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『ピートラVol.17』事業継承というできごと② ~人を変えるのは無理でした~


機ちょーまさとです。Vol.15で「事業継承というできごと①」を書いたら、何人かの方から共感のフィードバックをいただきました。経営者の世代交代には、結構似たような問題を抱えることになるのかなと思いました。せっかくだからと続きを書ことにしました。

①では、新しい方針や施策を発表したら、社員から不安と不満が噴出してしまったところまで書きました。今回はこの詳細についてです。

まずは人の行動を変えよう!と思った。

会社を受け継いで、経営陣を一新。さあやるぞ……とふたを開けてみたら課題は山積していてどこから手を付けたものかわからない状態でした。まずはその優先順序を考えなきゃいけない。

ただ、根本的には新商品を次々出していける体制づくりをすることが必要なのはわかっていました。リニューアル品、シリーズ拡充品はたくさん出しているけど、「新商品」はあんまり出せていない……。つまり、新商品に次々と数を挑戦することがまずは重要。そのために、一人ひとりの「生産性」を上げること、がまずはキーワードになった。
そこで、まずは人の行動変わることが大事。人が変われば多くの問題が一気に片付いていくんじゃないか!と仮説を立てました。すぐに変える(例えば希望退職を募るって人材を入れ替えるなど)には大きな痛みを伴うのでしたくないけど、3年くらいかければ何とかなるんじゃないかと。

が。「人から変える」は大間違いだったと今は思います。

そのために行った具体的な施策は……。

まずは新しくミッション・ヴィジョン・ヴァリューを立てたうえでで3つ、自由化をしてみました。
(1)やりたい部署を希望して良い。100%その通りにできないこともあるけど、なるべく希望に沿う形にすることを約束。兼務アリ。
(2)キャリアアップに、会社のお金を使うこと。社員が受けたい教育に、会社から資金的な支援をすること
(3)なるべく仕事を手放すこと。ITでなんとかなるところは設備を導入して欲しいし、アウトソーシングできる仕事は積極的に外に出して欲しいこと。自分の集中するべき仕事に注力するために、会社のお金をかけて良い。

これまでかなりトップダウンのやり方で押さえつけられてた(とぼくはプレイヤーとして感じていた)のがなくなったし、社員教育にお金をかけて良いなんて初めてのことだし、社内システムに大きな投資をするのも便利になっていいよね!ってわくわくしていました。
だって、社員のほとんどは「あたらしいものを作りたい」と言って入ってきた人達なので、今それに集中できない理由から解放してあげたら、きっとどんどん前に進む、と思っていたんです。

あ、あれ……?

自由化したけど、制度を利用する人が少数しかいない。この仕事を手放しましょう!って決めたはずなのに、まだやってる。そもそも「やりたい部署は今の部署です!」って言い切る人がほとんど。結果、新商品プロジェクトが、期待している数ほど立ち上がらなかった。

ある報告会のために、あるベテランさんが毎週2時間かけて資料準備をしていることが分かったのでお伝えしてみた。「前任の代表の方はそれを求められたと思うけど、ぼくはそのデータ、正直何に使うかわからないし、誰かほか使う方がいないならその仕事をやめていいですよ。」

自分のキャリアアップのために毎週2時間を使えるならその方がずっと幸せだよね!と100%の善意をもってお伝えしたつもりだったんですが、強く反対されてしまった。「ポイントを絞って最低限の資料作りに留めるから、この仕事を続けたい」。後日「仕事を捨てて良いと言われたことがショックだった。」と言われてしまった。そんなつもりは……。

ん……?おかしいぞ。

当初の「あたらしいものをつくりたい」というモチベーションが、「先輩から受け継いだ仕事、今の商品を守り抜きたい」に置き換わってる。
その後、今の私たちの現状を踏まえて、何度かの社内研修やワークショップ、One on One ミーティングを開催したりもしましたが、行動を変えてくれた人は片手で足りるほどでした。

目標を立てた。制度を作った。レクチャーもした。それでも大部分の人はまだ走りださなかった。Peopleの社員が特別なのではなく、人類なんてそんなもんととらえるべきだと思いますし、私たち経営側に次の手が必要と理解しました。

捨てること。それと選択肢を用意すること。

ここでようやく、当初の仮説が間違いだったことを認識しました。他人は変えられない、変えられるのは自分だけ。そんな当たり前のことを、身をもって再認識しました。ここまでで3年かかりました。

改めて、私たち経営がやるべきことを考えました。
なぜ新商品が出てこないのか → 毎日忙しいから。
なぜ忙しいのか → 成果につながらない仕事をしているから。

ということで、まずは「捨てること」と「やらなくて良いこと」を決めること、が重要だと気付きました。日々のタスクといった細かいことから、事業といった大きなものまで、一発で「これはやらなくて良い」と現場でも判断できる方法は、と考えて出てきたのがパーパスでした。

「このビジネスを会社としてやめます」という大きな判断をするのには度胸が要ります。一時的に業績が下がっちゃいますから。それに加えて、当然ですが実際作業をする現場から結構な反対の声が上がりました。が、これに関しては絶対ゆずらない。これは経営者になって3年目のできごとですが、初めて「業務命令」らしい指示になりました。
やめることそのものには当然お金も時間もかかりますが、その後に出てくる社員の時間というリソースがどうしても欲しかった。

そして、新しい商品を全社で出し合う「P-1グランプリ」という仕組みを設けました。社員としては、仕事の手が空いた分、新しい仕事を見つけないと、仕事がなくなってしまう。この施策に参加するかどうかは、各人考えて意思表明してもらうことにしました。厳しいようですが、こういう状況にすれば、結果的に自ら走りだしてくれる人も増えてくれると信じて。

一方、そういう変化がどうしても合わなくて、会社を去ってしまう人も、やむを得ず現れることは当然。覚悟して進むしかないと思っています。今居るところに居続けることは、居心地は良いけど、近い将来沈んでしまう場所だから。

この取り組みは現在進行中です。うまくいくかどうかは、今後またお話しできればと思います。

今回のピートラは以上です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
似た状況で頑張る経営者の方に届いて、何か参考になったり勇気づけられれば幸いです。またピープル社員にも、気持ちによき変化があればうれしいなと思います。

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