども、ここにいるもの達は、そういう点ではむしろ、世界をありのまま、未知のままに受け入れようとする心の方をより強く感じる。
今の私達から見れば、いるはずのないもの、「驚」や「怪」ではあっても、どこか、「脅」ではない。この豊かな世界のどこかに、大いなる天災の背後に、こういうパワーがあるのかもね、というような受容の心。
オセアニアには、「カブトガニの怪物」なんてのもいるんですよ! なんてステキな怪物たちだろう。

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(写真は一部撮影可能のブースのものです)

なお、今回のひとつの目玉(であろう)「人魚のミイラ」については、大変いじらしい。
江戸時代の人工怪物ミイラや標本は他にも何種類か展示されている。「河童のミイラ」とか「猫天狗の頭骨」とか。そしてその結構なものが、もうちょっとがんばりましょうな出来栄えである。猫の頭骨と、その頭頂から生えたツノの部分、思いっきり素材違うなぁ~!
さすがに「人魚のミイラ」はおそらく当時から見てもハイクオリティな一品であったらしく、博物画ふうの写しが何枚も描かれて、人々の評判となっていた様子がうかがえる。きっと、本体は見世物でも高かったり、どこかに大事に鎮座させられていて、それを見られない庶民や地方の人たちは写しを見てワクワク噂をしていたんだろうなぁ~。人工怪物ミイラ職人もいたんだろうな! 楽しかっただろうなぁ。

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2階は「想像界の変容」と題し、「聞く」「見る」「知る」「創る」に分けて、インスタレーションや現代の創作、また近現代の人々がいかにして異界のものを受け入れようとしてきたのかといった側面が示される。
現代の総合芸術であるところのゲームにおける異形の造形として、Final Fantasyの制作チームの様子が紹介されるのだが、めちゃくちゃ面白そうであった。召喚獣(っていまでも言うの? FF9までしかやっていないので分からない)リヴァイアサンのCGを作るのに、魚を解剖して色々な骨格を知るところから始めているのである! 敬意しか浮かばない。

午前中まるまる使って観覧してしまった。分厚い図録が刊行されていて、もちろん購入した。グッズは……いろんな人魚の図版がプリントされているバッグが気になったのだが、江戸時代の人魚って禿げのおっさんなんですよね。いや、おっさん人魚が悪いわけではなく、むしろ大変面白いのだが、すごい目立つな……と思って決断しきれなかった。ちょっと悔やんでいる。

https://www.amazon.co.jp/dp/product/4309227813/

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みんぱく内のレストランではこの時期、展覧会コラボメニューをやっていた。ドラゴンロール寿司。アボカドで龍の鱗を表現している。結構うまい!!
中はエビフライやウナギなんかも入っていて食べ応えもしっかりだった。

国立歴史民俗博物館(常設展示)

午後はみんぱく本館で過ごす。これについては書ききれない。し、半日では到底足りない。いつ来てもすごい。映像ブースだって本当は全部最初から最後まで観たいくらい(みんぱくの民俗音楽採集資料は本当に本当にすごいのである)。いつか三日くらい過ごしたいなぁ……

「驚異と怪異」展の流れもあり、やはり異形の顔は気になる。

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大阪へ来たとはいえ、街中で過ごす暇はなく、大阪らしさといえば万博記念公園駅でたこ焼きを食べたのみであった。友人に勧めてもらった、とろとろ系のたこ焼き。もう少し粉もん食べたかったな……

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夜は奈良で知人と会食の予定があったため、慌ててとんぼ返りして中華薬膳のお店へ。初めての食文化! たしかに体が温まる……!

博物館をじっくり見ると歩き通しになるし、移動も長く、ちょっとお疲れ気味になってしまった。翌日の予定を整理する間もなく、ホテルに戻るなり就寝。3日目の最終日は奈良っぽく寺社でしめるつもりなのだが……どこへ行こうというのか……行き当たりばったりの最終日になってしまった。

特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」

歴史民俗博物館
2019年8月29日(木)~ 11月26日(火)
午前10時~午後5時 水曜休

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