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観劇未経験の二次元オタクが即落ち2コマした推し劇団の話(鍋敷こよみ)


数年前、筋金入りの二次元オタクだった私は、ある劇団にどハマりしてしまった。
笑いあり涙ありのドラマティックな物語、本格的なアクション、鳴り響くロック、時に生演奏も交えたド派手な舞台の数々!今年で結成40周年、演劇界の娯楽路線の極北を突き進む最強エンタメ集団『劇団☆新感線』である!

『劇団☆新感線』との出会い

先述した通り二次元・オタク・ピープルだった私は、映画やドラマどころか、そもそもテレビすらあまり見ず、さらにドイナカ在住ゆえに身近な娯楽の選択肢に「観劇」が存在しない、演劇と交わることのない生活を送っていた。

そんな中、新感線ファンのフォロワーに勧められ、DVDを送ってもらったのが『髑髏城の七人(2011)』
1990年の初演から7年毎に再演されている新感線の代表作で、かつて信長に仕えた三人の男達が因縁の戦いに身を投じてゆく時代活劇だ!

この動画の0:45くらいから流れる曲が、DVDのメニュー画面にも使われている作品のメインテーマ。
出だしの「デデッ!(シュッ!!)(キィ〜ン!!!)」90年代アニメのSE入りオープニングを感じ、貸してくれたフォロワー、私のことよく理解してんジャン……と照れつつ再生。


本作のオープニングの演出はこんな感じだ。

「無界の里が救いの里か。まあいい、今のところは」
メインテーマが響く舞台の中心にひとり立つ主人公、捨之介。
「浮世の義理も、昔の縁も……」
鉄煙管を振りかぶり、見得を切る。拍子木が鳴り、スポットライトが彼を照らすと……
「三途の川に……捨之介!」
黒背景に白く輝く、スタイリッシュなクソデカタイトルロゴがドーーーーン!!!

最高のやつじゃん。

しかもメインテーマに乗せてキャストやスタッフのクレジットが表示される。
いよいよアニメじゃん。


今まで触れてきた漫画やアニメの世界と地続きのようでいて、全く知らなかった世界がそこにあった。俳優の動き、台詞、音楽、照明、全てが緻密に計算されシーンを彩っている。観客の前でリアルタイムで演じられていたとは信じがたいクオリティに圧倒された。アニメか?でもすごい汗かいてるよ。二次元も汗をかくんやなあ。
匙加減を誤れば即座にチープになりそうなマンガ的演出が、この板の上だと不思議と成り立つのである。さらに演出だけではない、登場人物の思いが交錯し、展開してゆく脚本も本当に素晴らしかった。

こんなに楽しいものがあったなんて!!
雷に打たれたような衝撃から、私は二次元オタクと観劇オタクの二足の草鞋を履く、劇団☆新感線ファンかつ髑髏城の七人のオタクになった。
これまで散々萌えに転がされてきたオタク、新たなジャンルに足を踏み入れるきっかけもまた萌えであった。髑髏城の推しは本作のラスボス、天魔王です。

アートボード 1

あとオタクだからこういうのも作っちゃう!壁に向かって推しを布教したがる生き物だから! 円盤貸してくれたフォロワー、ここまで布教成功したら絶対楽しいだろ……。


新感線に順調にズブってゆくオタク

新感線には、主に神話や史実をアレンジした時代活劇『いのうえ歌舞伎』、舞台上のバンドが楽曲を生演奏する豪華な歌モノ『新感線R』脳の大事なブレーキが壊れているとしか思えない混沌とした『ネタもの』という3つのシリーズがある。
特にいのうえ歌舞伎と新感線Rの多くは、『ゲキ×シネ』という舞台映像を劇場上映用に編集する試みにより、全国の映画館で観ることができる。映画館が再開した暁にはぜひ足を運んでみてね(宣伝)

円盤とゲキシネで過去作を順調に履修した私は、派手〜〜!!! と思っていた髑髏城の七人2011も、演出としては比較的硬派なほうだったと知った。
『朧の森に棲む鬼』という、シェイクスピアの『リア王』をモチーフに、嘘と裏切りで王に成り上がる男を描いた物語なんかは、舞台上に滝を作ったり、演者を土砂降りのなか戦わせるなど本物の水をジャバジャバ使用した豪勢な演出で、これはとんでもないお金の使い方バカ劇団だ!! とガラガラを振られた赤子のようにキャッキャと喜んでしまった。お金をかけたド派手演出に殴られるのが大好きなので……。

『ネタもの』の多くは曲とダンスをふんだんに盛り込んだ作品で、楽曲のパロディのギリギリアウトあるいはふつうにアウトっぷりから、利権的な問題でゲキシネおよび円盤化されない場合が多い。だが、新感線の真骨頂はバカでロックな音楽劇なのだ!
特に好きなのが『直撃!ドラゴンロック2・ 轟天大逆転~九龍城のマムシ』
風魔忍者の末裔で格闘技の達人、お色気への執念が尋常でない顔もキャラも濃すぎる主人公・剣轟天(つるぎごうてん)が、セーラームーンのナースに襲われたり……女物のブラとパンツを装備したり………あと爆破オチ(途中で説明を諦める)
勢いとバカバカしさで駆け抜ける3時間、1から10までふざけている教訓のかけらもない舞台だが、なんとOPアニメがあり(これは本当に本当のアニメ)1999年にプロジェクターの映像と生身の演技の融合を試みている先進性がすごい。
オーディオコメンタリでも劇団員達が見ながらゲラゲラ笑っていて、本人たちが本気で楽しんでいるのが微笑ましく、ネタものは作品を通して演者たちの自信と楽しさがメチャメチャ伝わってくるのも好きなところだ。

……と、ここまで映像化された新感線の話をしてきた。
劇場に通うようになり、実際に足を運んだ作品のゲキシネ化も経験したことで知ったのは、映像だけでは決して満たせない、生で見る演劇の魅力だ。板の上の熱演にあてられた観客たちの物言わぬ後ろ姿が嬉しそうだったり、泣いていたり、恐怖していたり、演者と観客の感情で満たされる、劇場の空間が丸ごと大好きになった。
やっぱり劇場の椅子に戻りたい気持ちは強まるばかりだな!そして新感線の魅せる新たな物語に胸を踊らせたい!


劇場の扉が再び開くまで、私は情熱を失わずに待っているよ。新感線の発車ベルを聞くためにね!!

【今回の「偏愛」を語ってくれた人】 鍋敷こよみ twitter

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