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【書籍要約】ビジネスエリートが知っている教養としての日本酒

あらすじ

「ビジネスで成果を出したい」「相手とうまく交渉を進めたい」――そんなときには、人間同士のコミュニケーションが欠かせない。接待で使えるようにゴルフの練習をしておこう、経営者と話を合わせるために美術館に通おう、とビジネス相手の興味関心に合わせて努力してきた方も多いだろう。

そのようなビジネスコミュニケーションツールの1つとして今注目されているのが「日本酒」だ。一流と呼ばれる世界のビジネスエリートがこぞって楽しんでいる。国際ワインコンテストでは日本酒部門が設立され、会食でも和食と日本酒が好まれている。

しかし、「日本」という国名が入っているにも関わらず、私たち日本人は日本酒についてあまり知らないのではないだろうか。著者がソムリエとして仕事をしていた頃、フランス人から日本酒や日本文化について尋ねられても思うように答えられないという、苦々しい体験をしたという。「他人の国の文化(ワイン)を語れても、自国の文化(日本酒)を語れない」状態だったのだ。

今後ますますグローバル化するビジネスシーンで活躍するときに、世界のトレンドとなっている日本酒について語れることは、より広く深い教養があることの証となる。そこから会話が膨らみ、ビジネスチャンスをつかめば、さらにネットワークを広げられるだろう。もしあなたが日本酒を好きでなかったり飲めなかったりしても、教養として日本酒を知っておくことは、きっとあなたの武器になるに違いない。

本書の要点

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海外からの注目

今、海外で日本酒需要が高まっている。清酒輸出総額が10年連続過去最高金額を更新し、海外のレストランでは、人気の日本酒ボトルを見かけることが増えてきた。

このような海外での日本酒人気のきっかけは、2013年「和食-日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことだ。それまでの海外における日本酒といえば、海外駐在員の日本人が恋しくて飲むという消費がメインだったが、世界遺産の和食とともに日本酒を味わいたいと人気が一気に高まった。

また、インバウンドの急増も日本酒の消費拡大を後押ししている。日本で和食や日本酒を堪能した人たちは、お土産として日本酒を購入し自国でも楽しむようになった。

さらに、海外での日本酒人気が日本に逆輸入されている。特に海外の文化人と交流が多い日本人は、かれらの日本酒への興味や姿勢に少なからず影響を受け、「日本文化としての日本酒を知ろう」という意識が高まってきた。実際、日本酒を学びたいという若者のためにセミナーを開催するところも出てきている。YouTubeやリモートでのウェビナーなどを活用し、気軽に日本酒について学べる環境も整っている。

日本酒はいまや、必須の教養となっているのだ。


日本酒の定義

では、具体的に日本酒について学んでいこう。

日本のお酒は、「酒税法」によって発泡酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類に分けられている。その中で日本酒は、醸造酒類の「清酒」にあたる。

「ボルドー」「シャンパーニュ」など特定の地域をお酒の名称にする地理的表示は、種類や農産物などの品質やブランドを守ってきた。一方、日本酒には長らく地理的表示はなかったが、2005年の「白山」(石川県白山市)で初めて認められ、「山形」「灘五郷」などが続いた。これによって、原料のお米は国産のみ、国内製造の清酒のみが地理的表示「日本酒」を独占的に名乗ることができるようになった。外国産のお米を使用した清酒や日本以外で製造された清酒が流通しても「日本酒」としては表示できないため、消費者が区別しやすくなり、高品質な「日本酒ブランド」のPR、価値向上にもつながっている。

あまりにも高い米

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日本酒の原料は酒税法で定められており、日本酒のラベルを見ると確認することができる。基本的な原料はお米、水、米麹。その他「酵母」「乳酸菌」などの微生物、「醸造アルコール」も日本酒選びには欠かせない要素だ。

米は、日常的にごはんとして食べる「米」とは区別され、「酒造用米」と呼ばれる。酒造用米は日本で栽培される米の5%程度。さらにいくつかの条件をクリアした「酒造好適米」は酒造用米のうちわずか1%しかない。

酒造好適米の栽培には、病気や害虫対策として日当たりや風通しを考慮する必要がある。また、苗の間隔を通常の2倍ほど取るため、面積あたりの収穫量が限られる。非常に手間とコストがかかるため、最高級のものでは1キロ当たり500~600円、食用の米の2倍ほどの価格になる。これほど高い原料を使って造るお酒は他にない。それにも関わらず、他の高級酒に比べると日本酒はかなり安価な設定となっている。近年、これでは日本酒は発展しないと感じ、ブランド価値をもつ高級日本酒に力を入れ始めたメーカーも出てきている。

味やアルコールをつくるもの

日本酒の味を決める原料は「水」だ。お酒は80%が水分からできており、日本酒の名産地はたいてい水に恵まれている。カルシウム・マグネシウム含有量で決まる「硬度」により水や酒の味は変わる。「灘の宮水」など硬度の高い水からは骨格のしっかりとした味わいの日本酒、京都の伏見や広島の西条などの軟水ではやさしい味わいの日本酒ができあがる。

日本酒の仕上がりを支える「麹」はカビの一種。味噌、醤油の製造にも使われる、アジアの食文化に欠かせない有用な微生物だ。麹はお米のでんぷんを糖分に変える役割を担っており、蒸米に繁殖させる麹のつき方でできあがるお酒の個性が変わる。

日本酒は、米のでんぷんを麹の働きで糖分に変えることと、その糖分を酵母の働きでアルコールに変えることを同時に行う「並行複発酵」で生み出される。なおワインは「単発酵」、ビールは「複発酵」で造られるが、日本酒はこれらを並行して行うため、醸造酒でありながら比較的高いアルコール度数のものを生み出すことができる。


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