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【創作論】キャラ設定の解像度を上げる「深さ/広さ/構造/時間」の4視点

馬田隆明という人が書いた『解像度を上げる―曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』(英治出版・2022年)なる本を読んだ。著者は、東京大学の産学協創推進本部(大学と企業の連携や活動を支援する組織)という場所に所属してて、かなりの要職に就いてるらしい。

ざっくり言えば、「ビジネスで解像度を上げる」指南書なんだけど、それに留まらず、もっと広い分野でも活用できる内容だった。本書では「深さ」「広さ」「構造」「時間」という4つの視点を軸に、物事をどう深く理解し、捉えるかを具体的に解説している。

まーこの本、正直、長ったらしいところもあるんだけど、著者のプレゼン資料が無料で公開されているから、ポイントを知りたいならそっちをどうぞ。

どうせ読まないだろうから、本の要約も以下につけといたよ。

「解像度」っつーのはよ、物事や問題をどんだけ詳しく、ちゃんと理解してるかって話だ。

解像度が高ぇってのは、要するに具体的で、原因とか構造とかバッチリ掴めてる状態のことよ。逆に低ぇと、なんかフワッとしてて、考えが浅くてツメが甘ぇ感じになるわけだ。

で、解像度を上げるにはどうすりゃいいかって?
ポイントは4つだ。
深さ」は、原因を徹底的に掘り下げること。
広さ」は、いろんな角度から物事を見ること。
構造」は、要素同士のつながりを整理すること。
時間」は、過去から未来のスパンを見渡すこと。

で、解像度が低いとどうなるかって?
考えが抽象的でフワフワしてたり、安直でテキトーな解決策に飛びついたり、競合をロクに調べもしねぇし、計画が雑で荒削りになっちまうんだよ。

じゃあどうするかって?そりゃ「顧客を深く知る」ってのが基本だろ。まず「Why」をガンガン繰り返して、問題の本質をあぶり出す。それから「How」で具体に落とし込み、知識を増やして武器にする。

そうやって、細かいとこまで考え抜いて、解像度を上げていくしかねぇって話さ。
わかったかい、ブラザー?

これは、そういう本だ。

本題。

この本、カテゴリ上はビジネス書に分類されるんだけど、「深さ・広さ・構造・時間」という4つの視点で、アイデアを立体的にする方法論は、創作分野でも普通に応用できるんじゃないかなー、と思ったんだよね。曖昧な構想をクリアにするというか、抜け落ちたキャラの背景事情を補うというか。

そんでもって、ユング先生の性格診断(16タイプ別のアレ)をもとに、以下のプロンプトをChatGPTに打ち込んで、ストーリーとキャラを作ってもらった(すでに作品設定があるという人は、それを打ち込んでみてください)。

prompt:
ユングの16タイプ別性格診断から、適当にキャラクターを構想・想像して。よくあるシチュエーション(学校を舞台にした典型的なドラマ)のお話の中に放り込んで物語を作って。

で、こんな返答(以下、「アオハル」と表記)が返ってきた。ご都合主義的な筋書きが目立つが、サンプルなので目をつぶっていただきたい。

ChatGPT 4o:
以下の4キャラクターを作成しました。
それぞれの性格タイプに基づき、学校を舞台としたドラマを展開します。

■キャラクター1: ISTJ(管理者タイプ)
名前: 笠原真希 (Maki Kasahara)
性別: 女
特徴:
• クラス委員長を務める真面目で責任感の強い性格。 • 規則を重んじ、課題を忘れる人や校則を破る人には厳しい。
• 裏では努力家だが、周囲に弱音を吐けない頑固な一面も。
役割: 学校の行事を成功させるために奮闘する中心的存在。

■キャラクター2: ENFP(冒険家タイプ)
名前: 高槻隼人 (Hayato Takatsuki)
性別: 男
特徴:
• いつも明るくて陽気、みんなを笑わせるムードメーカー。
• 自由奔放で、クラスのイベントで突拍子もないアイデアを出す。
• 規則に縛られるのが嫌いで、しばしば真希と衝突するが、実は優しさを秘めている。
役割: 真希を無意識にサポートしながら、クラスの雰囲気を盛り上げる。

