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汗拭きシートの季節

2024.05.22
ぺぎんの日記#52
「汗拭きシートの季節」


気温の上昇に比例して、教室には制汗剤の匂いが立ち込めるようになる。
今年も汗ふきシートの季節がやってきた。

一口に制汗剤と言っても、ヒンヤリ感を追求したものや、香りがよいもの、汗をガッツリ抑制してくれるものなど、様々な種類がある。
パッケージも、大きく分けてシートタイプとスプレータイプがある。

今回はあえて「汗ふきシートの季節」と限定してみた。
なんかスプレーよりもシートの方が、面白い文化が生まれてる気がして。

あるある1つ目。
いい匂いのヤツは皆に持っていかれる。
まずは「なんかお前今日いい匂いするわ」から始まり、徐々に「ホントだ」「何付けたん?笑」「あーこのシートの匂いか」「一枚使っていい?」「俺も汗拭きたーい」と、どんどん減っていく。
でもなんか最後の方、ボリューミーだったパッケージが薄く、軽くなってくると段々申し訳無さが出てきて、微妙な量を残してシート略奪が終わりを迎える。

あるある2つ目。
教室の匂い2大巨頭は喧嘩する。
あるある1つ目で述べたように、その日に流行ったシートの匂いで、教室の空気が構成されていく。もちろん自分のを使ってる人や何も使ってない人もいるのだけれど、何となく、「女子で人気の匂い」と「男子で人気の匂い」の2つが教室の中で存在感を示す。どっちがどんな傾向を持ちがちかと言われると説明し難いのだが、やはり女子の匂いと男子の匂いには明確な違いが合って、それらは常に喧嘩し合っている気がする。
単体で嗅ぐと、2つとも良い香りなのだけど、連続して交互に鼻に入ってくると、ウッとなる刺激的な感覚を覚えることがある。ホントに匂いが強いときは授業中に頭がフワフワしてしまうこともある。ほんとに稀だけどね。

あるある3つ目。
荒れると分かってて顔面に塗りたくる奴がいる。
あるあるなのかは分からないんですけど、私の場合は中学にも高校にもいるんですよ。顔面に制汗料を塗るやつが。
塗ったら最後、赤く荒れて、あちゃーって感じの見た目になるのだが、なぜか彼らは顔に塗りたがる。荒れるということは裏を返せば、それだけ強い刺激を得られるということなのか。ある意味顔は、塗って一番涼しい箇所なのかも知れない。

本来は身体の恒常性を確保するための汗。
その生理機能を否定する汗ふきシート。

汗ふきシートによって生まれる不利益。
汗ふきシートによって生まれる匂いのぶつかり合い。
汗ふきシートによって起こされる皮膚異常。

もとより生理機能と不調和音を奏でる汗ふきシート。
だからかも知れない。汗ふきシートが生む不協和には、どこか風流がある気がする。

汗ふきシートのおかげで、今年もまたこの季節が来たなと、少し安心させられる。


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