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頭をぶつけたら?

頭をぶつけると何がいけないのでしょうか?

なにを当たり前のことを、、、といわれそうですが、実はいろんな話題があります。

保護者・保育園の先生からすると、「いつ病院に行ったらいいの?」
研修医の先生からすると、「CT って取った方がいいですか?」
そんなとき保護者の方にすると「被爆って大丈夫ですか?」
本気で出血していれば、「手術は必要ですか?」
術後の管理としては「中枢神経管理ってどうすればいいの?」

と枚挙にいとまがありません。何からお話ししようかと思いましたが、そもそも出血すると何がいけないのか?つまり頭の活動の何が障害されてしまうのか?という話から始めようと思います。

一次性脳損傷と二次性脳損傷

頭をぶつけること(外傷)で、脳細胞が直接壊れることを ”一次性脳損傷” といいます。現時点では、壊れた脳細胞を再生することは不可能ですので、一次性脳損傷を受けた部分は修復することができません。

このダメージが生命維持に必要な部分を犯してしまうと、救命することは困難です。

一次性脳損傷は、外傷以外にも、けいれん、脳炎/脳症、低酸素、脳出血、脳梗塞など、さまざまな原因で生じます。つまり原因は様々ですが、結果として脳損傷を来すという意味で、同一に扱うことができます。

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一次性脳損傷が生じると、例えば出血、脳自体の腫脹などによって、健常な脳が圧迫されたり、炎症が起きて、さらに脳が壊れるなど、“二次性脳損傷”が生じます。二次性脳損傷は、脳の脆弱性に起因して生じる障害です。脆弱な脳は、一次性脳損傷による影響に加えて、低酸素、低血圧、高体温、低血糖、高血糖などによって、脳細胞の破壊が進みます

逆に、低酸素、低血圧などをさけてあげることで、二次性脳損傷が及ぶ範囲を最小限にとどめてあげることができるかもしれません。繰り返しになりますが、壊れた脳細胞を再生することはできませんので、全力でこの低酸素、低血圧、などの刺激を取り除くことで二次性脳損傷を防ぐ、あるいは最小限にすること、が治療の主眼になります。

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ドミノって知ってます?

わかりにくい話なので、少したとえ話をします。

ドミノってご存じですか?

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こんな奴です。1回倒れ始めてしまうと連鎖的にどんどん倒れていきます。脳損傷もこんなイメージです。一旦、一次性脳損傷という刺激でドミノが倒れる(=脳細胞が壊れると)、低血圧、低酸素、の刺激によって、どんどんドミノが倒れ続ける(=連鎖的に脳細胞が壊れ続ける)ことになります。

このドミノが、放射状に並んでいる状態を想像してみてください。

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こんな感じのイメージです。この交差している中心部分を ”ばーん” と叩くと、ドミノが一定範囲倒れます。これが一次性脳損傷です。でも中心部分には砂煙が立っていて、どのぐらいの範囲が倒れているかはまだよくわかりません。

しかし。ドミノは確実に倒れ続け、その範囲を拡大していきます。これが二次性脳損傷です。低酸素、低血圧なのどの刺激がこの倒れる勢いを加速します。

われわれはドミノを立て直す(=脳細胞そのものを復活させる)ことはできません。できることは唯一、ドミノの暴走をできる限り早く止め、倒れる範囲を最小限にとどめることです。これが、「中枢神経管理」(≒ 神経集中治療)ということになります。

最終的に砂煙が晴れてくると、最初の刺激で倒れた範囲(=一次性脳損傷)とドミノが連鎖的に倒れていった範囲(=二次性脳損傷)の総和としての「脳損傷」が明らかになってくる、ということになります。

理解しなくてはいけないことは、

1. 一次性脳損傷を予防するにはどうしたらよいか?
2. 何が二次性脳損傷を起こすのか?
3. どうやったら二次性脳損傷を防げるのか?

ということになります。

明日からはこのあたり、少し解説を加えてみたいと思います。




小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン