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「あ、骨が折れてるかも」と思ったら ②

昨日に引き続き骨折のお話をします。いわゆる「応急処置」の話は、あちこちに書かれていますので、その合間を縫った話を、と思っています。

出血はしていないか?

骨折だけでなく、いわゆる怪我(挫創)から出血していないかを確認します。ドクドクと勢いよく血が出ているときや、急速に骨折部付近が腫脹してくる(腫れてくる)場合は、動脈の損傷を疑います。

外にあふれてくる血液を見ると相当焦ると思いますが、思い切って、タオルやハンカチなどで、グーッと圧迫することが大事です。

また、骨は造血器官(血液を作っている器官)でもあるため、骨そのものからも相当量出血します。成人のデータですが、

成人の循環血漿量(要するに血液量) 5000 mlに対し
  上腕骨骨折 300 - 500 mL
     大腿骨骨折 1,000-2,000 mL
     下腿骨骨折 500 - 1,000 mL
    ※ 30 cm 四方に広がった血液 = 100 mL

ということになっています。出血量そのものはあくまで目安ですが、特に大腿骨骨折は相当量の出血を伴います。

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出血をすると、前負荷↓ から心拍出量が急激に落ち、出血性ショックになりますが、代償はまず脈拍数を増やし対応するのでした。ところが、このように怪我をした状況では、痛いし状況にパニックになるしでそもそも頻脈になりやすい状況にありますので、末梢冷感、意識などよくよく注意してみる必要があります。

コンパートメント症候群

四肢の筋肉、骨の周りは骨間膜、筋膜など強固な膜で区分けされています。骨折をするとその区画内の圧が出血、腫脹などで急速に上昇し、筋肉および神経への血流が途絶え虚血に陥ります。そうするとさらに筋肉などが腫脹し区画内の圧が上昇するという悪循環に入ります。

現場でこの症候群そのものを診断することは困難ですが、骨折した部位より先で

  脈拍が触れるか?
  冷感はないか?
  動かせるか?
  触った感じは解るか?
  色は蒼白・チアノーゼなどはないか?

などを確認しておきます。

また骨折に伴い、神経や、血管そのものに損傷を起こすことが有り、そのような場合も、上記の症状が出現することがあります。

当然ですが、このような症状を伴う骨折については、急いで救急車を呼んでくださいね。

小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン