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採れたての美味しさは格別!瑞香園の自然栽培ブルーベリー

初夏の時期、福井のベーグル専門店 Park Coffee&Bagel(以下、「Park.」)に、瑞香園(ずいかえん)の新鮮なブルーベリーを使用したスプレッドやベーグルが並びます。今回は、福井県あわら市にある瑞香園のブルーベリーについてご紹介します。

現在、同園を切り盛りするのは、明るく快活でエネルギッシュな魅力あふれる川野瑞江さん。父・寿明さんから農園を継ぎ、畑とともにカフェも運営されています。

「ブルーベリーは、樹からもいだ採れたてが本当に美味しいんです。ぜひ食べて欲しいですね。」と瑞江さんは話します。

Top Visual: Photo Mizue Kawano


ブルーベリー農園とカフェを経営する川野瑞江さん
ぷっくりとした形が愛らしいブルーベリーの花


ブルーベリー畑と自然に囲まれたカフェ

瑞江さんは結婚を機に、勤めていた企業を退職しブルーベリー事業を本格化させました。農園を継いでから約20年。現在は、収穫した果実の販売から加工品の製造、ブルーベリー狩りのイベント(*)まで幅広く手掛けていますが、初めは簡易的な小屋でジャムやジュースを製造し、地元の人から集めたコーヒー瓶を再利用したり、タッパーを使ってパッケージングしていたといいます。その後、時代に合わせた新しい形を模索しながら事業を拡大されて現在に至ります。

春、ブルーベリーの花が咲く果樹園

ブルーベリー畑から車で数分の場所にある瑞香園のカフェでは、採れたてのブルーベリージュースをはじめ、パイ、ソフトクリーム、ブルーベリージャムを使ったメニューやサンドイッチ、また、ハヤシライスなどの軽食も提供。昼食や喫茶に訪れる地元の人で賑わいます。手作りのジュース、ジャムは、店頭で購入することもできます。父・寿明さんが動物好きだったこともあり、今でもカフェとその敷地には6匹の猫と6頭のヤギがいます。

* ブルーベリー狩りの実施は2024年はお休みです。詳細は、瑞香園Webサイトをご覧ください。

カフェには、先代の収集品が並ぶ


ブルーベリー栽培の始まり

造園業を営んでいた瑞江さんの父・寿明さんは、業務のかたわらハーブガーデンやイングリッシュガーデンも運営されていました。会員さんを募って、ハーブの摘み取りや、クッキングスクール、染め物ワークショップなどを主催していたそうです。ある時、市場に苗や樹木を買いに行った際、売れ残りのブルーベリーの苗を見つけた寿明さん。思い立ってその苗を100本程度購入し、畑に植えたのがブルーベリーの栽培を始めるきっかけとなりました。しかし、当時は、ブルーベリーは今ほど一般的でなく、加工品はガムくらいしかなかったとか。苗を植えた当初は事業として行うことまでは想定していなかったそうです。「45年から50年前は、ブルーベリーをジャムにして、美味しいけど『ふーん』という程度の反応でした。」と瑞江さんは昔を振り返ります。「その後、テレビ番組でブルーベリーが目にいい、という情報が出てからブームに火がついたんです。会員さんたちやそのお友達からもブルーベリーが欲しいと言われたことがきっかけで、ブルーベリー狩りを始めました。この事業なら自分でもできると思って、継ぐことを決めた当時はお客様も来ていただいていて、続けていけそうな基盤があったんです。」(瑞江さん)

実が熟し始めたブルーベリー
photo Mizue Kawano


自然栽培のブルーベリー

瑞香園のブルーベリーは、ハウスではなく屋外の畑に地植えした露地栽培。ブルーベリーは、作業効率のよいポット栽培が主流になってきているそうですが、瑞江さんは先代から受け継いだ畑の果樹から収穫を続けています。
「薬はほとんど使っていません。ミノムシがついたときは少しの薬を使う時もありますが、収穫時期には撒きません。見つけたらひたすら手で処理します。」(瑞江さん)

地植えで栽培し、成長したブルーベリーの樹

土壌管理もできるだけ自然な方法を用いて、土壌の健康を保つことを心がけているとのこと。ブルーベリーは酸性の土を好む特性があるため、土壌のpH調整が必要な果樹です。
「この畑は昔から地植えでやってきているので、人工的な管理ではなくて、本当に自然任せ。地面にしっかり根を張って、そこで水分を取って、お日様にしっかり当ててという感じです。雨は酸性なので、自然に降ってくる雨が調整の役割をしてくれています。」(瑞江さん)
育てる上で大切なことを伺うと、「草刈りと枝の整理」という答えが返ってきました。「畑に草がものすごく生えるんですよ。それを、草刈機でひたすら刈ります(笑)。刈り取った草をそのまま撒いておくと発酵して栄養になるし、乾燥を嫌うブルーベリーにとっては適度に湿度を保ってくれる。結局、草刈りが土壌には一番いいんです。」と瑞江さん。

刈り取った草を根元に撒く

除草剤を使用しないため、次々と生えてくる雑草を刈り取るのは大仕事です。取材に伺った晩春の畑には、樹の根元に草花がたくさん生え、それらを刈り取った様子もありました。刈り取られた草花をそのまま撒いておくことで、土壌管理のために根元を覆うマルチ(マルチング)の役割も果たし、豊かな土壌を作ってくれるのです。土壌の肥沃さを維持し、ブルーベリーの樹が根をしっかりと張るのを助けます。除草剤を使用しないため、次々と生えてくる雑草を刈り取るのは大仕事です。取材に伺った晩春の畑には、樹の根元に草花がたくさん生え、それらを刈り取った様子もありました。刈り取られた草花をそのまま撒いておくことで、土壌管理のために根元を覆うマルチ(マルチング)の役割も果たし、豊かな土壌を作ってくれるのです。土壌の肥沃さを維持し、ブルーベリーの樹が根をしっかりと張るのを助けます。

自然に生える草花

そして、もう一つの重要な作業である枝の剪定。ブルーベリーは成長が早く、放っておくと3mを超えるほど大きくなってしまうそうです。
「一番古いものだと、樹齢40、50年は経っています。ブルーベリーの幹ってこんなに太くなるのかと驚かれる方もいます。大きくなり過ぎてしまうと収穫も大変なので剪定で調整しています。」(瑞江さん)
枝の剪定は、成長のコントロールだけでなく、枝に隙間を作ることで光が届きやすくなり、果実の品質向上にも繋がります。

剪定後の枝

このように、4月から5月にかけて剪定、草刈、肥料を与える作業を行い、夏の収穫期に向けて最適な環境を整えます。ブルーベリーの収穫シーズンは、6月半ばから8月頃まで。新鮮なブルーベリーを順次収穫し店頭で販売するとともに、ジュースやジャムなどに加工します。収穫は、早朝6時から行い、気温が上がる頃には撤収してパック詰の作業。瑞江さんは、畑とカフェを1日に何度も往復しながら、パワフルに農園管理と店の営業をこなしています。

収穫時期のブルーベリーの実
photo Mizue Kawano
カフェで販売しているブルーベリージュースやジャム


雑味があるからこそ美味しくなる

瑞江さんに以前の仕事のお話を伺うと、「環境関連の仕事をしていました。浄化槽設備士、浄化槽管理士として4年ほど。実はリケジョ(理系女子)だったんです(笑)。水をきれいにしたかったんですよね。」とのこと。

