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11月の関西旅行①正倉院展と食いだおれ

11月の頭に関西へ行ってきた。目当ては国立民族学博物館 特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」である。

観たい展覧会があるのでそこへ行く。というおこないは、私は結構やるんだけれども、人に言うと驚かれることもある。思うに、たいてい四六時中旅に出たいとは思っているし、たいていの行ったことがない土地には行ってみたいと思っているので、たいていいつでも旅の理由を探している。そういう人間は理由があればそれに飛びつく。展覧会でも推しのライブでも、行く理由があるならば行き、しめしめと土地の美味しいものを食べて、さらには寺社巡りでもしてしまう。こういう手合いの欠点と言えば「のんびりする旅」とか「なにもしない贅沢」みたいなものへの共感性が低いことである。いや、もちろん、もしかしたら私の場合だけかもしれないけれど……

ともかく関西である。

大阪の展覧会が観たいのだから大阪へ泊ればよかったのだが、あれこれ調整しているうちに宿は奈良になってしまった。が、結果的にはよかった。ちょうど正倉院展をやっていたからである。奈良へは学生のころから何度か訪れてはいたのだが、いつもタイミングが悪く、これまで本場の正倉院展を観られたことがなかった。渡りに船。

奈良へは新幹線で京都まで行き、そこから乗り換える。

私の旅にしては珍しく、10時半などという遅い時間に品川駅を発った。たいてい車内で天むすを食べて朝ごはんにし、現地についたら休まず動き回るのを常としていたのだけれど、今回は京都駅へ着いた時点で昼である。せっかくなので京都らしいものを食べることにする。

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京都駅の駅ビルの中にある京ばんざいのお店。メインを一品注文すると、サイドとしておばんざいが食べ放題になるシステム。ビュッフェ形式ながらにしっかり作られたおばんざいである。煮物系が美味しかった。

そこからはみやこ路快速で奈良へ向かうことになった。奈良へは近鉄線も走っているけれど、JRの快速はボックス席で旅気分度が高い。
しかしおばんざいにうつつを抜かし、乗るつもりだった便を逃してしまった。次の電車は30分後。時間を潰そうと、ちょっと戻って乗り換えフロアのスタンドでドリンクを買う。

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京ばんざいからのチーズミルクティー。背徳感すら覚えるスピンカーブである。時間を潰すと言っておきながら、甘くてほとんど飲めないでいるうちに電車は来た。
快速で一路奈良へ。時刻は既に夕方だったが、この日は奈良国立博物館は夜間も開館していた。JRの駅からバスで10分ほど、でも大通りは混んでいることも多いので、歩いて15分の方が早いかも。

正倉院展

正倉院宝物を観たのは、もしかしたら久しぶりだったのかもしれない。どうだっただろうか。というのも、「こんなにすごいとは思わなかった」という、まるで初見みたいな感動を覚えたからだ。
すさまじいクラフトマンシップである。

どちらがどう、というのではないけれども、これと比べて思い返せば室町や江戸のたとえば屏風絵のたぐいは、はっきりと室内装飾であると分かる。なんというか、隙がある。それは言い換えれば色気とか、けれんみとか、アーティズムであろう。正倉院宝物の、たとえば椅子であるとか献物台であるとかに、そういうものは全然ない。端正な完璧さがある。一点目の前に置かれても、もしかすると見誤ってしまうかもしれないけれど、こういうものにもしも囲まれたなら、ほとんど息もつけないんじゃないだろうか。これが、いにしえの帝の宝物というものなのか。

そして、沓や銅鏡といった宝物のいわば本体ももちろん言うに及ばないのだけれども、なんといっても箱。箱が良い。ただその宝物を入れるためだけの、専用の箱。先のくるりと反り返った独特の形の沓を納め、それが中で動いたり壊れたりしないように、その沓の足先の形にくぼみを作ってある箱。けなげ……。
銅鏡の箱も、六稜鏡と呼ばれるタイプの鏡の花弁のような輪郭に、ぴったりはまる形をしているのだが、曲線のみで構成されたあの形を、木の薄い板を曲げるとかではなくて、ひとつひとつの曲面に木を、こう、削り出して組み合わせて作っているようである。仕事が細かい。木目の見目も良い。いいなぁ……。
本体も良い、箱も良い、そしてそれが寄り添ってこんにちまで遺っていて観察させてくれることのありがたみ。大変なことである。

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観終わってでてきたらすっかり日は暮れ、庭園がライトアップされていた。

感動冷めやらぬまま近鉄奈良駅のあたりまで歩いて、そのあたりで食事にすることにする。あまり探し回る気もないのだが、奈良らしいものは食べたい。というわけで、何軒かで「釜めし」という旗を見かけ、おそらくこれは名物のたぐいなのだろうと判断してそのうちの一軒に入ることにする。ちなみにこの文章を書いているいまも特に調べ返してはいない。釜めし、ほんとに奈良の名物でした?

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牛しぐれ釜めし。あまり具材は多くはないが、しっかり味のついた牛しぐれに、香りのよいお米で箸が進む。

宿はJR奈良駅のそばに取ったので、そのままてろてろ歩いて帰った。奈良は数年ぶりだが、東西方向の道沿いが随分おしゃれに、そして国際的になっている気がする。

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思わず、愛らしいものを買い食いしてしまった。鹿のふんふんソフト。関西らしさということで抹茶味を選んだのだが、ちょこんと乗った鹿クッキーと相まって、山っぽさがあり絵的にも良い。ふんだらけだけど。出オチなので深くは言及しませんが、麦チョコ、結構リアルな見た目。

駅を見下ろすホテルにチェックイン。
2日目は奈良からはるばる大阪まで行く。早めの就寝。

御即位記念 第71回 正倉院展

奈良国立博物館
2019年10月26日(土)~11月14日(木)
午前9時~午後6時(金・土・日・祝は午後8時まで)会期中無休

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