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日本語検定(1〜3級)対策講座 ① ら抜き言葉

日本語検定(=語検)の対策記事を書いていきます。日本語検定を持っていますと言うと「日本語能力試験」と勘違いされることがよくあります。日本語能力試験は日本語を外国語として勉強している人のための検定試験で、日本語検定は主に日本語を母語とした人のための検定試験です。

当方、日本語検定1級をこれまでに4回受験して、4回とも合格しています。読売新聞社や時事通信社様からも賞をいただいたことがあります。しかし、文部科学大臣賞を受賞するという目標があり、まだまだ勉強中の身です。こうした記事を書くことで、自分の日本語力を更に伸ばすことができるのではないかとおもい、やってみることにしました。

主に1級〜3級を受ける人向けの記事になりますが、検定を受ける予定のない人にとっても、教養としてためになるような記事に仕上がっているとおもいます。

今回のテーマ:
「文法(ら抜き言葉)」
難易度:★☆☆☆☆ 重要度:★★★☆☆

例題 次の各文について、規範的な可能表現になるように( )内の動詞の形を変えてください。ただし、「〜できる」という表現は使わないでください。

① このキノコは(食べる)。
② まだ予約した内容を(変える)。
③ 今月中には日本に(帰る)。

①の答えは「食べられる」です。しかし、実際の会話の中では「食べれる」という表現を聞くことがあります。このように、本来「ら」を入れるべき場合で「ら」が脱落してしまった言葉遣いのことを、「ら抜き言葉」といいます。

②の答えは「変えられる」、③の答えは「帰れる」となります。両方とも「かえる」という読み方をする動詞なのに、可能表現になると形が変わってしまいます。

それでは、どのような場合に「ら」を入れるべきで、どのような場合に「ら」を入れてはいけないのでしょうか。

説明を2種類用意しましたので、ご自身がわかりやすい方で理解していただくとよろしいかとおもいます。多分、説明②のほうが使いやすいです。

説明①:上一段、下一段、カ変動詞では「ら」が付く

念のため、「活用の種類」の説明からさせていただきます。読んでもわからなければ説明②に進んでください

動詞は後ろに続く言葉によって形が変わり、これを「活用」と言います。例えば、「読む」という動詞は、「〜ない」が続くと「読ま / ない」となり、「〜て」が続くと「読ん / で」となります。

活用のタイプによって、現代語(口語)では動詞は5つに分類されます。活用の種類と、その簡単な見分け方は以下の通り。

STEP1:否定の形「〜ない」にする
STEP2:「〜ない」の直前が、何段の音かを調べる
STEP3:ア段→五段活用、イ段→上一段活用、エ段→下一段活用(例外的に、「来る」はカ行変格活用、「する」はサ行変格活用)

そして、上一段、下一段、カ変動詞の場合は、可能表現にする際、「られる」という助動詞が続くので、「ら」が付きます。先程の例題①は「食べる」という下一段動詞でしたので、「食べられる」という形が正解で、「食べれる」は不正解となります。

例題②も「変える」という下一段動詞でしたので、「変えられる」が正解になります。

例題③の「帰る」は「帰らない」という形になるので、五段動詞です。実は、五段動詞の可能表現は、一般的に可能動詞と呼ばれるものを使います。可能動詞とは、「書く」→「書ける」や「言う」→「言える」のように、五段動詞が下一段動詞に転じたものです。ややこしい言い方をしてしまいましたが、つまり、「ら」は付かないということです(「帰られる」のような五段動詞+られるの形も文法的には間違えではないのですが、可能表現としてはほとんど使われません。「られる」が可能以外の用法(受身・尊敬・自発)で使われる場合は、この形は許容されます

また、例外的な動詞として、「来る」をカ行変格動詞、「する」をサ行変格動詞と言います。カ変動詞には「られる」が接続して「来られる」という形になります。しかし、サ変動詞「する」は「できる」という形になります。

説明②:「〜よう」(勧誘)の形にできる場合は「ら」が付く

もうひとつの考え方は、「〜よう」という形にしてみるというもの。「食べる」は「〜よう」を付けて「食べよう」という形にすることができます。このように、「〜よう」を付けることができる動詞については、可能表現にした際、「ら」が登場します。

食べる(食べよう)→食べられる
変える(変えよう)→変えられる

ただし、例題③の「帰る」のように、「〜よう」を接続できない動詞もあります(「帰る」は「帰ろう」になる)。そのような場合は、可能表現にする際、「ら」を付けず、「帰れる」という可能動詞と呼ばれる形になります。

「来る」という動詞はカ行変格動詞といって、例外的な扱いを受けることの多い動詞ですが、上記のの考え方と同様に「来よう」という形にすることができるので、「来られる」という可能表現が適切です。

「する」という動詞はサ行変格動詞といって、こちらも例外的に扱われる動詞です。「する」の可能表現は「できる」です。

演習問題

それでは、問題形式で理解を確認していきましょう。問題は全てで20問あります。前半10問は無料で公開しております。後半10問と解答解説は100円の有料記事にしておりますので、悪しからずご了承ください。

実践問題 次の各文について、規範的な可能表現になるように( )内の動詞の形を変えてください。ただし、「〜できる」という表現は使わないでください。

① その蓋は簡単に(開ける)。
② 好きなときに(止める)。
③ その国では誰でも酒類を(買う)。
④ 鉄球を遠くまで(投げる)。
⑤ 早い時間に(起きる)。
⑥ 顕微鏡があれば細菌を(見つける)。
⑦ 部長になら窮状を(訴える)。
⑧ この物件にはエアコンを(付ける)。
⑨ 明日、彼女は(来る)ないらしい。
⑩ 火力が高くすばやく(煮る)。

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