背景の看板は、骨董収集が趣味だった父・寿明さんのコレクション

職業こそ違いますが、環境のこと、子どもたちの未来を考えながら作物に向き合う姿勢は今も同じです。
「水は、ただきれいなH2Oでは美味しくないんです。雑味が入っているから美味しいんですよ。山の水が美味しい理由もそう。この美味しさをどうしたら伝えられるかと考えていました。」と瑞江さんは話します。
「実も若すぎるとか、熟し過ぎているとか、そういうことはやっぱり食べて経験することです。苦味があるとか酸っぱいとか自分で感じていかないといけないですよ。教えるのではなくて、体験してほしいという想いがあります。」
自分で体験して気づくこと、わかることを大切にするという学びは、食育が注目されている今でこそ当たり前のように思えるかもしれませんが、瑞江さんが畑を始めた当時としてはとても新しい考え方でした。

瑞香園ブルーベリー畑から見渡す開けた空と山


ブルーベリーの個性

ブルーベリーというと、濃い青紫色をイメージされる方が多いかもしれません。実は種類によって個性があり、やや色素が薄く白っぽいハイブッシュ系の実と色が濃く黒っぽいラビットアイ系の実があります。色素が白い実はジャムに、濃い実はジュースやソースに使うというように、特徴によって加工品を変えています。色の違いは、ペクチンの含有量。ペクチンとは、柑橘系やりんごなどの果物に含まれる食物繊維の一種です。ゼリー状に固まる性質があり、瑞江さんのお話では、ブルーベリーの場合、白っぽいハイブッシュ系の実にペクチンが多く固まりやすいそうです。一方、「黒っぽい色の実はシャバシャバしているからジュースに適しているんです。」(瑞江さん)

収穫時期を迎えたブルーベリー
photo Mizue Kawano

Park. では、採れたてブルーベリーをクリームチーズと併せて焼き上げたベーグルに。また、ジャムにしてベーグル用スプレッドを作ります。収穫時期や品種の個性によって楽しみ方も違うので、瑞香園のブルーベリーは、ぜひお試しいただきたい一品です(*)。

* ブルーベリーの商品は季節限定です。また、本記事は2024年現在の情報です。販売時期・内容は年により変更になる場合がございますので、Park.公式Instagramのお知らせをご覧ください。


瑞香園のこれから

瑞江さんに今後の展望を伺いました。
「畑のブルーベリーが基本にあるので、まずは美味しいブルーベリーの生産が第一です。それから、ブルーベリーを使ったメニュー作りをすること。カフェの敷地は、開けた空や山が見えて、季節に応じた花が咲いたり、動物もいるので、ほっとできる空間として過ごしていただけたら嬉しいです。そういう場所が作れたらいいなというのが今1番思っていることです。小学校の頃から店で遊びながら過ごしていた子が、成長して県外に出た後に免許取りましたって車で寄ってくれたり、赤ちゃんが生まれましたと報告に来てくれる人もいらっしゃいます。そういう時はやっぱり嬉しくなります。がんばろうって思いますね。」(瑞江さん)

瑞江さんは登山と写真撮影も楽しまれていて、度々山登りに行くといいます。
「山の好きな所は、めいっぱい汗をかけること、頂上に到達したときの達成感。雄大な景色を見ると、ちっぽけな悩みなんて、吹っ飛びます。季節によって変わる表情を、カメラに収めることができる!出会う方たちの笑顔がすてき!毎日自然と触れているけれど、休日はもっと大自然に行きたいな、と思っています。」と山や自然に対する想いを語ってくださいました。瑞江さんが撮影された写真は、瑞香園のInstagramにも投稿されています。自然に恵まれた福井での農業の営みや、山や野に咲く季節の草花など地域の表情が伝わります。

瑞香園のブルーベリーを使用した商品は、6月下旬〜7月上旬頃順次販売予定です。お楽しみに!

カフェの敷地でくつろぐ猫
カフェで飼育しているヤギ(6頭のうちの1頭)
色づき始めたブルベリー
photo Mizue Kawano


Park Coffee&Bagel
https://parkcoffeeandbagel.jp/
https://www.instagram.com/parkcoffeeandbagel/

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