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堂々勇退!ロマンスカーVSEラストランで粋な計らい

こんにちは。隣の芝生です。

今回は鉄道関連の記事ですが、鉄道ファンではない方にもわかりやすく仕上げることを心掛けましたので、お付き合い頂ければ幸いです。

2023年12月10日、大勢のファンに囲まれてとある車両が引退しました。
それが小田急電鉄のロマンスカー 50000形VSEです。

 他のロマンスカーとは一線を画す「白いボディにヴァーミリオンの帯」の流線型のデザインは、誰もが一度は乗ってみたい特急列車のイメージそのものだったように思えます。

 私もそんなVSEに強く惹かれた一人であり、2005年の登場からしばらくして展望席に何回か乗ったりと、箱根旅行の楽しみの一つにもなっていました。何と言っても、新宿から小田原までをノンストップで結ぶ「スーパーはこね」運用に入るVSEは格別だったように思えます。

 そんなフラッグシップモデルも、登場から17年となる2022年に、特殊部品の保守の難しさなどの理由から定期運用を退き、2023年末に完全引退が決定。今回はその撮影記となります。乗車録でしたら、他の方がアップされていますので、そちらも併せて読まれると理解が深まるかも知れません。



■ロマンスカーVSEさよなら運転の概要

 ロマンスカーVSEのラストランは、旅行として企画された団体ツアーです。小田急線のちょうど中間あたりに位置する相模大野からスタートし、江ノ島線を南下して片瀬江ノ島へ。その後、都内の喜多見車両基地まで引き返し、反転して営業実績が少ない多摩線の唐木田に入線。唐木田からは新宿に向かい、最後の都心乗り入れを済ませます。その後、途中の車庫に何回か入りつつ、徐々に秦野へと下っていき、最終的に成城学園前に帰って有終の美を飾るといったダイヤでした。

 私は小田急線から離れた場所の人間なので、昼間の新宿入線便からの撮影となりました。


■都心側の撮影地に向かう

最古参の一般車 8000形の回送。

 ファンの方でなくても、おおよそ予想が付くとは思われますが、だいたいこの手のさよなら運転は、集まってくるファンの多さ故に荒れます。

 鉄道ファンが必ずしもお行儀の良い集団とは限らないのは言うまでもないですし、今回の相手は「ロマンスカー」です。それも花形車種ともなれば、駅での撮影のお作法を知らない一般の方も相当集まることが予想されました。

 そのため、祖師ヶ谷大蔵や和泉多摩川といったストレートでバシッと決まり、ファンが多く集まる有名構図の駅ではなく、目立たない都心側の駅間の踏切で泣く泣く狙うことにしました。

 私はVSE通過の1時間半ほど前に撮影場所に到着しましたが、それでも、車一台やっと通れるくらいの小さい踏切の前側に5人、後ろ側に3人の先客がいらっしゃりました。前側は既に埋まっていたので、私は後ろ側に陣取ります。もうキャパに余裕はありません。

最新鋭の5000形 各停 本厚木行き。思ったより反射が凄い。

 当初は荒れ想定で撮影もままならないと思ってラストランは見に行かないつもりでしたが、いくら鉄道オタク要素が抜けた私と言えど、VSEともなると一生後悔が残るなと思い、こうして撮影にやって来ました。

 手持ちのカメラの絞り(明るさを調整するとこ)が随分前から壊れていて、5回に3回は完全な黒塗り/白潰れで撮影できないレベルでしたので、ある種の覚悟を持ってこの場に挑んでいます。本番でのミスは絶対に許されない。

 しかし、撮影場所の選択が良かったようで、年長者の方が率先してマナー啓発や情報共有、さらには撮影時の立ち位置の配分をしてくださったおかげで、撮影地の人数が倍以上の20人程度になっても、予想に反してまだ全員が撮影できました。

千代田線直通にも使われる4000形。影落ちが凄いけど練習練習。

 カメラを構えてる人間が小さい踏切で20人を超えてくると、一般の通行人の方もさすがに気になる物です。

 普段なら「何か珍しいものでも来るんですか?」と声掛け頂くことが多いんですが、今回は違いました。「ロマンスカー引退するんですよね…!」と若いカップル、「VSEはいつくるの?」と親子連れ。さすがVSEと言ったところです。

 幸いにもこの撮影地に集まってる人は、みんな明るくていい人だったので、親子連れには通過時間を教えてあげて、撮り鉄同士では「踏切開くから道開けよう!」などと声掛けが積極的に行われていて、完璧な統率が取れていました。年長者組が凄い良い方々だったのが大きい。

 私も年長者の方といろいろお話して、撮影地のVSE通過予定時刻や、これから車庫に入るタイミングなどをいろいろ教えて貰いました。冬場の日差しなので、影落ちは承知の上での勝負。


■いよいよVSEが新宿にやってくる…!

