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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ⑤ 東海林 広太 『青い光』(神奈川県川崎市)

COLLECTIVE への応募や告知ありがとうございます。届いた ZINE を開梱し、その表紙を見るたびにドキドキします。毎年何十冊もの ZINE と向き合ってると、なんとなく、その顔を見ればその人柄がわかるように、内容も見えてくるような気がします。今後も(もちろん会期中も)少しでも多く広く深く募集していけたらとスタッフ共々楽しみにしていますので、引き続きよろしくお願いします。

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メタファーとしての色彩。それは明け方の西の空、ブエノスアイレスの恋人達、愛猫の瞳の色、荒木経惟のヌード写真、Yves KleinのBlue、深海の椅子、川崎洋の詠む海、James Turrellの光、華奢な指先。

その気楽さが油断となり、思わぬ感動につながる

神奈川から届いたのは東海林広太 PHOTO ZINE『青い光』。深い深い青が印象的な表紙をめくると、様々な『青』が瞬きのように目の前に映る。A5版(広げるとA4)というコンパクトなサイズなのに、開くと、海や夜の闇が目の前に広がる。いつかの恋人の部屋の、旅先のホテルの、または電車の、車の、窓の外を見ているような気持ちになる。写真集と言われると少しだけ緊張してしまい批評家のような気持ちになってしまうけれど、ZINE と言われると気楽にめくれる。その気楽さが油断となり、思わぬ感動につながったりするのがよい。写真は色(プリント)が命だから、ZINE にするというのをよくないとする風潮があったりするんだけれど、もうそういう時代ではないと思う。両輪あっていい。もっと大事なのは写真家としての軸、スタンスだと思う。美しい絵画のような表現を求めるのであればプリントにこだわればいいし、伝えたいものが別にあるならアウトプットはなんでもいい。ましてや色なんて、見る側の脳内で補填されればいいと思う。彼のステートメントにもあるように「メタファー」であっていい。その代わり構成(ページネーション)は大事。物語的であってもいけないし抽象的すぎてもいけない。こればっかりはひとりよがりにならないほうがいい。

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話は少し変わって、ZINE には PHOTO ZINE という文脈がある。写真集やダミーブックとは少しだけ違った存在。

ゼロックスとマッキントッシュ

PHOTO ZINE の登場は若き写真家たちの可能性を広げた。ストリートから派生した ZINE を ART の文脈へと切り開いたのがマーク・ゴンザレスなら、PHOTO ZINE はアリ・マルコポロス。自身の写真をモノクロのコピー機で刷って、畳んでホッチキスで止めて写真集としたのがはじまりだ。彼の ZINE は友人たち(ハーモニー・コリンやバリー・マッギー、ビースティー・ボーイズと錚々たる面々)の手に渡り、広がっていった。手作りで安価な ZINE が1人のスターアーティストを生む。そのムーブメントを世田谷のアパートでかすかにキャッチした学生時代のぼくらは取り憑かれたようにゼロックス社製のコピー機を探してまわったものだ。コピーをもう一度コピーするくらいが納得のいく作品になったのを覚えてる。マッキントッシュを持ってる友人の家に泊まり込んで文字を入れたりするようになる。思えば何かになりたいというわけでもなく、いつのまにか PHOTO ZINE を作って、友達に見せたりあげたりしていた。そういう世代だったのかな。いまは SNS があるからそういった初期衝動が instagram に分散されてしまうのかな。

さて、写真をもっと気軽に、ZINE にして、「売る」んじゃなくて「配って歩く」みたいな若い写真家がもっといていいと思うのだけれど、まぁあんまいない。みんな行儀よく本屋さんに頭さげたりして納品したりしてる。原価を回収するために値段をつけたりうんぬん。その前にもっと大事なことやること必要なことあると思うけれど。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:東海林広太(神奈川県川崎市)
1983 年 東京都出身。
2007 年にスタイリストとして独立。
2014 年より独学で写真を始める。自らスタイリング、撮影を手掛けたポートレートシリーズ〈go sees〉を撮り始め、現在では国内外問わずコマーシャルワークから作家活動までジャンルレスに活動中。
http://ko-ta-shouji.com
【 地域の魅力 】
東京に近い郊外。
【 地域のオススメ 】
① 調理室池田 ... 中々ドープな場所にある。ギャラリーを併設している喫茶店。飯もうまいし、オーナーのセンスが良い。
https://chourishitsu.tumblr.com

② 海藤花 ... 地元の寿司屋で地元の市場から魚を仕入れていてローカルが集う良い店。
http://kaitouge.webcrow.jp

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