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ネコファーバッグ

完全なひと目惚れだった。

3メートルほど先から2秒で見初め、小走りで近づき、それから抱きしめてずっと離さなかった。途中なんどもその姿を確認し、そのたびに心臓が高鳴った。もしやこれは恋か。

ネオンなピンクとパープルが混ざった、素晴らしい毛並み。
メタリックの華奢な背骨。
ほっそりした尾はマゼンタ色のサテン。

なんという愛らしい姿。気づけば無意識に、ふわふわのお腹を撫でて恍惚としてしまう。

食は細めで、ミニウォレットとカードホルダーで満腹。

「新しいバッグ?ステキ!」と友人たちが言うたびに、「私の猫。かわいいでしょう!」と繰り返す。これ見よがしにナデナデしながら。

家での定位置は高いところ(に掛けたフック)。
衣装棚に隠れるのは嫌いじゃないんだろうけど、みごとな毛並みがぺったり潰れるのが怖くて、ずっと高いところにいてもらっている。そのほうが常に姿を見られて私も楽しいし。

降水確率の高い日には留守番をさせる。猫は雨が嫌いだからね。

天気予報が外れて、霧雨が少しでも毛並みに当たろうものなら、「ごめんね〜、濡れるのイヤだよねえ〜」と話しかけながら水滴をそっと手の甲でぬぐう。完全に頭のおかしい人に見えている自覚はある、蛍光ピンクの毛むくじゃらバッグに話しかけるアジア人。おまけに週末の私は服装も華美で、週末ごとに春節を祝う人のように見えている恐れすらある。

まだ鳴き声は聞いたことがない、きっと私の見ていないところでときどきニャーとかミャーとかメォウとか言っているにちがいない。

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猫のいるしあわせ

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