■キャラクター3: INFP(理想主義者タイプ)
名前: 白鳥玲奈 (Rena Shiratori)
性別: 女
特徴:
• 内向的で、教室の隅で本を読んでいることが多い文学少女。
• 自分の世界を持ち、詩や物語を描くのが趣味。
• 優しい心を持つが、人と話すのが少し苦手。
役割: 自分の詩がきっかけで隠れたクラスメイトの想いを引き出す役割を担う。

キャラクター4: ENTJ(指揮官タイプ)
名前: 風間大輝 (Daiki Kazama)
性別: 男
特徴:
• 学生会の副会長でリーダーシップに溢れる性格。
• 理論的かつ戦略的で、効率を重視する。
• 人をまとめるのが得意だが、感情に疎く冷たい印象を与えることも。
役割: クラスと学校全体の目標を調整しながら、真希と協力するが、その中で彼自身の未熟さに気づく。

ストーリー概要:
舞台: 私立青陽高校、秋の文化祭準備。

1. 発端
文化祭の準備中、クラス全体での話し合いで対立が起こる。真希は「伝統的で堅実な展示」を主張する一方、隼人は「斬新でインパクトのある企画」を提案。真希のアイデアは地味だと感じるクラスメイトたちの中で、隼人の提案が支持されるが、具体的な計画が立てられず混乱が生じる。

2. 展開
玲奈が書いた詩をきっかけに、隠れていたクラスメイトたちの声が集まり、展示内容がまとまる。しかし、展示の準備が進むにつれ、効率を優先する風間が「時間がない」と一部企画を切り捨てようとする。真希は「一人ひとりの努力を無駄にしたくない」と反発する。

3. クライマックス
真希と風間が口論になる中、隼人が仲裁に入り、隠れていた自身の不安を吐露。「みんなで作る楽しさが大事なんだ」と説得する。玲奈も、詩を通じてクラスの団結を深める。風間は少しずつ感情を理解し、真希は責任を分かち合うことを学ぶ。

4. 結末
文化祭当日、クラス展示は大成功。各自が持ち味を発揮し、みんなの想いが詰まった作品が完成する。風間と真希は互いを認め合い、玲奈の詩はパンフレットに掲載される。隼人はクラス全員を笑顔にする役割を果たし、次の目標を掲げる。

この4人を中心に物語を展開し、青春らしい葛藤と成長を描きました。さらに掘り下げる部分があれば教えてください!

「お、これで十分じゃね」と思ったものの「深さ/広さ/構造/時間」という4つの視点で検証すると、このアオハルに何が足りないのか気になった。

そこで、次のプロンプトを試してみた。

prompt:
同ストーリーを馬田隆明の「解像度を高める」方法論を用いて更に深める。

返ってきた答えを見れば、一目瞭然。ハイ、ぼくは甘々の甘ちゃんでした。

ChatGPT 4o:

深さ: キャラクターや物語の内面を掘り下げる: 
└キャラクターの「なぜ」を探る

笠原真希 (ISTJ)
└なぜ彼女は規則や責任感を重視するのか?
例: 「幼少期に無秩序な環境で育ち、自分がしっかりしないと家族が困る経験をした」。
この背景が、風間や隼人との対立時に垣間見える描写を追加。

高槻隼人 (ENFP)
└なぜ自由奔放なアイデアを出すのか?
例: 「過去に自身の提案で家族や友人を楽しませた成功体験が根付いているが、失敗も多かった」。
文化祭の準備中に、その不安やジレンマが露呈する場面を加える。

白鳥玲奈 (INFP)
└なぜ詩を書くのか?
例: 「幼少期に他人と話すのが苦手で、詩が唯一の自己表現方法だった」。
クラスに詩を披露する勇気を振り絞る内面的な葛藤を描写。

