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脱マトリックス!理論と実践2020 (vol.13):ウィズコロナは微生物と戦う「アンチ」から共に生きる「シン」へ

執筆:いち あまね

この時代の人類の進化の方向性として、はっきりとこの世界の仕組みを理解した上で、マトリックス空間を抜け出し、自分を超え、人間を超え、無限の可能性を発揮するクリエイターとして生きること。

そのための情報をお伝えしていきます。

人のゲノムを圧倒する腸内細菌のゲノム数

前回は、自然環境の土壌と、人の土壌である腸内環境の相関についてお話ししました。

人は、あたかも自分一人で生きているかのように信じ込んでいますが、腸内を含め、全身に暮らす100兆〜1000兆個とも言われる常在細菌がいなければ、生きていくことができません。

人の全身の細胞の数は、最近、37兆個と言われていますが、それよりも遥かに多い常在細菌と共生しています。さらに、ヒトのゲノムには約2万2千個の遺伝子があることが分かっていますが、腸内細菌がもつ遺伝子の総数は一人あたり 60 万個を超え、日本人全体では500万個、海外も合わせると1200万個もの遺伝子があることが解明されています。

遺伝子は機能を持つタンパク質を生み出します。人の体は自分の細胞の働きだけではなく、腸内細菌を含む常在細菌の働きに大いに助けられていることが分かります。

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常在ウイルスが人をサポートする

最近では、さらに細菌の中に感染するバクテリオファージというタイプのウイルスがあらゆる常在細菌の中に感染し、人と共生していることもわかってきました。常在細菌をマイクロバイオームと呼び、この常在ウイルスをヴァイロームと呼びます。

ウイルスとは、遺伝情報を持った箱のようなものです。常在ウイルスが常在細菌に感染し、遺伝子に取り込まれることで、常在細菌の機能が変化します。

常在ウイルスの役割は、常在細菌が環境に適応するための進化の側面を担っています。つまり、常在ウイルスがもたらす新たな情報が常在細菌の働きを変化させ、人の働きをサポートしているのです。


人類は微生物の楽園の新参者

細菌、ウイルス、菌類、微細藻類など、微生物だらけの環境に、その他の生命が後から生まれました。そして、一番の新参者が私たち人類、ホモ・サピエンスです。

むしろ、微生物の楽園に住まわせてもらっているとも言えますし、私たちの常在細菌も、歴史を辿れば、もともと土壌など外側の環境に暮らしていた細菌がより暮らしやすい環境を求め、私たちの体の皮膚や消化管の内腔などの表面に居場所を求めて移住したものです。

私たちは、代謝、免疫、精神などの機能の維持を微生物にアウトソーシングして助けてもらいながら、彼らにぬくぬくした寝床とエサを与えて、持ちつ持たれつの共生関係を保っています。


「ウイルスは敵だ!」なウィズコロナ社会

さて、昨今は新型コロナウイルスの悪目立ちで、「ウイルスは悪者だ!」「微生物は敵だ!」と叫ばれるようになりました。そんな考えから、環境や手肌を殺菌・殺ウイルス・消毒することが日常的になっています。

環境や手肌をアルコールで消毒する度に、病原性のウイルスだけでなく、私たちと共生関係を保ってきた共生可能な微生物や常在微生物までもが死滅してしまいます。

実は、人間に病原性を発揮する微生物は、数多いる微生物の中でも0.1%未満とされています。その他の99.9%は共生可能な微生物や常在微生物です。

消毒剤や抗生物質は大量破壊兵器

消毒剤は大量破壊兵器のようなもので、善良な市民まで一網打尽にしてしまいます。けれども、世の中は、「アンチ微生物」という考えに染まってしまっているように感じられますね。

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ゲノム解析技術が確立される前は、顕微鏡で観察するしかなかった微生物。その頃の医学では、おもに病原性の微生物しか十分に研究されていませんでした。そして、有用菌で研究されていたのは乳酸菌やビフィズス菌に分類されるごく一部のものに限られていたのです。

ですから、医学でも「アンチ・バイオティクス」、つまり抗生物質を乱用していました。

抗生物質は細菌を殺す薬であって、抗ウイルス剤とは違います。

どんな細菌をも一網打尽にする抗生物質。それが、軽いウイルスで発症する風邪にまでどんどん処方されました。その結果、常在細菌まで死滅してバランスを崩したり、どんな抗生物質も効かない耐性菌が生まれるなど、問題になりました。

微生物と共に生きる「シン・バイオティクス」

ところが、ゲノム解析技術が確立し、次世代シーケンサーという高速の解析器が登場し、それが人の遺伝子だけでなく、微生物の遺伝子の解析に使われるようになると、驚くべきことに、天文学的な数の共生可能な細菌、さらには、ウイルスが人と共に暮らしていたことがわかったのです。

「アンチ!」と考え、大量破壊兵器のような消毒剤や薬剤で殺してきた微生物の多くは、私たちの暮らしに欠かせないパートナーだったのです。

そこから、医学は、「アンチ」ではなく「シン・バイオティクス」にパラダイムシフトしました。「シン=Syn-, Sym-」は、シンフォニーやシンパシー、シンクロニシティなどの接頭語で、「共に」という意味です。

微生物と戦うのではなく、微生物と共に生きることが、真の健康や豊かな環境を実現します。


ウィズ・コロナの消毒リスク

多様な種類の細菌やウイルスのダイバーシティが形成されていれば、本来、新参者の病原性の微生物が幅をきかせることはできません。むしろ、微生物の多様性を失った清潔すぎる環境は、付着した病原性微生物の繁殖を許すリスクを高めます

しかし、世の中、ちょっと出歩くと、公共の場ではアルコール消毒を使わなければならない状況に陥ります。消毒しなければ入れない店舗やビルなど、「公共の利益のために」消毒をせざるを得ません。

新型コロナウイルスの影響で、「アンチ」から「シン」に変わったパラダイムがまた逆行してしまったように感じます。


シン・バイオティクスを日常に

この状況は、新型コロナウイルスというたった1種類のウイルスのために、私たちのパートナーを大量破壊兵器で殺しているようなものと考えてください。消毒は、喜んでするものではなく、泣く泣くするものと考えるべきだと思います。

ウイルスを無効化しながら、人と環境に有用な共生菌は元気になる、そんなシン・バイオティクスなツールは、積極的に選択していきたいものです。またそのためには、微生物を健やかに育成する場・土壌をつくることを目的に、酵素やフルボ酸、ゼオライトなども活用が期待されています。

この時代だからこそ、自然環境で微生物に触れること、そして、微生物が元気な土壌で育ったシン・バイオティクスな農作物や、発酵食品、常在細菌を元気にする食品を使ったシン・バイオティクスな食事がとても大切です。

次回から、いかに「シン・バイオティクス」を実現し、健康に必須の常在細菌を育むかをお伝えしていきたいと思います。

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【いち あまね プロフィール】
医師・認定産業医・文筆家
米国IBA認定・ボディトークプラクティショナー
国立大学医学部医学科卒

出口王仁三郎が霊山として、邸宅を構えた岡山県熊山遺跡の麓に生まれる。
某大学病院糖尿病代謝内分泌科を経て、臨床医として最新のバイオロジカル医療・予防医療から在宅・看取り医療まで幅広く臨床経験を積みながら、個々の病気の根本原因やより良き生と死に向き合ってきた。
究極のヘルスケアは、人類の進化であると捉え、最新の分子整合栄養療法・バイオロジカル医療から常在細菌学、生命科学、意識科学、理論数学、物理学、哲学などを統合した視点で、医療とヘルスケアの次元上昇を目指している。
薬を処方する代わりに、情報空間へのアプローチとして、情報を処方することを天職と捉え、書籍やメディアなどで情報を発信している。


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