女らしいことは下品で罪深いことだと思っていた

 私は高校卒業後、国立大学の理系学部に進学した。「文転は簡単だけど理転はできないから、理系に進みなさい」と言ってやんわりリケジョになるよう誘導したのは、他でもない我が母である。
 さて、皆さんご存知と思うが、一般的に、理系学部は大体男性の方が圧倒的に人数が多いものだ。私の進学した学部も例に漏れず、男女比は8:2くらいだったと思う。母は、そんな新入生の男女比率資料を見て一言。
「しばらくは、メイクもあんまりしないで、長ズボンを履いて行きなさい」

いやいや、一体大学を何する場所だと思ってるんだwww

…と今なら思うが、当時の私は母に逆らう気力も体力も根こそぎ奪われた従順な子猫であったので、母の言いつけどおり、刈り上げに近いベリーショートですっぴん、骨格ウェーブ殺しのダボっとしたボーイフレンドデニムを穿いて登校していた。

 しかし、同じ学部にもふわふわした可愛い格好の女の子がたくさんいた。中でもMちゃんはスラッとした美脚の持ち主で、ミニスカにフェミニンなパンプスを合わせたコーデが得意だった。まさに美人百花から飛びたしてきたような美人さん。今から思えば、勉強も忙しい学科にも関わらず、毎日きちんと自分らしいおしゃれをして、すごく努力家なんだろう。素敵な子だった。
 けれど、当時の私は。
 その子のことが内心すごく嫌いだったし、許せなかった。
「男がたくさんいるところにわざわざあんな格好してきて、下品な子」
と思って、冷たーいいやな目で、彼女の生足を見ていたのだ。
 だって、当時の私の中には、男がたくさんいる場所では、性欲を刺激しない装いをすべき。つまり、女らしいこと=メイクやフェミニンなヘアスタイル、ファッションは禁止。という絶対的なルールが、(母によって)植え付けられていたのだ。それを平気で破る彼女は浅薄に見えた。さらに、彼女のことを可愛いと持て囃す男性陣に対しても不信感が募るばかりだった。
「男ってああいうのにコロッと騙されて。中身はどうでもいいの?バカばっかり!」
はい、暗黒の拗らせまっしぐらである。アーメン。

 毒母は、世間体が気になる故に、娘の異性交遊を極度に恐れている。目立って悪い噂になるのもいやなので、あまりに女性らしい目立った装いもしてほしくない。
 そのくせ適齢期になったら「いい人はいないの?」
 …つまり毒親の要望を要約すると、地味でパッとしない学生時代を送って貞操を守り通し、25、6になったら突然3K揃った安心安全の旦那さんと結婚しておせっせ三昧、可愛い孫の顔を見せてほしい、ってわけ。
 これは、現実には土台無理な話である。すっぴんユニクロで大優勝・橋本環奈並の超絶美少女ならいざ知らず、貞操のプライドだけが頼りで化粧も下手、ファッションも垢抜けない地味子と、男女関係の酸いも甘いも一通り噛み分け、自分を素敵に見せる方法をマスターした女子と、どちらが恋愛市場において優秀なハンターかは一目瞭然である。なぜそれまで男っ気の全くなかった娘が、適齢期になった途端素敵かれぴ♡をゲットできると思った?

 同じく毒母育ちの我が友人は、いまだに「男との外泊は禁止」だそうで、彼氏の存在を家族に隠し続けている。もうアラサーなのに。
 そんな状態で、赤の他人と!!!結婚にまで至る人間関係が築けるわけがないだろうが!!!!!!!!!!!!!(憤怒)

まあ私も同じ穴の狢で、高校生の時、「結婚するまでは処女でいてね」と母に言われたクチである(ぶっちゃけその時すでに処女じゃなかったので、母の願いは風の前の塵に同じだったが)。家出して一時的に縁切りして彼氏の家に転がり込んでいなければ、今も絶対結婚してないどころか、男性不信を拗らせて、ノーメイクでダボダボファッションのまま、一生独身宣言をしていたであろう自信がある。おぉ怖。

 さて、話をまとめると。
赤の他人を見て無性にいやな気持ちになったら、それは自分の中の無意識の抑圧のサインだと思う。私は本当は、Mちゃんみたいにフェミニンで華やかなファッションが好きで、自分も楽しみたかったのだ。男はケダモノ!なんて思わずに、楽しくみんなで過ごしたかった。今からでも全然遅くない!そういう自分の欲を、これからたっぷり満たしてあげるつもりである!!

 最後に。
 お母さんの目が気になって女性らしくなりきれないそこのあなた!!このまま我慢してると私のように、僻み妬みオンパレードの性格ドブスになる可能性が大なので、今すぐ我慢はやめて!!私の屍を超えて逃げて、自分の尊厳を確保してください…!!!恋愛もおしゃれも悪いことじゃないどころか、人生を彩る素晴らしいものだから。自分に素直に、どんどん楽しんでほしいです。♡

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