風間大輝 (ENTJ)
└なぜ効率を優先するのか?
例: 「過去の失敗で、周囲の迷惑になることを恐れているため」。
その未熟さを克服し、感情的な絆を重視する変化を強調。


②広さ: 多角的な視点で世界観や設定を充実させる
└学校や文化祭の設定を掘り下げる学校の背景
例: 私立青陽高校は「自由と伝統」の両方を重んじる校風。文化祭はその象徴であり、生徒間で意見の対立が起きやすい。
└真希は「伝統派」、隼人は「自由派」の代表的な立場となる。

クラス全体の視点
└他のクラスメイトたちの小さなエピソードを追加する。
例:
・「新しいことを試したいが、失敗を恐れている生徒」
・「リーダーたちを陰ながら応援する派
・「無関心で巻き込まれたくない生徒
└これらの立場を絡め、物語に奥行きを与える。

文化祭の伝統と目新しさのバランス
他クラスの企画や、学校全体での評価基準を設定することで、真希と隼人の提案が持つ重みが明確化される。

構造: 物語やキャラクターの関係性を整理
関係図と因果分析主要キャラクター4人の関係を図解し、次のような因果関係を意識
└真希 ⇔ 隼人: 理念の対立と相互理解へのプロセス。
└玲奈 ⇔ クラス: 個々の想いを引き出し、橋渡し的存在。
└風間 ⇔ 真希: リーダー間の協力と成長。
└隼人 ⇔ 風間: 感情を無視しがちな風間に、隼人が「楽しむ心」を教える。

■プロットの精査
└クライマックスの説得力を高めるため、次の要素を追加:
 ・隼人が「自由と楽しさ」だけでなく「失敗する怖さ」を吐露する場面。
 ・風間が、切り捨てた案を見直し、玲奈の詩を活かす決断をする描写。

④時間: 時間軸を意識して深みを追加
■歴史の設定
文化祭の背景
学校では過去数年、文化祭の「伝統派」と「新規派」の対立が常態化しており、教師側も黙認している。

■キャラクターの成長を描く
真希: 責任を分かち合うことで柔軟なリーダーへ。
隼人: 自分の提案を最後まで遂行する責任感を学ぶ。
玲奈: 自分の詩がクラスの絆を作ることを経験し、表現に自信を持つ。
風間: 効率だけでなく感情を大切にする姿勢を身に付ける。

具体例:クライマックスの再構築
隼人が提案した大胆な展示案が、実現の難しさから立ち消えになりかける。
真希が「だから最初から言ったのに」と冷たい言葉をぶつけるが、玲奈が静かに、失敗した人々への想いを詩に書き、それを朗読する。するとクラス全員が集まり、「楽しさ」と「達成感」を両立させる新たな企画案を議論。風間が効率を無視してでも協力する姿勢を見せ、全員が一丸となる。

【まとめ解像度を高めた結果
読者の没入感: 文化祭の背景設定やキャラクターの内面描写により、物語がリアルに感じられる。
テーマの説得力: 「自由と伝統」「感情と効率」という対立軸が深く描かれ、青春ドラマとしての完成度が高まる。
新規性の創出: クラスメイト全員の声を活かした新しい展示案や、詩を媒介としたコミュニケーションがユニークな展開を作る。

この方法論を用いることで、ストーリーの各要素がより濃密かつ魅力的に仕上がります!

長いので整理すると「深さ/広さ/構造/時間」という4つの視点を取り入れたことで、当初、AIがポン出しした「それっぽいだけ」の曖昧な世界観がより明確なものになり、キャラクターの行動原理もはっきりした。つまり、作品の土台(世界観)を具体化するための以下のヒントが得られたのだ。

  1. キャラクターにリアリティ(深さ)を持たせる

  2. ストーリーに奥行き(広さ)を与える

  3. キャラクター同士の関係を整理・構造化する

  4. 物語の筋道(時間)を築く

この4つの視点を大別すると、①と③はキャラクター設定、②と④はストーリー設定にあたる。これを活用すれば、あなたもきっと立派なストーリーテラーになれる(んじゃないか、たぶん)。

補遺

アオハルの話を抽象化・汎用化した「4つの視点」も併せて紹介しておく。

prompt:
創作の世界で物語・キャラ・世界観・ディテールの構築力を高める意味での解像度をあげるうえで、馬田隆明氏による「解像度を高める」方法論はどのように役立つと思いますか?

