見出し画像

私が感動した発明

執筆:Parole編集員 寺内輝治


小学生ぐらいの頃、工事現場にこのような保安灯が並んで立っているのをよく見かけた。

ポールサイン


今では、太陽電池やLED、ICチップの普及によって、もっと高性能なものがあるようだが、当時はこんなシンプルなものだった。

これがたくさん並んで点滅するのを見ているうちに、ふと疑問に思ったことがあった。点滅する間隔が、どれひとつとっても違うのだ。

なぜそうなのか、気になってしかたがなかった。点滅する仕組みは、だいたいこのようなものだと想像していたからだ。

画像2


これが正しいとすれば、銅板を回すモーターには同じものが使われているはずなので、点滅する速さもほぼ同じになるはずだ。しかし、そうならないということは、回転速度が違うモーターが使われているのだろうか…と自分を納得させていた。

しかし、あるとき、その疑問が解けた。
学研の図鑑『電気』にこの保安灯の仕組みが載っていたのだ。

それは、アルミニウムと銅を貼り合わせて作ったスイッチだった。
熱膨張率が異なる2つの金属を利用して、次のようにスイッチON・OFFを繰り返す仕組みが説明されていた。

画像4

1.常温(冷えた状態)では、スイッチがONになって電気が通る。
2.しばらくすると、金属が抵抗によって温度を持ち、膨張する。
3.アルミニウムは銅よりも膨張率が大きいので、スイッチはアルミニウムと反対側に反る=スイッチがOFFになる。
4.電気が通らなくなって、スイッチが冷えてもとの状態に戻ると、再びONになる。

複雑な仕組みを使うことなく電球を点滅させるこのアイデアに、子どもながらに深く感動したのを憶えている。

私の父は昔、電設資材の卸商を営んでいて、いろいろ発明品をつくっては販売していた。そのうちのひとつがヒットし、私を含む子ども3人を不自由なく育ててくれた。

その父がよく言っていた。

「物づくりは、複雑にするなら誰でもできる。
 いかに単純な仕組みでそれを形にするかが重要だ。
 単純だと製造コストも安いし、壊れにくい。」

その点から見ても、この保安灯は見事な発明品だと思う。

日々、社会に身を置いていると、ひとつひとつの事象はシンプルなのに、いつのまにか複雑に考えて、自分で複雑な現実をつくってしまいがちだ。

そんなとき、シンプルな方法で、シンプルな生き方を取り戻せたら、と思う。

その答えがここにあると、私は思っている。

画像4


・・・・・・・・・・

【寺内輝治 プロフィール】
Parole編集員。
中学2年生まで友だちとラケットベースボールやパソコンゲームに熱中する元気な子どもだったが、ある日、教室で奇妙な白昼夢を見て以来、「何のために生きているのか」を自分に問うようになる。
大学時代、周囲と同じように就職活動をすることに強い抵抗を感じ、翻訳で生計を立てるべく専門学校で学ぶ。
しかし、一度社会で揉まれる必要性を感じ、セールスプロモーションの会社に就職。イベントや展示会の企画運営、印刷物やWEBサイトの制作などに10年間携わる。
ホメオパシーに出会い、その魅力に取り憑かれてホメオパシー関連の会社に就職。タマネギの皮がむけていくような内面の変化を体験する(周囲から変わったと指摘される)。
その後、フリーランスとしてデザインや翻訳などをこなすなかで、「何のために生きているのか」という問いが爆発しそうになっていたとき、七沢研究所と出会い、その答えを見いだす。
2018年に京都から甲府に引っ越し、心身ともに健やかな毎日を過ごしている。

この記事は素晴らしい!面白い!と感じましたら、サポートをいただけますと幸いです。いただいたサポートはParoleの活動費に充てさせていただきます。