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ホテル経営における所有と運営の分離について

ホテルに関するニッチなお話。

国内のホテル業界では、建物所有者とホテル運営者が同一(もしくは、親会社が所有して連結子会社が運営)というケースが圧倒的に多い。
あるいは、所有こそしていないが、マスターリース(賃貸借契約)で毎月高額な賃料を支払っているというケースもよくある。

かたや海外では、所有と運営の分離がメジャーであり、その最たる例が、マリオットやヒルトン、ハイアットなどの外資系ホテルチェーン。彼らは基本的に建物の自己所有はせず、FC(フランチャイズ)かMC(運営受託)で運営のみを手かげている。マスターリースもほとんど無いに等しい。

国内資本のホテル会社で、所有と運営を分離し、運営受託による事業スキームを確立させている代表格が星のリゾート。
建物保有により発生する、税金・維持修繕費・再投資などの高額なコスト負担から脱却し、『持たざるホテル運営』を実現した当社は、コロナ禍という未曾有の事態でも、ひときわポジティブでスリムな経営姿勢を貫いている。
こうした流れは今後、一部のコングロマリット企業を除き、国内資本会社においても増えていくことが予想される。

直近では、西武HDの子会社(プリンスホテル)が所有するホテル施設を、シンガポール政府系投資会社のGICに売却し、運営受託を軸とした『持たざるホテル運営』へと舵取りをした。

※西武HDの組織再編については、ニュースイッチ記事にわかりやすくまとまっていましたので、ご興味がある方はぜひ読んでみてください。

MC(運営受委託)方式が増えることで、ホテル運営側による競争は熾烈になる。
なるべく良い立地(例えば再開発ビルの高層フロアなど)で、なるべく良い条件の受託を勝ちとれるかが鍵となる。

そのためには、比較優位なブランドを携えて、アセット所有者を魅了・納得させる必要がある。
高い利益率を実現できるブランド、富裕層へのアプローチご強みのブランド、良質多量の会員組織を有しているブランド、独自の世界観が確立しているブランド等。

ホテル運営側にとっては熾烈極まりない話であるが、業界全体・ユーザーにとってはありがたい。
運営力の乏しいホテルブランドは徐々に淘汰されていき、結果として良質なホテルが生存するからだ。

この例外として生き残るのが、コングロマリット企業傘下が運営するホテルである。
全てではないが、その大部分は、赤字であろうが何だろうが淘汰されることはない。
赤字になっても親会社が補填し、グループ決算として黒字化する。そして、『相乗効果』というなんとも曖昧な言葉により、生存していることそのものに意味があると見なされるからだ。
(もちろん、こうしたホテルの中にも素晴らしい運営を実現しているホテルは沢山ある。)
しかし、こうしたホテルも、業界全体の運営力志向の渦に巻き込まれ、いずれは淘汰されるであろう。

現在国内において、MC方式で独走しているのが、世界中に2億人の会員組織を抱える外資系ホテルチェーン、マリオットインターナショナルだ。
リッツカールトンやウェスティン、マリオットなど、異なるブランドで全国にMCホテルを展開している。
それをヒルトンやハイアット、IHGが追随しているという構図。

近い将来、国産のホテル運営会社が外資系ホテルチェーンに取って代わる日を楽しみにしたい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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