【銅の牙を持つワーム】海底ワームがもつ銅の牙の生成メカニズムを解明したぞ

無機物を自分の身体から生成している生物はあまり存在していなくて、たいていの生物はタンパク質や糖質から牙や爪を作っている。爪は骨の一部だと思っている人がいたんだけれど、勘違いするのもわからなくはない。皮膚の一部だけどね。

昆虫の世界に方解石を含んでいる虫が発見されている。パナマハキリアリという働き蟻の外骨格がマグネシウムを含んだ方解石で出来ている。方解石は透明な石なのだけれど、複屈折といって、これで太陽をのぞくと二重に見えてしまう。

おそらくはパナマで生息している場所で多くマグネシウムを含んでいたのか、それとも、腸内細菌叢に糖をマグネシウムに変換できる細菌がいたのかどうか。無機物を身につけるというのは、病原菌からも身を守れるし、外敵の牙にも対抗できるだろう。進化の枝葉は想像を大きく超えてくることがある。


カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究チームは海底に生息しているグリセラ属のチロリが持っている銅製の牙の生成メカニズムを解明した。

グリセラ属は海底に生息している肉食のワーム。チロリは気性が荒く、すぐに襲ってくるという危険なワーム。しかも4本の牙は銅で出来ている。

研究チームはこの銅の顎を調べたところ、顎の構造の10%が銅で残りはタンパク質とメラニンで出来ていた。

メラニンと銅が合わさることで牙は摩耗に対して強くなっており、平均寿命である5年程度でも残っているという。

そして、タンパク質は多くの仕事をこなしており、銅の結合、メラニン形成の触媒作用、オーガナイザー(整理する)とファブリケータ(加工する)としての機能、などなどやってくれるので、MTP(マルチタスクプロテイン)と呼ばれている。

このMTPの働きをもっと理解が深まれば、有機素材が金属を生成する新しい素材が生まれるだろう。もしかしたら、全身の皮膚を金属の鎧に替えるなんて事も出来るかな。


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