ChatGPT:
馬田隆明氏の「解像度を高める」方法論は、物語・キャラクター・世界観・ディテールの構築において非常に有益です。創作の質を高めるために、この方法論をどのように活用できるかを以下に解説します。

1. 深さ:キャラクターや物語の内面を掘り下げる
キャラクター構築:
キャラクターの「なぜ」を掘り下げることで、深みのある人物像を作れる。
例えば「Why So?」を繰り返すことで、行動や動機に納得感を持たせる。
例: 「なぜこのキャラクターは冒険に出るのか?」
→「家族を失った過去が影響している」
→「その背景に特定の文化や社会問題が絡んでいる」など。
物語のテーマ:
表面的なプロットでなく、テーマやメッセージの根底にある問いを深掘り。
例: 物語のテーマが「自由とは何か」なら、それがキャラクターの選択や世界観にどう表現されるかを追求。

2. 広さ:多角的な視点で世界観や設定を充実させる
世界観の構築:
世界を構築する際に、多様な視点を考慮することで説得力が増す。「広さ」を意識すると、実際に人々が生きるリアルな世界が生まれる。
例: 社会構造、宗教、文化、経済、気候、歴史などを多面的に検討する。

異なる切り口を加える:
キャラクターの多様な視点(敵側の視点、第三者の視点など)を取り入れることで、物語に奥行きを持たせる。

3. 構造:物語や世界観の関係性を整理する
プロットの整理:
MECEや因果分析を用いて、設定や出来事に抜けや矛盾がないか確認する。
例: キャラクター同士の相関図や、物語の因果関係を図解してみる。

要素間のバランス:
どの要素が物語において最も重要で、どれが背景に留まるべきかを明確化する。
例: 世界観の説明にどれだけ時間を割くか、キャラクターの感情描写をどこまで深掘りするか。

4. 時間:物語や世界観に時間軸を加える
歴史の設定:
世界観に過去の歴史や未来の展望を取り入れることで、深みが増す。
例: キャラの成長や変化を時間の流れに沿って描くことでリアリティ向上。
例: 物語の初期と終盤でのキャラクターの心境や価値観の変化を意識的に描く。

具体例:ファンタジー世界の創作における応用
課題:「なぜこの国は魔法を禁止しているのか?」
深さ:
・法律で禁止された理由を掘り下げる
→「過去に魔法戦争があり、国が壊滅的な被害を受けた」
・戦争の詳細や背景を深掘り
→「魔法使い同士の対立ではなく、魔法を巡る宗教的対立が原因」
広さ:
・魔法禁止の影響を多角的に考える
→「経済への影響」「民間の抵抗運動」「隣国との関係」などを設定。
・他の国や文化では魔法をどう扱っているのかを追加。
③構造:
・禁止法制定のプロセスや関係者の意図を整理。
→魔法使い、一般市民、政府、それぞれの立場を描き、関係性を明確にする。
④時間:
・禁止された過去の経緯と、その後の世代での魔法観の変化を描く。
→禁止政策が今後どうなるのかを示唆。

【まとめ】解像度を高めた物語の魅力とは
①読者の没入感:
高解像度の世界観やキャラは、読者に「そこにいるような感覚」を与える。
②テーマの説得力:
深く掘り下げられたテーマや設定は、物語を単なる娯楽以上のものにする。
③新規性の創出:
多面的に検討することで、他にはないユニークな設定や物語を生み出す。

さて、またしばらくは修行の日々に身を置くとしよう。じゃな。

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