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映画『せかいのおきく』 泥中の蓮。輪廻の物語(ネタバレ感想文 )
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終盤のワンカットで蓮の花の蕾が写されます。
「泥中の蓮」という言葉があります。
「蓮は泥より出でて泥に染まらず」とも言いますね。
汚れた中でも美しさを保っていることの例えですが、これはそういう映画です。
しかも蕾なんです。まだ咲いていない、これからの存在。
これは、若者への応援歌でもあります。
厳しい状況に耐えて花を咲かせる話だった前作『冬薔薇』(2022年)と同じテーマと言えるでしょう。
『半世界』(2019年)辺りから、阪本順治が見つめる世界は状況が厳しくなり、その厳しい世界で生きる人々へ向ける視線が優しくなってきている気がします。
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劇中、真木蔵人演じる坊主が「世界とは、アッチに行ってコッチから来る」という説法をして、皆がキョトンとするシーンがあります。
しかしこれは、輪廻を説いているのです。
食べたものが糞尿になって、畑の肥やしになって、また食物になる輪廻。
常連俳優の息子が主演を務める輪廻。時代は回るのです。
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市井の人々は相変わらずの日々を送っていますが、知らぬ間に世の中は大きく変わろうとしています。
時代設定は幕末ですが、これは「今」の物語なのです。
阪本順治があぶり出すのは、現代社会にも通じる「若者の貧困」です。
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そしてラストワンショットは、世界が循環することで、いずれこの若者たちが「泥中の蓮」として花開く予感を感じさせるます。
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以前書いたかどうか忘れましたが、私は阪本順治監督作をほとんど観ています。30数本の監督作があるのかな?観てないのは5本だけ。
それだけ私は阪本順治が好きだし、阪本順治の評価が甘い。
そんな私が、いや、そんなわたしだからハッキリキッパリ正直に言います。
いい話なんだがツマラン。
なんだか『座頭市 THE LAST』(2010年)以来の時代劇に興奮したのか、ガチリアルに江戸時代を描こうとしすぎてる気がするんですよね。
話なんかどうでもよくて江戸の風俗を描きたいだけの杉浦日向子の漫画を読んでる気分でした。
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(2023.05.04 テアトル新宿にて鑑賞 ★★★☆☆)
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