新宿に向かうVSE
精悍な顔つき。およそラストランをしているとは思えない堂々たる佇まい。
デジタルズームで申し訳ない。次世代の主役「GSE」と並びました。


撮影地から目視できるギリギリの場所で、次世代の展望車「GSE」と並びました。私が小田急を熱心に追いかけていた頃は、今回引退するVSE2本に加えて、展望車付きの車両でHiSEとLSEという車種がいたんですが、明日からGSEの2本だけに。隔世の感があります。

 ここから新宿で軽いセレモニーを行ってから、20分後に折り返してきます。カメラはまたしても暗転。間に合うか。

 後から来た中学生の子は、VSEとGSEの並びを動画に切り替えて収めており、戦果を喜々として見せてくれました。僕も動画回せば良かったとこの時に思いました。凄く良かったよ。


■新宿の高層ビル街よ、さらば

名残惜しそうに新宿を跡にするVSE。みんなが手を振ります。

 本番直前にカメラが復帰したので、電源を入れたまま、じっとVSEを待機。もう今後の充電なんていいから、この1枚だけはきちんと記録したい…という願いが通じました。

 雑多な高層ビル街と、架線柱の合間を縫うようにVSEは走り去って行きます。



■このままでは終われない

 10人入ればいい方であろうと思われていた踏切には、最終的に一般人含めて30人以上の撮影者が集まり、みなルールを守って楽しく撮影し、解散となりました。統率の取れたひな壇も、年長者の名采配のおかげ。

 ここで私は、先程同じ撮影地にいた紳士から教えて頂いた「成城学園前の車庫から出てくる時刻」を思い出します。先述の通り、新宿から秦野に向けて下っていく際、途中何度か車庫に入りながら走る関係で、一般列車でVSEを先回りすることが可能です。

 都心構図である程度満足はしたので、そのまま帰ろうかと考えていたんですが、VSEのきちんとした編成写真を撮れていなかったことを思い出します。追っ掛けするかの判断は、早いうちにしないといけない。さて、どうする。


 私は、駅での撮影に賭けてみることにしました。


■郊外まで行けば人が少なく… ならないか

 こんな人目に付かない踏切でさえ、最終的にキャパギリギリの30人が集まったのだから、増しては都心に近い区間ではどうなってしまうのでしょう。

 
 私はネズミの心臓で、人の多さ故に警笛を鳴らされるのも手ブレの原因になります。故になるべく混んでいない郊外区間を狙うことにしました。

 最終的に流れ着いたのは、相模川の流れる神奈川県中部・海老名。VSEが来るまでそれほどの猶予がありません。おまけに、都心から急行で40分以上離れても恐ろしい集客力。


 純粋な鉄道ファンしか集まらない駅間の撮影地とは違って、一般の方もそのうちの半分くらいを締めており、既に駅の先端は人で埋まっていました。私は順番的に後から来たので、上りホームから望遠を飛ばして、下り線を迎え撃つことにしました。

最も数の多い3000形。既に夕方の光線が厳しいです。

 
 何本か撮影していると、撮影者がさらに増えてきて、何食わぬ顔で前の方に紛れ込む方もいらっしゃりましたが、この撮影地もまた統率が取れており、後ろで待機していた人が順番を守るよう声掛けが行われ、無事VSEを迎え入れる態勢が整い…

 …と言いたいところですが、問題発生です。


ここで下りVSEの海老名駅通過予定時刻が28分と発表されました。

上り特急の同駅発車時刻が27分

さらには上り急行町田行き発車時刻は29分



何が起こるかもうお分かり頂けたでしょうか。


 そうです。上りホームでカメラを構えていると、全てが定時で動いた場合には、駅を出発した特急「はこね」号が、VSEが1分でも遅れた場合には上り急行町田行きが、撮影場所を遮る形で通過するのです。

 もちろん、下りホームで構えれば確実に顔くらいは映るかも知れません。ただ、編成全てを入れるのは不可能であり、そもそも鉄道ファン以外の一般人はVSEが通過する下り側に多く構えていて、いまから移動したところで撮影が困難です。

しかし、悩んでいたところでVSEは、既に相模大野を出発しています。もうこれ以上迷えない。再度賭けに出ます。



■27分発の特急「はこね」が静かに通過する…

 件の27分発MSEを使用した特急はこね号新宿行きが、きちんと安全確認を済ませ、ゆっくりと発車していきます。この間も我々は気が気ではありません。なにせVSEのライトがもう目視できているのですから。

 もうお終いだ…と諦めかけたその時に、我々は驚くべき光景を目にしました。


VSEが気を効かせて減速している!


目視可能範囲に来た時は、そこそこの速度が出ていたはずなのですが、驚くべきことに、MSEの姿を確認するやいなや迷わず減速。


 MSEの影に隠れた時は、誰もが覚悟をしましたが、超低速運転で我々の前に姿を現しました。これには現場にいた人は思わず声を上げます。

最後の最後にきちんとした編成写真を収めました!


 海老名駅をゆっくりと進んでいくVSEの姿に思わず感極まってしまいました。運転手さんの最大限の配慮に感謝です。

 Twitterの情報によれば、駅の後ろの方でVSEと被るはずだった急行町田行きも、きっちり減速して侵入することで、海老名駅構内でVSEと被らないように、最大限の時間稼ぎをしてくれたようです。

 VSEが28分通過で、27分と29分に対向電車が出るというシビアな環境ながら、このホームで構えていた全員が、VSEの姿を安全にきちんと見ることができました。途中入庫で何度も追っ掛けが可能なダイヤに設定されたこともそうですが、小田急電鉄の「一人残らずVSEを安全に見せる」という気概を感じますね。

 鉄道ファンや一般の方がこれだけ集まったにもかかわらず、目立った混乱もなく、ラストランを迎えることができたのは、イチVSEファンとして喜ばしいことだったと思います。欲を言えばもっと活躍して欲しかった。


18年間のご活躍、本当にお疲れ様でした。





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