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アイディアのプロトタイピング | PEBLWEARウェアラブルリモコンができるまで。

シンプルなタッチ操作でスマホの基本的な音楽操作を、ノールックでサッと行えるPEBLWEARウェアラブルリモコン。

前回はその着想とプロトタイプ制作をはじめるまでの経緯を紹介しました。今回はより具体的に、メーカーでもない個人クリエイターがアイディアのプロトタイピングから商品化まで漕ぎ着けた道のりを辿ってみたいと思います。

実は本業の電気メーカーで様々なプロダクトの商品化を担当していた私。思いついたタッチリモコンのアイディアを「プロトタイプしよう」と思ってもワイヤレスでスマホとつながったり、タッチジェスチャーを認識させたりするとなると、当時はそれなりの投資をして専業メーカーさんに依頼するしか術を知らない状態でした。なんとか週末の個人プロジェクトとして商品化ができないかと夢見ていた私は、できるだけお財布に軽く早い開発をと、まずはスマホにワイヤレスで繋がるキーボードをなんとかDIYする方法はないかとググって調べまくることからスタートしました。

そんな中でたどり着いたプロトタイピングの方法が、当時プログラミング教育などでiPadとセットで採用されていたmicro:bitという製品、そしてArduinoという様々なマイコンに対応したプログラミングのプラットフォーム。

この二つを組み合わせることで、「スマホをワイヤレスでコントロールする」+「タッチセンサーをDIYする」方法を手に入れアイディアの原理試作に取り掛かりました。詳しい方法はGoogle先生経由でいろいろ教えてもらい、見よう見まねで実践です。

半年ほどで3Dプリントした本体、micro:bit、タッチセンサーの制御基板、タッチを検出する銅板2枚を組み合わせて最初のプロトタイプが完成。必要な部品は全てスイッチサイエンスで調達できました。対応する操作は曲の送り戻しのみ、テレビリモコンサイズになってしまった初号機。これをポケットに突っ込んで音楽を聴きながら近所を散歩、サイズ感や操作感の勘所を確認。「ポケットという定位置で気分にあった音楽を選択できる」ことの気持ちよさを体感することができました。

汎用基板のmicrobit、Arduinoでのコーディング、Fusion360でのモデリングで製作
デザインやサイズはさておき、行動しながらスムーズに楽曲操作ができた瞬間。

この体験こそがプロトタイピングにおいて重要なポイントで、アイディアの最も重要なポイントのみに集中し、それ以外の部分は程ほどに留める。短時間に様々な発見や気づきを得て次のプロトタイプに反映。これを短く繰り返し、さらに重要な改善点の発見につなげるのが私のスタイルです。これがやってみると意外に難しく時間をかけて色々作り込んでしまいがち。最終形の試作までは余計な作り込みや小さなこだわりは「お預け」が肝心です。

行動しながらスムーズな楽曲操作の価値を体感できたところで、次のプロトタイプはより装着感を無くすための小型化、複数操作に対応するためのタッチセンサーの検討をスタート。数か月後には現在のプロダクトの原型となる「小石サイズ」のデバイスが完成。小型化と量産を前提にした構成を確認するため市販されている無線モジュールから全ての配線を銅線で接続し、タッチセンサーは銅板をセロテープで緻密にレイアウト。手作り感あふれプロトタイプですが原理的には商品化された現在の構成と同等の構成です。

小型化と操作性を追求した2ndプロトタイプ

このタイミングでも、プロトタイピングは重要な部分に集中。例えば回路基板やソフトウェアは最終的な状態は作らずに、できる限り汎用性の高い要素の組み合わせで行うことで、機能や価値を確認するためにかかるリソースや時間を最短にしています。

毎日の犬の散歩や週末のサイクリング、旅行やキャンプなど数えきれないほど持ち出し、ハード・ソフトの両面から何度も作り変え。その過程で対応するジェスチャー操作の選定や、タッチ操作の感度、タッチ面の傾斜や曲率、タッチ操作に対するサウンドフィードバックをチューニング。心地よく感じられる操作感の追求やポケット上からの操作への対応を進め「これなら商品化できる」と確信できるまで、じっくりと作り込みました。

自転車のハンドルに取り付けてみたり
ポケットに入れたまま操作できないかと試行錯誤
キャンプにも持ち出し、BGMをバックにコーヒータイム
毎日毎週末使い込んでチューニングと、ブラッシュアップを繰り返す

ここまで来たら、次は客観的に価値の確認と販売を見据えたアクションのスタートです。いざKickstarterにチャレンジ。(つづく)

もう立ち止まらなくていい。
いまこの瞬間に、ベストな曲を、ベストな音量で。

この体験を広げ、世界の人々のチャレンジやクリエイティビティーを音楽で後押ししたい。そんな想いをミッションとして、PEBLWEARウェアラブルリモコンをお届けしています。

PEBLWEAR | クリエイター
赤塚 雄平


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2022年度グッドデザイン賞受賞。1点ずつハンドメイドのウェアラブルリモコン。リンク先から製作オーダー頂けます。
Made in Matsumoto Nagano Japan.

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