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パーパスのこと:利益を目的にすると利益が下がる『ピートラVol.38』

機ちょーまさとです。
先日、東京おもちゃショーというイベントに出展してきましたところ、業界の諸先輩方にパーパスに関わる嬉しいコメントをいただきました。今回Vol.38では経営に関わる視点から、久しぶりにパーパスについて書いてみようと思います。

ロングセラーを終了させることを発表したら……

さて。
先日東京おもちゃショーでは玩具業界の方々から「Peopleさん、ロングセラーの1カテゴリー終了って聞いたけどどうしたの?大丈夫?」と、ご心配の声をかけていただきました(Peopleは今年、新事業開発プロジェクトに注力するためロングセラー商品をいくつか終了することを開示しており、まずは幼児用自転車終了を発表しています)。

質問をいただくたびに、商品終了の経緯と目的を丁寧にお話してきました。個人的にも、とても思い入れのある商品だし、今でもたくさんの子ども達が喜んでくれているものですから、終了の決断に至るまで経営チームで数年かけて議論してきました。
市場規模自体が縮小していて、他社製品とどうしてもシェア争いになってしまう。劣勢になると売り場に並ばなくなり、商品を続けられなくなるため、どうしてもシェア争いには力を使わざるを得えない(ぼくは、ある程度仕方ないとしても「シェア争い」自体お互いに時間と体力の無駄遣いだと思っています)。結果的として子どもやその好奇心と向き合う時間が取れなくなってしまい、ひいては子どもたちに良いおもちゃをつくってお届けできなくなってしまう。それなら、その力を子どもたちの本音を見つけること、新しいものを作ることに使った方が、子ども達にも、私たちにも、取引先の皆さんにも良いことなのではないかと思ったわけです。
今まで商品を愛してくださった皆さんには感謝をお伝えし、自分たちの手で終了していくことにしました。

「業績が下がる」のはヤバいこと?

多くの方が「覚悟を持った決断だね、うちにはなかなかできないよ」と好意的に受け止めてくださいましたが、私たちにとっては、どうしてもやらないといけないことだから、体力のあるうちに早くやろうという思いだったんです。

例えば、今の家に数年内に住めなくなってしまうのがわかったなら。ギリギリまで住み続けて引越し間際でドタバタするより、時間的、体力的に余力のあるうちに安心なところに引っ越し(その引越し先がパーパスです)た方がずっと良い結果になるだろうし、その引越し費用その他の費用、場合によっては転職もするコストは、住むところがなくなって途方に暮れるよりずっとマシに思えました。
おっかないし覚悟は要るけどやるしかない、という感じです。

……なので、なんで「うちにはできない」なんだろうと違和感を覚えたんです。そこで、もしかしたら業績が目的になっているのでは、と思いました。

これまで、株式会社の目的は利益を稼いで株主に還元すること、という考え方が日本ではスタンダードで、それがうまく機能していたんだと思います。ところがテクノロジーの発達とともに、世の中の価値観が変わるスピードがどんどん加速して、今まで売れていたものがある時を境に全然売れなくなったりする時代になり、企業は柔軟に事業領域を変えられることの重要性が高まりました。そうなると一時的に業績が下がることは悪いことどころか、良くあることになりました。

そんな時代に経営者をやる場合、「業績を上げ続ける」が目的だったら……ぼくではちょっと達成できない、身が持たない。結果、業績が下がらないようしたいという心理が強く働き、守りの経営判断(リスクをとらない~最小限にしようとする)が増える。Peopleは十数年、ロングセラー商品をぜんぶ維持することを最優先にして、リニューアル品やシリーズ拡充品を全力で作ってきました。が、忙しくなるばかりでじりじりと業績が下がっていきました。その経験から確信しました。

業績を目的にすると業績は下がる

ということで、何を企業の目的にするのかを言葉にしたのが文字通り「パーパス」だけど、どんなに良いパーパスでもいずれお金が無いと続けられなくなる。
私たち企業にとって利益とは、良い事業を続けるための手段と考えることができます。

また「パーパス」はそれによって稼ぐことができるキモになるポイントが含まれている必要があります。パーパスを作る過程を振り返ってみると、Peopleでは稼ぐキモとは、私たちが夢中でやりたくなること=私たちにしかできないこと と捉え、子どもの好奇心というワードを自分たちの中から掘り起こしたんだろうと思いました。

パーパスを信じる

私たちにとっては子どもの好奇心という、時代や場所で変わらない、本質的で普遍的な人間の欲求を信じることになります。子どもの好奇心を探ることは、本当に楽しく夢中で仕事ができます。あとは頭をひねってマネダイズする苦しみを乗り越えれば、私たちにしかできない新しい市場をつくることはきっとできるはず。利益と好奇心は両輪

こんなお話を東京おもちゃショーのPeopleブースを前に、業界の方々とお話をしていました。実は社内で「赤ちゃん研究所」と題して、赤ちゃんとその親御さんに来てもらって、一緒に赤ちゃんの行動を楽しく観察するワークショップをしています。

今年のPeopleブースは、このプロジェクトのプレゼンの場として大きなスペースを割いたことで、これまでのような「商品を買ってもらうためのブース」とは違うメッセージを受け取ってもらえたようで、「これからのピープルさんを表すような、面白いブースだったね」とうれしいお言葉をいただきました。新事業のスタートは2025年予定で少し先のことですが、今Peopleではどんな取り組みをしているか、今後も機会を見つけてお伝えしていきたいと思います。

今回は以上です。最後まで読んでくださりありがとうございました。

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