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地方のローカル鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか⑦ 近江鉄道の話

 ちょっと自分が感銘を受けた取り組みを記録&シェアのための記事です

・近江鉄道の全線無料デイ

 2022年10月16日 近江鉄道が「全線無料デイ」と銘打って
 マジで全線乗り放題&無料という取り組みを実施しました。マジでタダ。 

 で、やったらこんなことに・・・↓

 1日で38,000人の利用があったそうです、通常の12倍、想定の3.8倍。
 38,000人ですよ?大都会並みの輸送量です。

・あわせて沿線自治体でイベントを実施

 この無料デイは、単純に「鉄道タダですよ!」ってものじゃなくて、近江鉄道の沿線自治体が企画するイベントとセットで行われました。
 私が感銘を受けたのはまさにこの点です。

 近江鉄道は、2024年から「上下分離方式」での運行を採用します、下の部分を沿線自治体で折半して維持しようということです。自治体の住民はある意味これから近江鉄道の出資者、ステークホルダーとなるわけです。その出資者を相手に、非常に素晴らしい1日を提供した、という点です。

・実績

 イベントの様子は、10.26の協議会でまとめられましたが、誰も不満ないっすねこれ。しいて言えば(掲載外ですが)渋滞や路駐が予想以上に起こってしまったこと。

https://pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5356832.pdf 令和4年(2022年)10月26日水曜日 第10回 近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会  以下同

 タダに引かれて乗った人は、いろんな楽しいイベントを見れて幸せ
 イベントの実施者は売上好調or来場者増で幸せ
 芸能音楽のイベントもお客さん多くてやりがいアップで幸せ
 近江鉄道は予想以上の反響をゲット、上下分離への一歩を踏み出す

 実績というと数字にフォーカスしがちで、この近江鉄道のケースではは数字もすごいけどお客と沿線でイベントをやった住民らの「実感」「感情」が最大の実績になるのではないかなと、そう私は思います。
 いろんなイベントで沿線のまちが賑わって楽しかった、その賑わいは間違いなく近江鉄道という一本の幹からうまれたんだという「実感」を手にしたのではないでしょうか。
 これから、地元自治体で少なくない額を毎年負担して上下分離をやるわけで「その価値が近江鉄道にあるのか」はシビアに住民の方は見たほうが良いと思います。
同時に
・「鉄道乗ったら楽しい経験が出来た」という素朴な思い出
・「地元の魅力を再発見できた」というローカルプライド
これを本当に大事な宝物にしてほしいなと思います。日本全国でこんな取り組みが出来るところはそう多くないんです。これをこそ今回の取り組みの最大の成果として誇ってほしいと思います

・まず利用してみないことには…

 いま日本全国のローカル線は、存続か、どのように残すか、それともバス転換か…揺れに揺れています。
 
 でもまずは、どんな線区であろうと一回地元の人に使ってみてほしいんです。その上で、こんな不便な鉄道使わねえわってなるならそれもよしです。でも本来ステークホルダーである地元住民の知らないところで色んなことが決まっていく、それはイヤでしょう。私もそういうことにはならないでほしいと思っています。

・これをそのままパクってもうまくいかない…けど

 近江鉄道がいまのところ素晴らしい実績を上げたと言っても鉄道事業が厳しいことに変わりはない、そして来年同じことをやってまた上手くいく保証もない。新しい企画の打ち出しも必要かもしれません。
 ほかの路線で全線無料デイをやろうとしてもそのままの効果が見込めるものではないし、そこは各々の自治体で知恵を出すしか無いでしょう。

・「良いボール投げたなあ」

 ってなことを含めて、近江鉄道は「良いボールを投げたなあ」って思います。このボールを受け取った自治体や住民がどう返していくか、それもまた興味深く、追っていきたいと思います。

 本当に、今回の近江鉄道の取り組みは、そのまま無料デイをどこでもやったら良いんだというわけではないですが、まず乗ってもらう、見てもらう、楽しい思いをして帰ってもらう、そういうことが実現できた。
 
 近江鉄道のボールを受け取り、走り出すのは地元だけではなく、遠く離れたまちかもしれない。それくらい示唆に富んだ取り組みと実績だと思いました。

 と、いうことで近江鉄道さん、沿線自治体さん、警備に当たった方…などなどは対応お疲れ様でした。

ローカル線の存廃問題というテーマについての記事をマガジンにまとめています、よろしければほかの記事もぜひ!


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