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MELODY&NUTS #24 CONDUCTOR

MELODYがLIVEを始めた同時刻

MAIN STAGE
19:00 東堂真一郎

会場が期待感でざわついている

出演の噂を聞きつけて
全国のJAZZファン達が
会場に集まり
今か今かと
その時を待っていた

世界を舞台に活躍する
東堂真一郎が
国内で演奏することは
年に数度だ

コンサートのチケットは
プレミア化し3倍以上の高値で
取引されることもある

今回の野外フェス出演は
異例中の異例で
真意も本人から語られてはいない

拍手が巻き起こる

ステージに先に登場したのは
東堂家の長男で
バイオリニストの東堂慶
そして長女で
ピアニストの東堂花の
二人だった

ステージ中央に移動し
手を上げ
深く頭を下げると
拍手は更に大きくなった

続いて
各パートのミュージシャンが登場し
同じくステージ中央で
頭を下げた

全員が定位置に着き
沈黙が流れる
拍手が鳴り止むのを
待っているようだ

ステージの照明は落ち
静寂が会場を包む
すでに真一郎の制圧は始まっていた

ステージ中央に置かれた
サックスにピンスポットライトが当たり
また沈黙が流れる

やがて会場後方から
拍手と歓声が聞こえ始めた
それは
大きな波のように
ステージに迫ってきている

東堂真一郎だ

なんと意表を付き
大勢のガードマンを引き連れ
会場後方から中央を
堂々と歩き
登場したのだった

世界的スターの登場に
会場は興奮の坩堝と化した
しかしこれはまだ序章にすぎない

大きな拍手と歓声に包まれ
真一郎がステージへと上がった

スタッフへ一礼し
バンドマン達にも一礼をした
真一郎は振り返り
大きく手を広げ

会場全てを指揮するかの如く見渡し
右手を胸の位置に移動し
深々と頭を下げた

会場中から大きな拍手が起こる中
頭を上げ
右掌を前に突き出し
握った

すると会場は
水を打ったように静まり返り
静寂を取り戻した

静と動を自在に操る
真一郎が鬼才と呼ばれるようになった
世界中どこででも通用する
お決まりのパフォーマンスだ

真一郎はいつも静寂の中からしか
音楽を始めない

滅多にメディアに出ることは無いが
真一郎が機嫌を損ねて
帰ってしまった
コンサートのニュースは有名だ
一度や二度じゃ無い

そのことを知っている観客達は
真一郎の
一挙手一投足に集中し歓喜する

花のピアノが鳴る

〜Charlie Parker / Now’s The Time〜

スタンダードチューンから
LIVEは幕を開けた

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